水たまりの中の青空 ~第二部~ (二百三十九)
突然、佐伯本家の当主が小夜子の前に座り込んだ。先日の茂作の罵声に対する意趣返しかと色めきたった。「小夜子さん。あんたには、色々とすまんかった。正三のことで、色々とあったけれども。どうか、許してくれや。正三はの、逓信省の官吏さまになったんじゃ。行く行くは局長になって、次官さまとやらまで行かなきゃならんのじゃ。でな、甥の源之助に任せたんじゃ。それでまあ、あんたに連絡をさせなんだみたいで。勘弁じゃ、この通りじゃ」他人に頭を下げることなど、まず有りえない佐伯本家の当主があやまった。村一番の実力者が、小娘である小夜子に土下座をしたのだ。ざわついていた座が、一瞬の内に静まり返った。「ご、ご当主さま。おやめください。小夜子は、なんとも思っていませんから。そうじゃろう、小夜子。いけませんて、それは。どうぞ、頭を上げてください」...水たまりの中の青空~第二部~(二百三十九)
2022/05/31 08:00