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きくちゃん
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東村山市
出身
小金井市
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2013/04/27

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  • 渡りに船 これで最後です。

    このブログ、終わることになりました。提供している会社(NTTドコモ)が終了のお知らせを発表しました。「アメブロ」か「はてなブログ」に引っ越しもできるのですが、私はしません。今年の11月18日で消えます。2006年から始めていたのでもう19年。ここに書き、そして見てくれる方々がいることが私を支えていました。一方で、書きすぎてもいました。今思えば、消したいこともたくさんあります。私に、そして読んでくれた方々に、本当に大事なことだけ残っていればそれでいいと今は思っています。この決断を促してくれたのは、『百年の孤独』で有名なガボことガルシア=マルケスの言葉。「偉大な作家は、どれだけ原稿をゴミ箱に捨てたかで決まる」大事なことは、このように選択に迫られたときなどに、パッと必要な言葉や知識が出てくるか、ということ。その...渡りに船これで最後です。

  • 桜、咲く

    桜、咲きましたね。今日は2週間ぶりにランニングできました(22キロほど)。その間、冷たい雨が続き、強風とスギ花粉症もあり、マラソンの疲れもなかなか取れず、書店も忙しいで色々大変でした。小説の提出もありました。無事に出せたのでよかった。ホッとしたら疲れもまた出てきました。先週の水曜日の桜はこんな感じ。一輪だけ咲いてしまって、後続は保留。こんな姿はあまり記憶にないです。東京は開花したらみぞれでしたから、冷蔵保存の足踏みが続いていました。私もなんだかすっきりしない感じでした。ですが昨日から青空。桜も満開になりました。これは神代曙(ジンダイアケボノ)という品種です。近くの狭山公園で山桜を目当てに行ったのですが、山桜は半分ほど散ってしまっていて、隣のこの桜が満開でした。ソメイヨシノよりは小ぶりでピンクも濃いです。山...桜、咲く

  • 正欲

    だいぶ前に読んでいたのですが、感想を書けないままでした。物理的に時間がないということもありますが、気が重いというのもあって。朝井リョウさんは初めて読みますが、お名前はずいぶんと前から知っていました。ただ読むのは、やっぱり気が重くて。まだ若いのに才能が溢れていて、何かこうコンプレックスを刺激されるようで。朝井さんも「小説すばる新人賞」を受賞されてデビューしています。それで選考委員も務めていたのですが、今年からそのお名前が紙面から消えていました。選考委員の方々の作品を読む流れでこの本にも手が伸びたのですが、あれ?という感じ。もしかしたら、意見の相違から辞退されたのかもしれません。私の想像ですが。小説は、企みに満ちていました。最初から「ん?」という感じ。ある人物がスマホに書いて持ち歩いていた短い文章が冒頭にあり...正欲

  • 出し切ること 2025東京マラソンにて

    東京マラソンの写真と公式記録、届きましたので載せておきます。大会の後、自分のビブス(ゼッケン)の番号で検索をすると写真が見られるサービスがあります(オールスポーツ)。私はずっと楽しみに使わせていただいています。年賀状に使う写真も、いつの間にかほぼここから。1枚目は東京タワーを背景に。35キロくらいでしょうか。直線が長く感じるところです。でも、前のランナーにくっついて風よけをしつつ休みました(走ってますが!そんなこともできるようになります)。そのときの写真。我ながらフォームがきれいになりましたね。すっかりランナーという体型にもなっている。いつも一人で走っているのでなかなかわからないものです。自分がどう見えていて、どう走っているのかということは。とにかく力を入れないことが長く走るコツでしょうか。特に上半身。そ...出し切ること2025東京マラソンにて

  • 痛みの〈東北〉論

    昨年の3月11日に誕生した本です。少しずつ、今年の3月11日に向けて、読み進めていました。まだ十分に読み込んだ感じはしないのですが、一通りは読みましたので感想を書こうと思います。まず表紙の写真が独特ですよね。これは写真家の志賀理江子さんが撮ったもの。宮城県名取市の北釜(仙台空港のすぐ脇)在住で、その北釜海岸です。タイトルは「海に雪がふる日、波打ち際には蛇の道があらわれるその先を歩いてゆくと、もうここにはいない、近しいあの人たちに会える」。私もこの蛇の道のすぐ隣を、2023年の東北・みやぎ復興マラソンで走ったことがありました。防潮堤で海は見えなかったけれど。さて、本の内容ですが、2011年から発表した東北にまつわる論考をまとめたものです。そもそもなぜ「東北」なのでしょうか?それはどこから見た「東北」でしょう...痛みの〈東北〉論

  • 東京マラソン2025

    6年ぶり2回目の東京マラソン、無事に完走できました!スタート時は曇り、気温12度、湿度は62%。防寒着がなくとも寒くなく、日差しもないので暑くもなく、ちょうどいい感じでした。おそらく20キロくらいまでは曇っていて、時に吹き抜ける風がとても気持ちよく、なんて走りやすいんだろうと思っていました。が、富岡八幡宮あたりからでしょうか、日差しが出始めて気温はぐんぐん上昇。ゴール時点では20度近く。ビルの影に入っていれば涼しいのですが、コースによって直射を受けるとこもあり、終盤になるにつれて暑さがこたえてきます。30キロ以降も粘ることができました。足に余裕があることも感じていました。今までで一番の練習量で挑みましたから。でも、東京タワーの前を通って品川方面に行く道は、前回もそうでしたが長く感じました。しかもちょうど向...東京マラソン2025

  • いよいよ明日

    東京マラソンの受付に行ってきました。場所は東京ビッグサイト。大崎からりんかい線に乗って。地図で見ればよくわかりますが、そこはもう東京湾の中です。往復でちょうど3時間くらい。ちょっとした東京観光気分。外国からの方々もたくさんいました。帰りは新宿で途中下車して、紀伊国屋書店をぶらぶら。その後、追分だんごを買い求め、昔から愛用している登亭の鰻を買い求め、登亭の隣にあった讃岐うどんの店で腹ごしらえ。帰宅してからだんごをいただき、夕食は鰻をぺろり。これでもう前日の準備としては万全です。アスリートビブスもつけました。それが表紙の写真です。明日は気温が上がる予報(最低10度、最高20度)なので、半袖で十分でしょう。それと、一番思い入れのあるマラソン大会である東北・みやぎ復興マラソンが、年始に終了を発表しています。ショッ...いよいよ明日

  • レッドタートル・耳をすませば・思い出のマーニー

    先日、久々に連休がありました。そのとき、前から気になっていたCDと本の整理をしました。不要なものを近くのブックオフに持って行き、売りました。6000円くらいになったでしょうか。ブックオフに行く目的は売るだけでなく、探しているものもあったのです。それは『耳をすませば』のDVDです。ジブリから発売されています。買取価格が決定するまでの待ち時間で、たっぷりと店内を見ることができました。今はレコードやフィギュア、ゲーム、カード、玩具、スマホまで売っている。それでも大部分は本。そのブックオフはヨーカドーの中に最近できたもので、品揃えはまだまだだなという感じでした。で、お目当てのジブリのDVDは、なかなか見つけられなかったのですが、3周目くらいでしょうか、やっと見つけました。が、品数は少なく、『耳をすませば』はありま...レッドタートル・耳をすませば・思い出のマーニー

  • 2度目の東京マラソンに向けて

    東京マラソン2025まであと2週間になりました。2月はマラソン大会の多い月でもあります。明日は熊本城マラソン、高知龍馬マラソン、京都マラソン、おきなわマラソン、青梅マラソンなどなど予定されています。程よい緊張感に包まれているランナーも多いのではないでしょうか。11月に神戸マラソンを走りましたが、当日も、それまでの準備期間も暑い日が多く、満足いくような走行距離を蓄えることができませんでした。それに比べて2月は、言い訳のできないほど走り込みができていると思います。もちろん、雪の多い地域の方々は大変な思いをされていると想像しますが。私は1月の半ば、急性胃腸炎というのに罹ってしまいました。ほぼ2日ダウン。原因ははっきりしませんが、疲れと食べ過ぎと冷えが引き金になった自覚はあります。よく走り、よく働いてもいたので、...2度目の東京マラソンに向けて

  • いのちの芽

    ごく個人的「選考委員の方々の作品を読もう」キャンペーンは継続しているのですが、年始一冊目はこの本にしました。詩集。私の創作も詩から始まっているから。初心に返りたい気持ちで手が伸びました。ただの個人詩集ではなく、ハンセン病の療養所で暮らさざるを得なかった方たちが書かれた詩を集めたものです。この詩集が刊行されたのは1953年のこと。それが70年の歳月を超えて初めて文庫になりました。私の住まいの近くにある国立ハンセン病記念館が詩の企画展をしたとき、特別に非売品として配られたものでもありました。私はその会場には行けなかったのですが、読みたいとは思っていました。どうしてなのか?ハンセン病記念館のある多磨全生園が、私の通学路内にあったからか。それもありますが、創作の原形があるように感じていて。記念館の多くの展示に接す...いのちの芽

  • 火車

    昨年末に読み終えていたのですが、感想を書く余裕がなく、年始になってしまいました。それでもこの作品のインパクトは絶大で、読後感が消えることもありません。私が応募しようとしてる「小説すばる文学賞」の選考委員には宮部さんもいらっしゃるのです。宮部さんの作品に触れるのは「ソロモンの偽証」(新潮文庫)以来でしょうか。文庫で全6巻もある大作ですが、あの時も夢中で読んでしまった記憶があります。今回もしかり。本当に久しぶりに、就寝前に布団で読むということをしました。続きが気になって。ネタバレになってしまうので結末は書きません。少しづつ少しづつ真相に近づいていきます。主人公は子持ちの中年刑事(本間俊介)なのですが、足をピストルで撃たれた後のリハビリ中なので休職中です。そのタイミングを狙って、遠い親戚の若い男が訪ねてきます。...火車

  • 今年もよろしくお願いします。

    あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。年賀状の画像を使ってみました。今はスマホのアプリでスイスイと年賀状を印刷することができます。余白には、手書きでそれぞれの人に言葉を添えていますが。今は12人前後でしょうか。昔はもっと多かったけど、多ければいいというわけでもないことに気づいて、自然に減っていってそうなったという感じです。無理なく、続けられる範囲で、年始のあいさつだけでつながっている人もいますのでありがたく受け取り、送らせていただいています。年末の本屋は大わらわでした。いつものことですが、クリスマスイヴあたりからお客さんが殺到し始めて、ありがたいのですが流石に疲弊しました。今日は元旦でも営業してますが、私はたまたま定休です。あんことごまのお餅にお雑煮。姉と甥っ子が来てケーキを買ってき...今年もよろしくお願いします。

  • ツナグ

    寒さが厳しくなってきました。北国や日本海側では大雪も降り、毎年のことながら関東に住む私は冬場にたくさん走ることができてありがたいと感じています。そんななか、私が応募しようとしている「小説すばる新人賞」の選考委員をされている方達の作品を読もう強化期間に入りました(ごく個人的に、です)。まず一作目がこちら。作者の辻村深月さんは「傲慢と善良」(朝日文庫)が映画化もされ、今よく売れてる作家のお一人です。私はまだ読んだことがありませんでした。たくさんある著作からこの本を選んだのは、私が一番読みたい作品だったから。「使者」と書いて「ツナグ」と読みます。ツナグとは、一体何者でしょうか?何と何をツナグのでしょうか?様々な主人公が登場しますが、同じ強い思いを持ってツナグの電話番号に辿り着きます。強い思いがなければツナグと接...ツナグ

  • 死の森の犬たち

    読み出したら止まらなくなってしまいました。「動物もの」と言っていいのかどうか。そんな単純な枠にははまらないように思います。主人公は確かに犬です。犬と言っても、「犬」とくくれるものじゃない。それぞれに個性があります。その個性の違いがドラマを生んでいるとも言えます。ゾーヤと名付けられた雌の子犬は、ナターシャの一家にあたたかく迎えられます。でも、その幸せはほんの一瞬でした。その後、長く過酷なサバイバルが待っていました。ナターシャの家は、チェルノブイリ原発のすぐ近くにありました。爆発、そして突然の避難。福島の記憶が蘇ります。ペットを連れて行くことは禁止されていました。しかし、ナターシャはこっそりゾーヤを連れてきました。とても置いていくことはできなかったので。バスに乗るとき、ゾーヤは見つかってしまいます。外に置かれ...死の森の犬たち

  • 神戸マラソンにて

    写真が来たので載せておきます。レース中の笑顔は珍しいです。おそらく40キロ付近だと思いますが、ここに来るまでたくさんハイタッチしてきたので、顔はほぐれていたのでしょう。応援してくださった皆様に改めて感謝します。本当に、いつもマラソンの後半は応援が頼りです。神戸から3週間経ちました。今日は20キロほど走りました。筋肉疲労も抜けてきました。次の東京マラソンに向けて、走行距離を伸ばそうと計画中です。絶対に自己ベストを更新したいから。着実に、でも無理はせず。東京の次の大会もエントリーしました。5月11日、2年ぶりの仙台ハーフマラソンです。ホテルももう予約しました。今年は仙台に行けなかったから。やっぱり行きたい、大事な場所です。マラソンは続いていきます。どこまでも。神戸マラソンにて

  • 中空構造日本の深層

    少し前に読んでいたのですが感想がまだでした。前から気になっていて、執筆がひと段落して、やっと手が伸びました。「中空」とはなんでしょうか?著者の河合隼雄さんはカウンセラーで、面接を重ねるうちに日本人独特の心があると気づきます。その典型を昔話や神話に見出してきました。中空のヒントは古事記から。アマテラス、ツクヨミ、スサノオという三神がおりますが、活躍し記述されるのはもっぱらアマテラスとスサノオ。同様の構造は、ホデリ、ホスセリ、ホヲリ、また、タカミムスヒ、アメノミナカヌシ、カミムスヒの三神(ホスセリとアメノミナカヌシがツクヨミに該当)にも当てはまります。日本神話に登場する神でありながら、なぜほとんど注目されないのでしょうか?空だから。特にないから。え?神なのに特に記述すべきことがないって。いや、そうだからこそ存...中空構造日本の深層

  • 神戸へ

    初めての神戸。神戸マラソンに参加することが大きな目的でしたが、他にも行きたいところはたくさんありました。初日、ポートライナー(神戸空港までつながっているモノレール。運転手はおらず、遠隔操作されています)でポートアイランド内のマラソン受付へ。帰りは三宮駅まで戻らず、途中下車して海沿いをてくてくと。行きたい場所その一は神戸海洋博物館。冒頭の写真は、海洋博物館に入るとお出迎えしてくれるロドニー号。ロドニー号は、1868年に神戸港が開港した際に祝砲をあげたイギリスの艦船。もちろん模型ですが、よく見れば見るほどよくできています。館内には他にもたくさんの模型船が展示されています。船がいかに大事なものであったか。それは今でも同じで、海に囲まれた日本は輸入品のほとんどを船に頼っていました。船は、とんでもない量を一気に運べ...神戸へ

  • 神戸マラソン2024

    神戸マラソンに初めて参加してきました。今年で12回目だそうです。天気予報通りの暑さでした。スタート時は気温20度、湿度80%。気温が高いと走りにくいのは想像しやすいかと思いますが、気温よりもきついのが湿度です。湿度が高いとせっかく汗をかいても蒸発してくれません。人は汗をかくために体毛を減らしました。汗が出て蒸発すると熱を奪い(気化熱)、体温を下げてくれます。発汗と蒸発によって体温が上がりすぎることを防ぎ、より長く走り移動することが可能となりました。なぜより長く走る必要があったかといえば、車なんかなかった昔を想像すると見えてきませんか?危険な動物から逃げ切るため、また他の部族よりも多くの食べ物を見つけるため、さらには気候変動対策などで移動するため、などなど、長く走れた方が生存に有利だったからです。実際、一年...神戸マラソン2024

  • 26年ぶりの

    やりましたね。26年ぶりの日本シリーズ制覇。思わず買った雑誌には「日本一」となってますが、システム上そうなのですが、三浦監督も「日本一」とは言っていません。なぜなら、リーグ優勝をしたわけではないので。リーグ3位から、クライマックスシリーズ(CS)で2位の阪神に勝ち、優勝した巨人にも勝ち、セリーグ代表となって日本シリーズに出ていました。それは7年前にもありましたが、そのときは今年と同じホークスに負けていました。様々なことを思い出します。私が横浜ファンになったのはいつだったか。確か高校時代からでしょうか。よく遊ぶ2人がいました。学校に近い方の友人宅におじゃまし、よくプレイステーションの野球ゲーム「実況パワフルプロ野球」をやっていました。1人は阪神ファンでもう1人は中日。じゃあ私は、というところで横浜を選択して...26年ぶりの

  • 点子ちゃんとアントン

    子供向けに書かれたものではありますが、大人が読んでもおもしろく、ハッとさせられるものがあります。点子ちゃんはある日、壁に向かってマッチを売る練習をしています。それをお父さんは見て不思議がるのですが、どういう訳なのかすぐにはわかりません。お父さんは実業家でお金持ち。奥様は社交に忙しく、夜はいつも夫と外出しています。点子ちゃんの面倒を見るのは、家庭教師と家政婦とピーフケという犬だけです。そんな点子ちゃんには大事な友達がいました。それがアントンです。アントンは母子家庭で、お母さんが病気療養中のため料理を自分でし、靴紐を売ることで家計の足しにもしています。そんなアントンは学校で疲れてしまって居眠りしてしまいます。先生はアントンはけしからん子だと思い、親に手紙を書こうとしていました。それを知った点子ちゃんは、先生と...点子ちゃんとアントン

  • あなただけよければいいのですか? 山本先生の言葉

    最近、よく思い出します。「あなただけよければいいのですか?」という言葉。このことについてちゃんと書こうと思っていました。山本先生は、私が中学2年のときでしょうか、理科の担当でした。私の担任になったことはなく、小柄で髪を束ねて、どちらかと言えば目立たない真面目そうな中年の女性の先生でした。理科の実験で、私のところは早く終わりました。そして私は中二らしく生意気に騒いでいたのでしょう。そのときでした。「あなただけよければいいのですか?」山本先生に言われました。私がそのあと大人しくなったことは目に見えています。当時の中学校は結構荒れており、私も調子に乗ってバカをやっていました。先生たちがゲンコツで静かにさせるのも当たり前で、私も何度か食らっていました。ただ、今思うのは、叩かれてもその場凌ぎです。何らかの内省にはつ...あなただけよければいいのですか?山本先生の言葉

  • デミアン

    3度目の読書。書いていた小説がひと段落し、「共同執筆者」の夢にも促されてこの『デミアン』に手が伸びました。落ち着いたら読もうと買ってはいたのですが。3度目なのですが、だからか今回はずいぶんと細部が見えた感じがしました。今までの読書では見落としていたのではないかというような。それは新潮文庫ではなく初めて岩波文庫にしたからかもしれません。訳者が違うので、全体的な雰囲気も変わります。岩波版の方が丁寧で柔らかい印象です。例えば新潮文庫では、最後に登場する重要な人物の一人であるエヴァ夫人が主人公を呼ぶとき「シンクレール」と呼び捨てですが、岩波文庫では「ジンクレエルさん」とさん付け。名前も若干変わっていますが、ドイツ語をかじった身としては「ジンクレエル」の方が原文に近い感じがします。ジンクレエルは少年時代、クロオマア...デミアン

  • まっすぐだけが生き方じゃない

    60種の木が紹介されています。木の特徴を解説するとともに人として学べるところが取り出されています。例えば、最初に登場するイロハモミジ。「最初から美しいもの、なんてない」という題で、忍耐の大切さを教えてくれる。冬の厳しい山で、イロハモミジは急いで枝を伸ばしはしない。じっくりと日の当たる場所を見極めて少しずつ伸びて葉を茂らせ、不要になった場所は枯らせてしまう。ただ待つだけでなく、じっくりと着実に成長する。その結果があの美しい姿なのだと。次のイチイも着実さの重要性を教えます。広範囲に根を張り、幹や枝に傷を負っても地下が支える。2000年も生きることができるのは、少しずつしか成長しないから。成長がゆっくりだからこそ、細胞は緻密になり腐りにくくなる。オリーブやアサイーは栄養価の高い実を提供することで他の生き物との共...まっすぐだけが生き方じゃない

  • 牧野富太郎 なぜ花は匂うか

    前回の「植物知識」に続いて牧野さん。「バナナの皮」についての記述は重複していましたが、他は初読みと思われます。「植物に感謝せよ」では次のように書かれています。「人間は生きているから食物をとらねばならぬ、人間は裸だから衣物を着けねばならぬ。人間は雨風を防ぎ寒暑をしのがねばならぬから家を建てねばならぬのでそこで始めて人間と植物との間に交渉があらねばならぬ必要が生じてくる。右のように植物と人生とはじつに離すことのできぬ密接な関係に置かれてある。人間は四囲の植物を征服していると言うだろうがまたこれと反対に植物は人間を征服しているといえる。そこで面白いことは植物は人間が居なくても少しも構わずに生活するが人間は植物がなくては生活できぬことである。そうすると植物と人間とを比べると人間の方が植物より弱虫であるといえよう。...牧野富太郎なぜ花は匂うか

  • 共同執筆者

    先日、忘れ難い夢を見ました。私は少し賑やかな出版社らしきホールにいて、そこの人から紹介されたのでした。「共同執筆者のヘルマン・ヘッセさんです」と。ああ、ついにヘッセに会えたのだという喜びで、私はうれし涙が止まらなかった。ただ会えたのではなく、「共同執筆者」として。しかも、ヘッセは後ろ姿しか見せてくれませんでした。髪の薄くなったご年配の男性で、意外と小柄でした。それが何を意味するのか?ヘッセ最後の小説「ガラス玉遊戯」を読了したのが2011年の8月17日でした。それから先、私はランナーとなり、小説家見習いとなりました。あれから13年経ったことになります。ヘッセ最後の小説を読んだからには「私が書かなければ」と思ったことを覚えています。さかのぼれば仙台の学生時代。私はいつどこでヘッセと出会ったのか覚えていません。...共同執筆者

  • 2度目の東京マラソン

    今年も暑いですね。最近は、どんどん夏がぶり返しているようでもあります。ネッククーラーは欠かせず、昼間の外出には凍らせた保冷剤を手拭いに巻いて持ち歩いています。土曜の朝ランは継続しています。というか、朝しか走れません。その時間を充実させようと金曜の夜は早く食べて早く寝るようにもなりました。それでも、今日は11キロほど。月間で50キロちょい。足りません。私の場合、体重が増えてきてわかります。で、必要に迫られて、もう1日の休みの日である水曜日、近くのスポーツセンターを利用するようになりました。その日は遅番の次の日なので、朝走れないのです。調べてみればトレーニング室が充実していました。私の知らない間に。水泳に通っていた時期もありましたが、トレーニング室に入るのは実に小学生振りでしょうか。2階の回廊は変わらず一周1...2度目の東京マラソン

  • 海よ光れ

    「課題図書」小学校高学年の部の中の一冊です。今まで課題図書を読んだことはありませんでした。もう70回になるのですね。私が学生の頃もあったはずですが、学校で取り組むことはなかったと思います。最近は店頭に出したら瞬く間に売り切れるほどなのですが。自分が学生のとき、学校からの宿題として出されていたらどうしただろう?読み書きは好きですが、強制されたら反発したかもしれません。今回読む気になったのは、3・11が主題だということと、児童書を担当している同僚が「号泣した」ということで買う気になりました。岩手県の山田町にあった大沢小学校が舞台です。山田町は、釜石と宮古の間にある太平洋に面した港町。山田湾は突き出した半島に囲まれて穏やかなので養殖業が盛んでした。大沢小学校には二つの「海よ光れ」がありました。一つは演劇、もう一...海よ光れ

  • 植物知識

    今年の2月に高知県の牧野植物園を訪ねましたが、牧野さんの文章に触れるのはこの本が初めてかもしれません。改めて、花とはなんだろう?植物とはなんだろう?と思い、買っておいたこの本に手が伸びました。昭和24年、当時の逓信省(ていしんしょう)が『四季の花と果実』と題して刊行したものが改題され、講談社学術文庫に収められました。そのとき牧野さん、御年88歳でしょうか。95歳まで元気に生きられました。表紙の「いとざくら」も牧野さんが描かれたものです。身近な花と果実について、紹介されています。花は、ボタン、シャクヤク、スイセン、キキョウ、リンドウ、アヤメ、カキツバタ、ムラサキ、スミレ、サクラソウ、ヒマワリ、ユリ、ハナショウブ、ヒガンバナ、オキナグサ、シュウカイドウ、ドクダミ、イカリソウ。果実は、リンゴ、ミカン、バナナ、オ...植物知識

  • ふたりのロッテ

    ケストナーの作品は「どうぶつ会議」「飛ぶ教室」「人生処方詩集」を読んだことがあります。没後50年ということで、また注目を集めています。「ふたりのロッテ」は初読み。二人の少女が主人公というところと、ケストナーの代表作の一つに挙げられることも多いので読んでみたくなりました。なんでこんなに子どものことがわかるのでしょう?子どもは親のために病気にもなりますが、そのことが実によく描かれています。「訳者あとがき」でわかったことですが、この作品は第二次世界大戦中に書かれています。著者のケストナーはドイツ人で、その時代ナチスが政権を握っていました。ケストナーは「危険思想の持ち主(政権に反対していたので)」とされ、ナチスから発禁処分を受け、命すら危ない状態でしたが、国内に留まり、この作品の完成に集中していました。外圧が強い...ふたりのロッテ

  • 戦争は、

    「戦争は、」というタイトルの絵本です。「戦争は、」で始まる短文と、戦争を表現した象徴的な絵で構成されています。読んで感じていくと、「戦争とは何か」が、読む人の心に形成されていく仕掛けです。大人が読んでもちろんいいのですが、子どもと一緒に読むと、いろんな質問が飛んできそうです。「知らないこと」「無垢であること」が、戦争の忍び込んでいく「余地」になります。読んで質問して対話して、「戦争は、」と自ら語れるようになることが「反戦争」を育むことにつながっていきます。「戦争」が好むものは何でしょうか?逆に「戦争」が嫌うものは何でしょうか?この絵本を読むと、「戦争」は生き物だと感じます。確かにそうでしょう。どんな人にも忍び込むことができるウィルスのようなもの。「戦争は、」で始まる短文が、読むものの想像を刺激します。一つ...戦争は、

  • 思い出のマーニー

    この本は、NHK教育番組「100分で名著」で紹介されていて知りました。その番組を見たわけではないのですが、お勧めしてたのが心理学者の河合俊雄さんで、なんかそれだけで気になっていました。河合さんは、私が大きな影響を受けた河合隼雄さんのご子息。なのでその人が大事にしてきた本なら、私にも刺さるだろうと。その予感はやはり当たっていました。ものすごく面白かったです。10年ほど前にジブリでも映画化されたそうです。そちらも観ていませんが観てみたくなりました。内容ですが、アンナという小学校高学年くらいでしょうか、女の子が主人公です。ある夏、海辺の町で暮らすことになりました。その一夏の忘れられない体験が描かれています。アンナは複雑な環境で過ごしていました。両親は若くして離婚し、母は再婚しましたが自動車事故で亡くなってしまい...思い出のマーニー

  • 次は神戸

    この写真、4月のイーハトーブ花巻ハーフマラソン大会で撮ってもらったものです。マラソン大会などのスポーツ大会に写真業者が入り、大会後に閲覧して気に入ったものがあれば買うことができます。ハーフの後半、競技場前だから20キロ過ぎでしょうか。この辺りは息が上がってしまって顎(あご)が落ちそうになってます。自分としてはあまりいい表情ではない、と思ったのですが、ポーズがきれいなグリコになっていたので(「グリコポーズ」と言って分かりますか?)。そのポーズよりは若干腕が下がっていますが。東京は梅雨が明けました。今日もものすごく暑いです。朝ランしたのですが、7時ですでに28度くらいでしょうか、9時前には引き上げますがもう30度を超えていました。汗が止まらず、500mペットボトル3本でも足りないくらい。仕上げの坂ダッシュ(登...次は神戸

  • 椿の海の記

    少しずつ読み進めていました。また、ゆっくりとしか読めない本でもあります。石牟礼道子さんの4歳のときの体験記、なのですが、『苦海浄土』と同様に文体が独特で比類がありません。エッセイでもなく、あえて言えば詩と小説が混ざったもの。音楽で言えば「交響詩」でしょうか。とにかく4歳のときをこんなにも記憶しているのかと驚きます。近くにあった「娼家」のこと。そこに務める女性たちを「淫売」と呼ぶ人の「淫売」に込められた気持ちを読み、それによって大人への好悪を決めていたこと。一番美しいと言われていた子が殺されたこと。「娼家」から聞こえた「おかあさーん」という声。自ら花魁の格好をして、道を練り歩いたこと。髪結さんが「トーキョー」へ行こうと試みたけれど、親に連れ戻されたこと。深く焼酎を飲んだ父から杯を受け、飲み、1週間に渡って吐...椿の海の記

  • 白い紫陽花

    アナベルが咲いていました。花言葉は「辛抱強い愛」。私の好きな花の一つです。白い紫陽花

  • 6月の富士山

    毎週土曜日は朝ラン。いつもの多摩湖堤防で、富士山が見えました。6月に見えるのはほんと珍しいです。いいことあるかもしれません。6月の富士山

  • しずかなところはどこにある?

    大きな耳を持ったキツネが主人公。キツネは、大きな音が苦手でもありました。穴を掘って、掘って、地中深くに静かに暮らしていました。住んでいる森は大きな音でいっぱいだったから。大きな音にいつもびくびくしている自分が見られるのを恥ずかしく思ってもいました。そんなある日、キツネは静かなところを探そうと勇気を出して森に出かけました。意外と身近なところにあるんじゃないかなあ?すると、見つかりました。あちらにもこちらにも。「どくのあるベニテングタケのかさのした」「そっととじためのおく」「はっぱのうえでそろりとうごくガガンボ」「よつばのクローバーがはさまれたほんのページ」「ひとやすみしているちょうちょのしょっかくのさきっちょ」「めがさめてしんしんとゆきのふるあさ」キツネは、さらに見つけた。「おもいでのなか」「すずらんのかお...しずかなところはどこにある?

  • 被災物 モノ語りは増殖する

    一昨年の秋、宮城県の気仙沼に行きました。そのとき、時間が足りずに行けなかった場所がありました。次回は必ず行く予定にしている「リアス・アーク美術館」。この本の新刊案内を見たとき、だから目が止まりました。そして注文していました。しばらく店に置いていたのですが、自分が読みたくなったので買いました。読むときが来たわけですが、書いている小説に「被災物」が出てきたので。というか、この本を読んでわかったのですが、私もまた被災物という呼び水に触発されて、小さな物語を紡ぎ出したのだと。「被災物」とはなんでしょうか?「被災者」という言葉があります。人が震災にあったとき、その人を被災者と呼びます。同じように、物が被災したとき、その物を被災物と呼ぶようにしたのです。「瓦礫(ガレキ)」という言葉がやたらと使われました。人々の経験し...被災物モノ語りは増殖する

  • ペロー童話集

    この本は、花巻の林風舎で買い求めたものです。林風舎は、宮沢賢治の親戚の方が営まれているお店で駅のすぐ近くにあります。私も行きました。一階は土産物中心で、絵葉書や衣類や複製原稿やしおりや工芸品などが販売されています。私は絵葉書と「デクノボーこけし」を買いました。そのとき店員さんと少し雑談しました。二階がカフェで、ちょうどピアノの生演奏もしているのでぜひどうぞと言われ、二階へ。賢治の肖像画の近くで、ピアノの演奏に体を酔わせながら、ロールケーキとコーヒーをいただく、という貴重な時間を過ごしました。会計後、書籍もあったので見ました。宮沢賢治の記念館と似たような並びでしたが、この「ペロー童話集」は記念館にはなく、目が留まりました。で買うとき、店員さんに聞いてみました。「なんでこの本が置いてあるのですか?」と。「天沢...ペロー童話集

  • あやとりの記

    この本は、昨年熊本に行ったとき買い求めたものです。この本の中身をどう伝えたらいいのか、しばし想いに耽りました。適当な言葉を私は持っていないというか、どう言っても嘘になりそうだ、というか。なので著者の「あとがき」から引用します。「九州の南の方を舞台としていますが、高速道路に副(そ)う情けない都市のあそこここにも立って、彼岸(むこう)をみつめ、”時間よ戻れ”と呪文を唱えたのです。どこもかしこもコンクリートで塗り固めた、近代建築の間や、谷間の跡などから、昔の時間が美しい水のように流れて来て、あのひとたちの世界が、現代の景色を透けさせながらあらわれました」物語の中で視点となっている「みっちん」は、5〜6歳の女の子でしょうか。著者の姿と思われます。みっちんの祖母と思われる「おもかさま」は、目が見えず、魂が遠くに行っ...あやとりの記

  • 宮沢賢治のこと

    私が花巻に行きたかったのは、そこが宮沢賢治の故郷だからでした。大宮から東北新幹線に乗って、よく降りる仙台でもなく一関でもなく、新花巻まで北上して初めて下車。胸がどきどきしていました。改札口を出ると、左に売店、右に食堂。右奥にコインロッカーとお手洗い。正面奥に観光案内所と、大谷翔平選手をはじめとした花巻ゆかりの野球選手たちのグローブやスパイク、ユニフォームなどの展示コーナーがありました。ロッカーに荷物を預け、まずは野球選手たちの備品を眺める。大谷選手のスパイクのデカさに驚きました。で、観光案内所で、宮沢賢治の記念館に行きたいのですが、と相談すると、係の人は親切に地図とバス・電車の時刻表を手渡し教えてくれました。記念館にはバスで行けるのですが、本数は少ない。ちょうどいいバスがなかったので帽子を被り、歩いていく...宮沢賢治のこと

  • イーハトーブ花巻ハーフマラソン大会

    4月28日の日曜日、岩手県の花巻を走りました。初参加です。ツーショットしてもらったのは、地元花巻の「フラワーロール」ちゃん。高校生たちでしょうか。スマホ持って近づいたら「撮ります?」と声をかけていただき、「お願いします!」と。ちなみに参加賞のTシャツにもフラワーロールちゃんは描かれており、レース後に着て町を歩くほど気に入ってしまいました。全国のマラソン大会のエントリー情報をいつもチェックしているのですが、この大会を見たとき、胸が高鳴りました。心は「出たい」と言っていたし、足は「走りたい」と訴えてもいましたので、すぐエントリーしていました。花巻でマラソン大会が行われていることも知りませんでした。今年で12回目です。花巻に引かれたのは、もちろん宮沢賢治の故郷だからです。賢治のことは、後で書きます。当日は晴れ。...イーハトーブ花巻ハーフマラソン大会

  • 矢車菊

    この花、本当に好き。繊細ですがまっすぐ立ちます。いろんな色を持っています。矢車菊

  • 花水木

    桜の返礼でアメリカから来た。独特な葉と花の模様。ずっと見ていられる。花水木

  • 私の名前は

    雑草じゃなくて春紫苑です。私の名前は

  • サクラ散ってもタンポポが

    花は桜だけじゃないよサクラ散ってもタンポポが

  • 高知から花巻へ

    高知龍馬マラソンからもう2ヶ月が経ちました。そのときの写真をあげておきます。フルマラソンの後は、当然のことながら疲れが出ます。回復するまで約1ヶ月はかかるのではないでしょうか。私の感覚ですが。働きながらでもあるので、個人差はもちろんあるでしょう。その間、書店では棚卸しがあり、そのための整理があり、春休みになって接客に追われつつ、年度末で納品も増え、さらには杉花粉で自由を奪われ。結構大変でした。それらを無事乗り越えて、春。最近の新緑の美しさには、改めて目を奪われます。杉花粉もおさまって、穏やかな天候の下で、痛みもなく思い切り走って、おいしい空気を胸いっぱい吸えるのは、本当に心地よく、生き返る思いです。その中で出会った花々の写真は、後でまとめてあげます。で、次の大会が1週間後に迫ってきました。初めて参加します...高知から花巻へ

  • わかちあう

    こちらも柳瀬川沿いの桜並木。右手前にお花見の席取りのシートが置いてあります。小道の奥には小さくなってしまいましたが、人が写っています。カメラを向ける奥様と、その旦那様でしょうか。東京都写真美術館で木村伊兵衛の没後50年を記念した写真展を開催中(5月12日まで)です。観てきたのですが、実に人々の表情が生き生きとしています。さりげなくて、誰もポーズをしていなくて。それで思ったのです。ああ、人を写すのもいいなあと。なのでこれからの写真には人が入ってくるかもしれません。さりげなく。わかちあう

  • 新学期、今年は何をしましょうか?

    こちらは、お隣の清瀬市にある柳瀬川沿いの桜並木。この季節、ここを走るのは格別です。この土日で春休み終わりという方々も多いのではないでしょうか。いくつになっても気が引き締まる思いです。やるべきことは明確になっています。とにかく、小説を仕上げる!今年度中に、必ず。次の作品の準備もしていたい。来年の今頃どうしているか、胸に思い描いて走り抜けました。新学期、今年は何をしましょうか?

  • たくましく

    こちらは市内(東京都東村山市)にある多磨全生園内のさくら公園。奥の建物は、国立ハンセン病資料館です。右手前のさくらは、毎年見ずにはいられない古木。見るたびに感動します。今年は新芽を出していた!たくましく

  • 今年もやってきたよ

    近くの川沿いの公園で。今年もやってきたことを告げるように、枝先が私に向かって伸びていました。今年もやってきたよ

  • 祖さまの草の邑

    石牟礼道子さんの詩集。タイトルは、「おやさまのくさのむら」と読みます。祖さまというのは、連綿と続いてきた命そのもののことかもしれません。生き物のそれぞれが音を持っている。耳を傾けることのできる人は、自然の交響曲を楽しむことができる。この辺りの描写は、ミヒャエル・エンデの「モモ」(岩波書店)を思い出しました。マイスター・ホラに連れられて、モモは「時間の花」を見ます。そこでは豊かな音楽が流れていました。人々は、自然の中で生きていました。そこに「会社(チッソ)」がやってきた。護岸工事をし、渚をコンクリートで固めてしまった。渚は、海と陸とが呼吸をするところ。小さな貝たちや、タコの赤ちゃんたちがたくさんいた。近代化の名の下に、壁を作っていったのは人間。電気に化学肥料にビニール。どれも欠かせなくなった。一方で、不要と...祖さまの草の邑

  • なみだふるはな

    作家の石牟礼道子さんと写真家の藤原新也さんの対談。対談されたのは2011年6月13日からの3日間。熊本市の石牟礼さんの自宅で。この本が刊行されたのは2012年3月。東日本大震災から1年を待っていたかのように。昨年、熊本城マラソンに参加しましたが、泊まったホテルのすぐ近くにあった古書店・舒文堂(じょぶんどう)河島書店で入手しました。私もまた1年寝かせていました。再び3・11が巡ってきて「読もう!」と思い立ちました。読み進めていくうちに、閉塞感が募っていきます。歴史は繰り返す。水俣で起きたことが、そっくり福島でも繰り返されて。どのようにして水俣病を発生させた会社「チッソ」が水俣に入ったのか、石牟礼さんの語りによって解き明かされていきます。まずは「電気」だったそうです。それは会社のための電気(チッソははじめ水力...なみだふるはな

  • もう一年

    この写真は、2022年11月7日、宮城県気仙沼市の大島にある亀山山頂から撮ったものです。今年も3.11が来ました。もう13年になりますが、あの日は昨日のことのようです。その日を意識し始めると、変に肩に力が入って、鼓動も早くなる。落ち着かなくなって、書きたくなります。様々なことを思い出します。現地に行って撮った写真も見返していました。この写真の左手前の砂浜は田中浜、その上は小田の浜、田中浜の右側にある湾が浦の浜です。田中浜から上陸した津波は、坂を乗り越え、浦の浜からの津波と合流したそうです。浦の浜近くで料理屋を営んでいた私のおじさんは、間一髪で津波から逃げることができました。お店の片付けをしていたと言います。山に逃げていた人に声をかけられて、助かりました。しかし、災難はそれだけに止まりませんでした。気仙沼湾...もう一年

  • 怪談

    この本が読みたくなったのは、毎日新聞の連載「没後120年・八雲を探して」を読んで。有名な「雪女」は、今の東京・青梅市の百姓が八雲に語った話で、意外と近いじゃんと思ったり、島根県・松江の海沿いにある自然洞窟に亡くなった子たちが集まっているという話が今でも伝わっていたり。その連載でも紹介されていましたが、八雲の夫人・節の話にも興味が湧きました。私が本を見ながら話しますと、「本を見る、いけません。ただあなたの話、あなたの言葉、あなたの考でなければ、いけません」と申します故、自分のものにしてしまっていなければなりませんから、夢にまで見るようになって参りました。229ページ15行-230ページ3行八雲は、聞いた話をただそのまま書き写していたのではありませんでした。換骨奪胎というのでしょうか。どこにでもあるようなちょ...怪談

  • 牧野植物園

    高知3日目は、牧野植物園へ。その日は朝から細かい雨が降ったり止んだり。高知は多雨の街でもあります。バスで行くのですが、これも予想を超える激坂。五台山にあるのですが、完全に山道です。一方通行で、バスだと道幅もぎりぎり。運転手さんたちの仕事があってこその旅だと、改めて感じました。門を入ると、もう植物を紹介する案内板が所狭しと立てられています。一つ一つ、丁寧に。全部読んでいったら、とても時間が足りません。その中でも目についたのがこちらです。バイカオウレン。牧野さんの生家の裏庭に生えていたそうで、ふるさとを思い出させる特別な植物であり続けたそうです。順番に植物たちを眺めながら、チケットを買って、いよいよ植物園の中へ。まず「こんこん山広場」という頂上付近に上がって眺望を楽しみます。次に降りて少し行くと「土佐寒蘭セン...牧野植物園

  • 高知龍馬マラソン

    11回目のフルマラソンは高知龍馬マラソン。スタート時は曇りでしたが、後半ほど晴れ渡り、予想通り気温が上がりました。海に出るまでは順調でした。でも、走って3キロほどでもう汗が出ていたので、水分補給はしっかりと意識して。海に出るまで4つくらいでしょうか、トンネルを潜りました。トンネルの中はひんやりとしていて快適でした。20キロ付近、1番目の難関が現れました。浦戸大橋です。警戒はしていましたが、想像を超えていました。まだ上がるんかい!今まで経験したことのない角度と距離。約50メートル、急な上りが続きます。歩いていたランナーもちらほら。しかし、私は根性で走り切りました。私は粘り強いタイプ(良くも悪くも)ですから。頂上では太平洋が一望できます。下りると、海岸沿いの道を西へ。海岸沿いにも応援の方達が切れ目なくいてくれ...高知龍馬マラソン

  • 高知へ

    高知に行ってきました。写真は高知城です。初めての四国でもありました。行きは新幹線とバスで。岡山から「龍馬エクスプレス」という高速バスに乗り換えます。今かな今かなと地図を見ながら、お目当ての一つであるものがついに現れました。瀬戸大橋です。写真は瀬戸大橋から見た瀬戸内海。不思議ですよね。山なのです。なのに海。後日少し調べました。今から約1400万年前、「瀬戸内火山活動」と呼ばれる短期間の激しい火山活動がありました。そのとき噴火したものが山となって残っている。さらに約300万年前、四国を南北に分ける中央構造線が横に動いたため、横ずれの「しわ」として隆起したところが後で島になった。今の瀬戸内海となったのは約1万年前と言われています。瀬戸大橋を渡っていよいよ四国の香川県へ。山々を縫うように西へ。愛媛県に入って、大き...高知へ

  • シェイクスピアの記憶

    「ボルヘスは旅に値する」と言われます。最晩年の作品を読み、訳者の丁寧な解説と著者の言葉を聞いて、その意味が私なりにわかってきました。著者は常々こう言っていたそうです。「書いたものよりも読んだものを誇りたい」さらにはこんなことも。「私も書くことでだいぶ救われました。惨めな気持ちが癒やされました。ですから、私の書いた作品は全然文学的価値がなくても、私には大いに役に立ったんです」この言葉を聞いて、私も救われました。そうだ、そうだ。書いたものより読んだものを誇りに思う。まるでイチローみたいじゃないか。3割のヒットより7割のミスを誇りたい、というような発言を思い出して。ボルヘス自身、自分の降りかかった不幸を嘆いてもいます。政治的なことだったり、目が不自由になったことだったり。それでも彼はそれらの不幸を「人間ならだれ...シェイクスピアの記憶

  • 変化は痛みを伴う

    昨日は関東も大雪でした。仕事で、帰りの電車は少しずつしか進みません。通常の2倍はかかったでしょうか。今日は、もうずいぶん雪も溶けています。車を出すのも問題はなさそうです。写真は先日の晴れの日のものです。年末年始の書店は大忙しでした。それだけお客さんが来てくれたので良かった。とは言え、疲れます。冬休みが終わってひと段落したころ、やっと温泉だ!と喜んでいつものところに行きました。温泉と岩盤浴と。美味しいものもいただいて、ゆっくりと心身を温めてほぐして伸ばして。はあー疲れとれたー。でも次の日、右ふくらはぎが痛いのです。それは秋からの古傷でした。11月5日の東北・みやぎ復興マラソン。その前の練習から右ふくらはぎを痛めており、レース当日、20キロ手前の陸橋を登っているとき、「ブチッ」と言いました。あの恐ろしい音は今...変化は痛みを伴う

  • いちばん長い夜に

    仙台の3・11メモリアル交流館で出会った3冊目。前科があり、刑務所での刑期を終え、出所後、再会してはいけない規則を破って再会し、東京の根津でひっそり身を寄せ合って暮らす芭子(はこ)と綾香の物語。連作の短編集で、シリーズとしては三作目のようですが、この本だけでも十分楽しめました。綾香は40代後半、芭子は30代入ったばかり。綾香はパン職人として自立するために街のパン屋で朝早くから働いている。芭子は、なかなか進路が定まらなかったけど、祖母の残した古民家で、あそこ(刑務所)で身につけた裁縫の技術を生かし、ペットショップで働きつつ、ペット用の服をオーダーメードで作る仕事を始めていた。世間知らずの芭子に、元主婦でもあった綾香は料理や身の回りのことや銀杏のことなど、教えられることはなんでも教えていた。綾香があっての芭子...いちばん長い夜に

  • また次の春へ

    明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。と、言っておきながら、気持ちは沈みます。「明けなければよかった」と、思っている人たちもいるでしょう。正月の16時に震度7とは。翌日に羽田空港での事故。震災がなかったら。なぜ、私が?こんなとき、田村隆一の詩の一節を思い出します。「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」(「帰途」の冒頭です)人は言葉を覚えたから、意味を探す。でも、その地震は言葉を持っていない。人は、物語っていくしかない。語って語って、やっと受け入れ難いものを少しずつ消化していく。言葉があるからこそ苦しみ、言葉があるからこそ救われる。実際には、言葉にできないことの方が多いかもしれません。それでもアートやスポーツや、あらゆる手仕事に、気持ちを託すこともできます。この本は、年末に少しずつ読んで...また次の春へ

  • 小さな幸せ

    先週の土曜日、朝7時半くらいでしょうか、起きると世界が回っていました。左から右へ、エンドレス。何とかトイレは済ませましたが、立っていられません。気持ち悪くもなり、また横になる。気持ち悪さがすぎると、冷や汗が。それもすぎて落ち着くと、無性に眠くなって眠る。それを5回くらい繰り返したのでしょうか。やっと起きて歩けるようになったのは13時を過ぎていました。お腹は減っているのですが、ほとんど食べられず(トマトとりんごは食べられました)、14時過ぎに病院へ。めまいでした。月曜の午前に耳鼻科にも行き、いくつか検査してもらいました。結果、「良性発作性頭位めまい症」とのこと。耳にある「耳石」というカルシウムの小さな粒が剥がれ落ち、三半規管に迷い込むことで生じます。原因はよくわかっていませんが、年のせいとも、ストレスのせい...小さな幸せ

  • 潮の音、空の青、海の詩

    この本は、「せんだい3.11メモリアル交流館」で出会った一冊です。「せんだいメモリアル交流館」は、地下鉄東西線荒井駅と隣接しています。2度目の訪問でしたが、早朝に出発していた今回は時間に余裕があり、館内を見回すことができ、この本棚を発見することができました。その後、仙台の大学の先輩が営業している古本とコヒーのお店「マゼラン」で上の写真を見せると、「潮の音、空の青、海の詩」はあるとのこと。ただし、仙台の老舗の書店「金港堂」で開催されている古本市に、売れてなければ。で、歩いて金港堂へ。ありました。そんな流れで出会って、手に入れた本。旅に出たからこそ出会えたと言えます。たぶん、まだ文庫になってないから、その存在自体を知りませんでした。熊谷さんの作品はよく読んでいるのに。仙台から帰って、読みかけの本を読み終えてか...潮の音、空の青、海の詩

  • 水深五尋

    第二次世界大戦下のイギリスの小さな港町が舞台。16歳のチャスは、港で行われている戦闘に興味津々。港には大砲とサーチライト。湾には護衛船団にタグボート。それに、重要な貨物を積んだ船を狙い撃ちにするドイツのUボートと呼ばれる潜水艦が潜んでいる。そのUボートがくせもので、なかなか捕まえることができず、貨物船を沈めらているイギリス側は頭を悩ませていました。あるとき、チャスは川岸に打ち上げられた不審なボウルを発見する。自宅に持ち帰って調べると、暗号らしきメモとバッテリーと時計と発信機が入っていました。チャスは、この発信機の入ったボウルは、スパイが川に流して、Uボートに機密情報を伝えていたのだと推測します。チャスは、まだ16歳だけど、だからこそなのか、対ドイツの戦いに勝つために貢献したくて仕方ない。だから彼は、スパイ...水深五尋

  • 東北・みやぎ復興マラソン2023

    記念すべき、10回目のフルマラソンでした。ちょっとおさらいしてみたら、実は11回目の参加でした。というのは、一度だけ、完走できなかった大会があります。2015年の「さいたま」でした。埼玉から世界へ、と大会は高らかにうたっており、関門の制限時間が厳しかったのです。私は確か、35キロ付近でしたか、突如現れたバリケードによって、人生初、無念の強制DNF(DONOTFINISH)。屈辱的な出来事は、思い出したくないのかもしれません……。さて、当日は曇り、気温は15度くらいで湿度が80%。北西の風が2メートルくらい。走りやすかったけど、湿度が高かったのですぐに汗をかきました。汗をかいたのは、湿度のためだけじゃありません。実は、足を痛めていたのです。いつ痛くなるか、ヒヤヒヤしていました。右のふくらはぎ。当日は痛みはな...東北・みやぎ復興マラソン2023

  • 2度目の荒浜へ

    昨年の5月に続いて、2度目の宮城県仙台市、荒浜へ。昨年は海からの風がものすごくて、時間もあまりなく、急足になってしまっていました。今回は昼には入って、じっくりと見て、聞いて、感じ取ることができました。風は穏やかで、ほんの少しの小雨程度。写真は、荒浜の海です。とても美しかった。荒浜小学校の中も、改めて、じっくりと。明治時代から、140年以上もの歴史がある荒浜小学校。荒れる海は豊かな漁場。松林にはキノコがたくさん生え、貞山堀と呼ばれる運河にはシジミがいっぱい。江戸時代、侍たちが開拓した農地にはコメも実った。先祖への感謝の思いを新たにし、未来への希望を込めた祈りを捧げる灯籠流し。深沼海水浴場には多くの客たちであふれた。独特の文化を築き上げ、活気と人情に満ちた町。7メートルの津波。やっぱり信じられませんが、この震...2度目の荒浜へ

  • 思考の取引 書物と書店と

    昨日の10月27日から読書週間が始まりました(11月9日までの2週間)。合わせて神田古本まつりも開催されています(11月3日までの1週間)。読書週間は、1947年から始まっているそうです。戦後の混乱の中、「読書の力によって平和な文化国家を作ろう!」と、出版社、取次、書店、図書館、新聞に放送も協力して始まりました。今では文化の日を中心として前後2週間となっています。神田古本まつりも、今年で63回を数えます。「読書の力によって平和な文化国家」は、作られてきたのでしょうか?少なくとも、日本で戦争は起きていません。でも、平和を作るのも保つのも発展させるのも、多くの人たちが汗をかいて働かないことには実現しません。油断していれば、あちこちで紛争は起きます。ヘルマン・ヘッセという作家。この人は私にとって、夏目漱石ととも...思考の取引書物と書店と

  • コメンテーター

    伊良部シリーズは17年ぶりになるのですね。「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」「町長選挙」(いずれも文春文庫)。「空中ブランコ」で直木賞を射止めています。伊良部は精神科医。得意分野はパニック障害や社交不安障害、広場恐怖症などの神経症全般。前三作は読みました。電車で笑ってしまった唯一の小説かもしれません。新作を見かけるなり「買う」と即決していました。伊良部も進化していました。伊良部だけでなく、看護師のマユミも。伊良部は、さらに肥えていたかもしれません。行動療法のプログラムを組むと言っては、患者たちと外に出かける。喫煙場所ではない場所でタバコをふかす人に注意せよ、とか、狭い場所に長時間いることができない人をヘリコプターに乗せて飛ぶ、とか、特定の人と関わることが怖い人たち(男子たち)にコスプレ(メイドカフェの衣...コメンテーター

  • 踏切の幽霊

    「幽霊塔」に続いては、「踏切の幽霊」。先の直木賞候補作。残念ながら受賞には至りませんでした。というのは、著者の「幽霊人命救助隊」(文春文庫)を4年半前に読んでおり、感動していたから。その本は、今でも働く本屋で売り続けています。今回は、正直、前回よりも「感動」はしなかった。感動するのは、おそらく、自分を作る大事な一部と重なるから。その意味で、この作品は、どうも共感できるところが少なかったように感じました。それが直木賞受賞作との差なのかはわかりませんが。下北沢付近の踏切内に幽霊が現れ、よく電車が急ブレーキをかけて止まっていました。その原因を探るべく、新聞記者から妻の死をきっかけに女性誌記者へと転職していた松田が担当になる。妻の死への自責の念を持ち、人生にやる気を失っていた松田は、妻が今も自分の近くにいる証を求...踏切の幽霊

  • 幽霊塔

    江戸川乱歩は、小学生以来でしょうか。映画「君たちはどう生きるか」に導かれて。表紙の女性、映画に出てくる夏子にそっくりです。幽霊塔とその前の沼も。幽霊塔では、この女性、秋子と言います。夏子も出てきますが、この女性とはまるで違うような醜さとなって。宮崎監督の漫画が、最初から16ページ載っています。そこに描かれていますが、幽霊塔は、江戸川乱歩の前に黒岩涙香(るいこう)が描いていました。その涙香も、イギリスのウイリアムソンが描いた「灰色の女」を元にして日本に合うようにして紹介していました。この辺りはゲーテの「ファウスト」に似ています。ファウストも、元々はよく舞台で演じられていた演目をゲーテが自分流に料理したものでした。宮崎監督の印象的な言葉がありましたので引用しておきます。漫画の最後のページです。「みたまえ、幽霊...幽霊塔

  • 西の魔女は死んだ

    もう少し梨木さんを読みたくなり、定番に手が伸びました。今年もですが、毎年夏に展開する「新潮文庫の100冊」の常連。この本が入らなかった年はなかったのではないでしょうか。この本には思い出もあります。私が池袋の本屋の人文書にいたとき、もう15年くらい前になりますが、そのとき一緒に働いていた同僚の一人に、この本を激推ししていた人がいました。そのときは「ふーん」くらいで読む気にはならなかった。15年も経てば、当時の書店のラインナップから消えていく本たちの方が多いかもしれません。でも、この本は生き続けています。文庫本として発売されたのは平成13年8月と奥付(本の一番最後のページ)に書いてあります。それからなんと100刷。100回増刷されています。平成13年は2001年のことで、今から22年前。当時、私は24歳で、大...西の魔女は死んだ

  • 僕は、そして僕たちはどう生きるか

    「君たちはどう生きるか」に続いて読みたくなった本。この小説にも「コペル君」と呼ばれる中学生が登場します。それだけでなく、著者の梨木香歩さんを読みたくなったのは、別冊太陽の「河合隼雄たましいに向き合う」を読んだからでもあります。この本に、梨木さんの文章も寄せられています。今日もそうでしたが、あまりにも暑くて疲れて何もする気がわかないとき、ぱらぱらとめくって好きなところから読みました。河合隼雄さんは、2006年の8月に脳梗塞で倒れられました。そのまま意識が戻らず、翌年の7月に亡くなりました。2006年8月は、このブログを始めたときでもあって、それからもう17年。この本と働く本屋で出会って、買わないわけにはいかなかった。それだけ私は河合隼雄の影響を受けていました。「影響を受ける」というより、こんがらがった自分を...僕は、そして僕たちはどう生きるか

  • 夏の思い出

    今、これを書いている机から、顔を上げればスーパームーン(今年一番大きく見える月)が、窓の外に見えています。見るたびに、少しずつ、右上に移っています。今年の夏、暑かった。都心での猛暑日は22回を数え、最多記録を更新中。それでも今月は83キロ走った。これは朝ランができるようになったことが大きいです。7時前くらいに出ても、気温27度、湿度90%だったりもしますが。今日は風が涼しく感じられました。ほんの少しだけかもしれないけど、確かに秋は近づいている。私は冬生まれ、東北人ということもあり、暑いのは苦手です。7月から8月は、ほんと魔のときと言ってもいいくらい。今年の東北に北海道も暑かった。まだまだ続いていますが、心身ともに堪えている人たち多いのではないでしょうか。私は都会の夏が本当に嫌いだった。私にとっての都会は、...夏の思い出

  • 君たちはどう生きるか

    映画「君たちはどう生きるか」を観たら、この本も読みたくなりました。再読のはずなのですが、細部を覚えておらず、記録にも残ってないので、20年近く前だったのかもしれません。こんなに泣ける話だとは思ってなかった。少なくとも3度はグッときました。この本の素晴らしいところは、コペル君と呼ばれる主人公が中学校生活を送る中で経験する出来事と、コペル君の語りを聴いて受け止めるおじさんの伝えたいことが見事に融合しているところです。そんな本は他にないでしょう。だから超ロングセラーとなって売れ続けています。基本的には、これからを生きる若い世代に「これだけは」伝えておきたい大切なことが詰まっています。何が大事なのかは、読むそれぞれの人が感じ取って、大事に育てていくしかありません。私がここでおせっかいにも「これとこれとこれ」などと...君たちはどう生きるか

  • ぼくは満員電車で原爆を浴びた

    今日はもう一冊。明日の8月6日は、78回目の広島原爆の日。当時11歳だった一人の少年が、原爆の爆破地点から1キロ以内にいたにも関わらず生き残りました。その人は米澤鐡志(てつし)さん。自身の体験を語り伝えてきました。その少年は路面電車に乗っていました。疎開先からお母さんとともに、広島の祖父母のところへ足りないものを取りに行くために。その日は月曜日で、仕事に行く人などで朝の路面電車は超満員だった。その真ん中付近で、彼は人々に埋もれていた。そのことが、彼を救うことになった。ピカッと光った後の静寂。静寂の後の地獄。35度でひいひい言っているのに、地面は3000度以上になったという。原爆は100万度。78年前、現実にあったことだけど、信じられない。信じたくもない。と思うから、歴史は歪曲されてきたのかもしれません。少...ぼくは満員電車で原爆を浴びた

  • 伝奇集

    精巧な、あまりにも精巧な作品集。こんなに完成度の高い短編を読んだことはありませんでした。著者のボルヘスはアルゼンチンの人。リョサもそうだったけど、南米の作家の描くものはちょっと違う。アメリカ、ヨーロッパから日本まで続くシルクロードから外れているからか、馴染みのない文体だったり構成だったりする。その違いが新鮮で、ときに強烈で、面白く感じます。ボルヘスの後に、ガルシア・マルケスだったりリョサだったりが続く。その意味で、ボルヘスは大事な人。この作品集は1944年に刊行されています。代表的と言われている「円環の廃墟」と「バベルの図書館」、さらに個人的には一番良かった「隠された奇跡」をそれぞれ2回読みました。読むたびに味わいが変わってくる。まるで万華鏡のよう。東京国立博物館で観た国宝たちも思い出しました。特に、「硯...伝奇集

  • 君たちはどう生きるか

    梅雨明けから猛暑日が続いています。みなさま、暑中お見舞い申し上げます。土曜は朝ラン。で、五時半には起きて、七時前から走り始めましたが、滝汗。10キロ走るのがやっとでした。家の近くには八国山という小さな山があります。山の中は緑がいっぱいで、尾根を中心に走ることもできます。夏場ほど、この山、森、木々のありがたさを強く感じます。強烈な日差しの下、火傷しそうなアスファルトの上を、木陰なしに走ることはもうできなくなってしまったから。その八国山は、映画「となりのトトロ」で登場する「七国山」のモデルです。監督の宮崎駿さんもその近くに住んでいらっしゃる。所沢、東村山界隈では、あちらこちらで監督の目撃情報がささやかれています。私にとっても、身近な創作者。1941年生まれなので父と同い年。で、私とは誕生日(1月5日)も同じで...君たちはどう生きるか

  • 緑の家

    作家が愛されるのは、作家が愛しているからだ、と、この長い小説を読み進むうちに思いました。愛された経験というのは忘れません。その人が亡くなっていたって関係ない。私の中では、ずっと、ありありと生きています。おばあちゃんとテレビで野球を観たことや、おじいちゃんが海で遊んでいる孫たちを見守っていたことや、おじさんがぶっ飛ばす小型の船に乗せてくれたことや、先生が私を受け止めてくれたこと、その他数え上げれば切りがありません。それらの決して消えない愛の一つ一つが、今の私を作っていると言って過言ではありません。作家は、作品を通じて、人々を愛している。登場人物に読者が感情移入するとき、その愛は読者に受け渡されている。そして読者の中に、大切な作品、大切な人物として残り、語り継がれ、生きていく。「緑の家」を読み始めたとき、戸惑...緑の家

  • 写真は今しか撮れない

    当たり前のことなのですが、「写真は今しか撮れない」のでした。今日、ふと思って、書いておきたくなりました。しばしば書いてきましたが、このブログが始まったのは、私のカウンセリングが終わるとき。カウンセラーを相手に充分に語り尽くして、表現の場を自分で作りたくて。そして、ブログとともに始まっていたのも写真でした。今はスマホで撮っていますが、かつてはデジカメ。初めてカメラを買って、撮りまくった。被写体は花が多かった。どうしてでしょう?これもカウンセリングが終わるとき、道端に咲いている花に気づいたのでした。今でも鮮明に覚えています。目白のカウンセリングセンターからおとめ山公園の脇を通り抜け、右手にあったマンションの生垣。鮮烈な赤だったので、おそらく椿だったのでしょう。その花を撮りたい!と強く感じたのでした。過去に縛ら...写真は今しか撮れない

  • 「本」ではなく

    この前の日曜日、働いている本屋でこんなことがありました。カウンター内のパソコンで作業をしていると、小学校低学年くらいの男の子が、ご両親に見守られながらおずおずと近づいてきました。「お問い合わせですか?」「『おばけずかん』を探しています」パソコンで確認してご案内。「この本で大丈夫?」男の子はかすかにうなずきました。「ごゆっくりご覧ください」ここまではよくある接客です。が、続きがありました。引き続きカウンターで仕事していると、さっきの男の子が本を持ってやってきた。何かと思って顔を近づけると、「見つかりました!ありがとうございました」「いやいや、こちらこそありがとう」そんな言葉を返して、その後1分くらい、にやにやが止まらなかった。うれしかったから。お客さんが探している本がどんな本であれ、出会う手伝いができたとき...「本」ではなく

  • ファウスト 第二部

    読み終わりました。大長編でした。マルガレーテを救い出せなかったファウストは、意気消沈しています。そんな彼の心をとらえたのが「美」でした。「美しさ依存症」のようになっていく。元々が完璧主義のファウストなので納得もします。美しさの象徴とも言える古代ギリシャの絶世の美女、ヘーレナを現代に呼び戻す使命を、そのとき仕えていた王様からファウストは受けます。メフィストフェレスの助力を得て、古代ギリシャの旅へ。そこは過去であり冥界。神々やメフィストフェレスの仲間や死んだのに生きている霊や、肉体を探し求めている人造人間がふらふら飛んでいたり。神話の世界から登場する固有名詞が多くて、ここは読むのも大変。が、ファウストは、へーレナを連れてくることに成功し、自分の妃として歓待する。やがて子供も生まれ、しあわせも束の間、その子は大...ファウスト第二部

  • 本物は解放する

    この前書いたら、もう一つ書きたいことが出てきたので書いておきます。それは、「本物は解放する」ということ。これが「使える知識」なのかは、よくわかりませんが、私が体験から学んだ「結晶化した知恵」のようなものです。特に、人間関係において、腑に落ちることが多いと思います。そもそも、何が「本物」なのでしょうか?揺るがない、たった一つである、にせ物や見かけばかりの物ではないこと、その名に値する。例えば、「先生」、それに「友人」。本物は、その名に値する。ニセモノではなくホンモノであるから、持続する。持続可能性ということも、本物の条件に入っていると思います。本物は、真、真実でもあります。心で、体で、その人の存在そのものが、そのようになろうとしている真。「ああしろ」とか「こうしろ」とか「こうした方がいい」とか「はやく!」と...本物は解放する

  • ファウスト 第一部

    買ってから一年は経っていたでしょうか。今が読むときでした。「若きウェルテルの悩み」に感銘を受けていれば、自ずと「ファウスト」も目に入ってきます。著者のゲーテが、24歳から書き始めて、82歳で書き終え、83歳で没したと言われている作品です。第一部は、一度読み、感想を書こうとしたけど書けず、もう一度頭から読みました。脚注も多くて、二度読んで、より具体的に染み込んできた、というか。今は第二部を読んでますが、ひとまず第一部まで読んでのことを書いておこうと思います。まず、ファウストは、偉い学者さん、となっています。街に顔を出せば、人々が寄ってきて感謝を述べる。疫病が流行ったとき、治してもらった、とか。当時の「学問」は、法学、神学、医学、哲学のこと。これら全てを治めた大学者、ということになっています。しかし、ファウス...ファウスト第一部

  • 下積みは嘘をつかない

    写真は、少し前の「もみじ」です。正確には「いろはもみじ」。春に小さな花をたくさんつけ、その後に実を結びます。赤くなっているところが実であり、種。これが風に乗って飛んでいく。「タケコプター」みたいな形ですが、そのように飛ぶのかは、確認したことがないので不明です。で、書いておきたいことは、タイトルにある通り。「下積みは嘘をつかない」今の私を支えている言葉。小説は、日々、少しずつ進んでいます。ひねり出して一日二行という日もありました。たかが二行、されど二行。今は対話の場面で、とても慎重になっています。人と人が向かい合い、話し合うとき、いろんなことが流れている。その人の歴史が滲みもする。欲望がちらつきもする。己が縮んだり、伸びたり、怒ったり、震えたり。その生きた蠢きを、どう書くのか。どう書けるのか。そもそも、この...下積みは嘘をつかない

  • トラタのりんご

    昨日は子どもの日でした。絵本、読んでますか?私は、子どもの頃、最寄りの図書館の靴を脱いで上がれる子どもの本の島で、飽きずに過ごしていたことを覚えています。子どもに絵本を買ってあげたい。でも、何がいいのかわからない。そういうお客さんも少なからずいます。子どもに伸ばして欲しい力とはなんでしょうか?想像力、共感力、自己肯定力、学力、計算力、運動能力、表現力。あげれば切りがありません。私が今までで一番苦しかったとき、もっとも救ってくれたのが、私を理解しようとしてくれる人の存在でした。言ってみれば「理解力」。自分自身が自分のことをわからなくなっているとき、上から目線の「お言葉」でも、ありきたりの「常識」でも、あるいはなんらかの神がかった「教え」でもなく、今の私を理解しようとしてくれる人が何より大切でした。この経験が...トラタのりんご

  • There is no grass called weeds, me too

    雑草という草はない、私もThereisnograsscalledweeds,metoo

  • Thanks to the shelf

    棚のお陰です。Thankstotheshelf

  • Walking is fun

    散歩は楽し今年撮った写真で、これは、と思うものをまとめてアップしました。楽しんでいただけたら幸いです。写真は、インスタグラムと、それと連動したフェイスブックに載せることが基本になりました。とは言っても、インスタとフェイスブックは、無料とはいえ「会員制」ですので、「公開」されているとは言えないのかもと思いまして。このブログは、いつも写真と共にありました。最近、写真や文章の投稿が減っているのは、前述のことと、ここに書くより小説の一行を書きたいからです。それはそれでいいし、ここに投稿し続けなければならない理由もありません。私が好きでやってきたこと。日記の延長のようなもの。3段跳びじゃないけど、はじめに日記あり、次にブログあり、そして小説あり、なのかもしれません。いずれにしても、大事にしてきた場所です。私にとって...Walkingisfun

  • Canola flower, the awakening of the earth

    菜の花、土の目覚めCanolaflower,theawakeningoftheearth

  • Supported, together

    支えられて、ともにSupported,together

  • Wild cherry blossoms

    山桜Wildcherryblossoms

  • Extend to the sky

    空へ伸びるExtendtothesky

  • Unbreakable cherry blossoms

    折れない桜Unbreakablecherryblossoms

  • Mimosa, Women's brilliance

    ミモザ、女性の輝きMimosa,Women'sbrilliance

  • Eyes of the stars in early spring

    早春の星々の瞳Eyesofthestarsinearlyspring

  • Blue sky, blue lake

    青い空、青い湖Bluesky,bluelake

  • 孤塁

    東日本大震災から12年。まだまだ終わっていないことがたくさんあります。福島第一原発の廃炉はいったいいつになったら「終わる」のでしょうか?終わりを見届けるまで、多くの人たちには時間が足りず、また関心も継続しない。「あんなこともあったね」で、終わりにならない人たちがいます。現在進行形。一人一人に物語があります。その物語は、空と大地と海と、そこに暮らす生き物の恵みと人々のつながりによって編まれていく。地震と津波だけならば、更地の上に新しい土を重ね、高くなった場所でまた暮らせる。でも、放射能で「汚染」されてしまったら?そんなこと、歴史上なかったこと。「原発事故は起きない」とされ、だから原発爆発後の地元消防との訓練もしていなかった。「想定外」という嫌な言葉を何度も聞かされました。「絶対」はないのだと、学んだのが東日...孤塁

  • 鈍感な世界に生きる敏感な人たち

    この本が出たのは2016年。「HSP」本は、ずいぶんと増えましたが、これが元祖だったのではと思います。「HSP」とは、「HighlySensitivePerson」のこと。「感受性が高い人」という意味です。この本を店頭に並べるようになってから、ずっと切らさないでいました。こつこつと棚から売れているのはわかっていたので。この本と出会ってから、自分もそうなんだろうと思ってました。読む気になったのは、どうしてだろう?自分の生まれ持った特徴をより深く知ることで、人と作品との関係をもう一歩進めようとする思いが芽生えたからかもしれません。読んでみれば、やっぱり思い当たることばかり。「感受性が高い」ばかりに、影響を受けやすい。ほとんどの人が気にならない小さな音でもすぐ拾ってしまう。だから基本的に宴会は苦手。学生寮での飲...鈍感な世界に生きる敏感な人たち

  • 火花 北條民雄の生涯

    この本を読むと、北條民雄が生きていた時代の空気や、文学の師であり、希望の光ともなった川端康成との関係、またハンセン病療養所の中での友人たちとの確かな交流も、目に見えるように再現されていきます。昭和8年(1933年)、民雄が19歳の3月、ハンセン病の告知を受け、その年の2月に川端(34歳)の「伊豆の踊り子」の映画が封切りされ、1月にヒトラーがドイツの首相となり、2月に小林多喜二が虐殺されている。昭和11年(1936年)、民雄が22歳のとき、川端たちが立ち上げた文芸誌「文學界」の2月号に「いのちの初夜」が掲載された。そのとき、川端は「雪国」を連載中だった。その2月の26日、皇道派によるクーデター未遂事件(2•26事件)が起きている。民雄が亡くなるのは翌年の昭和12年(1937年)、23歳の12月5日、早朝。そ...火花北條民雄の生涯

  • 熊本城マラソン2023

    4年ぶりのフルマラソンからほぼ1ヶ月になろうとしています。やっと体調も超回復してきた感じです。購入した大会の写真が届きました。この写真は、ラスト1キロ付近でしょうか。びしょびしょですね。自分ではあまり意識してませんでしたが、雨に濡れました。スタート前まで雨で、整列しているときにはいったん止みました。なので、雨対策グッズ(100円ショップで買ったレインコートとビニール手袋)は、スタート時にゴミとして回収してもらっていました。雨上がりは走りやすいものです。強い日差しはなく、風もなく、ひんやりしており、何より適度に空気が湿っているので呼吸が楽で、水分補給も少なくて済みます。出出しは快調でした。ほぼ1キロ5分ペース。これを最後まで続けられれば、自己ベストの3時間38分30秒を上回るだけでなく、3時間半切りも見えて...熊本城マラソン2023

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