椿の海の記
少しずつ読み進めていました。また、ゆっくりとしか読めない本でもあります。石牟礼道子さんの4歳のときの体験記、なのですが、『苦海浄土』と同様に文体が独特で比類がありません。エッセイでもなく、あえて言えば詩と小説が混ざったもの。音楽で言えば「交響詩」でしょうか。とにかく4歳のときをこんなにも記憶しているのかと驚きます。近くにあった「娼家」のこと。そこに務める女性たちを「淫売」と呼ぶ人の「淫売」に込められた気持ちを読み、それによって大人への好悪を決めていたこと。一番美しいと言われていた子が殺されたこと。「娼家」から聞こえた「おかあさーん」という声。自ら花魁の格好をして、道を練り歩いたこと。髪結さんが「トーキョー」へ行こうと試みたけれど、親に連れ戻されたこと。深く焼酎を飲んだ父から杯を受け、飲み、1週間に渡って吐...椿の海の記
2024/06/29 18:50