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ドラクエ9天使ツアーズ https://blog.goo.ne.jp/unoji73

DQ9のイラストと4コマ漫画を連載中です。オリジナル要素が多いので未プレイの方も遊びに来て下さいね♪

ドラクエ天使の旅が終わった人も、途中の人も、まだこれからの人も!気ままな4人の、軽妙な珍道中にご案内します♪

うかゆか
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2009/11/06

  • ケジメ9

    ユールと別れ、上の村への暗い道をカンテラの灯りを頼りに登りながらシオは、一歩進めるごとにこれからの雑事が身近なこととしてこの身に降りかかってくるのを実感していた。結婚に関わる雑事。そのどれらも具体的に予定立てていけば、非常に面倒なものだわ、と思う。実は自分は、結婚ではなくその先にある面倒さから目を逸らしていたのでは無いかと考えてしまうほどだ。日常の雑事はさほど苦ではないのは、それが当然と身についているからで、元来の自分は実は母と同じ気性で、めんどくさいことから逃げたい人間なのでは無いか。(あり得なくもないわ)だってあの母の血を引いているんだもの、と考え、随分おおらかな答えを導き出せるようになったものだ、とここ数日の身の回りに起こったことに一人、苦笑する。そんなはずはない、私は几帳面な人間だ!と頑なにあった...ケジメ9

  • ケジメ8

    女と男の見栄も外聞も役立たず、自然にこぼれた言葉に返るのは平熱。ユールは淡々と遠い日の話をする。「俺は初めてシオにあった時のことを今でもよく思い出す」初めてこの村を紹介されて、行商に訪れたのはちょうど今頃の季節。まずは下の村での商いを許されて、細々とした日用品を広げていた。村の男たちが賑やかしに集まる中、女の姿もちらほらと散見されるものの売上は芳しくなく。まあ初めての商いならこんなものか、と午後の昼下がりに手持ち無沙汰になって売上の計上を確認がてら帳簿をつけていて金額が合わないことに気がついた。やや多い。10名にも満たない客足だったが、一時、やりとりが集中したことがあった。あの時に誰かに釣り銭を渡し損ねている。そう気がついたユールは思い当たる客数名を探して村を歩き回った。確認の最後の一人は上の村の女性。な...ケジメ8

  • ケジメ7

    「悪かったわ、なんだかよく分からない事で気弱になってる自分が馬鹿らしくって」思わず笑ってしまった、と目尻の涙を拭いながら謝るシオを見て、呆気に取られていたユールも気負っていた両肩を下げた。そしてこんな事を言う。「シオでも子供みたいに笑うんだな」初めて見た、と妙な関心の仕方をされ、子供みたいに、と言われバツが悪くなって前髪を直すフリをして誤魔化す。「あなたが笑わせるからよ」「俺のせいか」「そうよ」「それで気弱になっていたのが終わったのなら良かった」役に立てたのなら何より、という響きには微笑む。本当にこの男は。普段は朴訥でありながら、不意にその心の内を広げる。本人も意識しない奥底からの真っ当な生き方は、飾り気のない人柄そのもの。だから自分はこの人を選ぶ。そのために。「結婚について話をしようと思ってきたの。でも...ケジメ7

  • ケジメ6

    夫婦に。唐突なその一言には、一瞬理解が追いつかなかった。異国の言葉か。フーフとかいう珍味だか地方だかの話でもしだしたのかと思ったくらいだ。それにしたって唐突だが。「はっ?!」驚いてその場で固まっているシオの反応を見て、いやあの、と口の中でモゴモゴと言葉を濁して、手にしていた皿とフォークを木箱に乗せる。そして、きちんと座り直してもう一度。「夫婦になろう」「誰が」「誰が、って。俺と、シオが」「俺とシオがなんですって?!」「だから、夫婦に」「どうしてそれをあなたが言うのよ!」「えっ、いけなかったか」「私が言うはずだったのよ、それを!」「えっ、なら別にどっちが言っても良」「良くないわよ!この村では力が証なの!ドラゴンを倒してその牙を根本からぶっこ抜いて生涯の伴侶となる者に受け取らせて婚姻の証とするの!」「なん、だ...ケジメ6

  • ケジメ5

    馬車留の柵にもたれ掛かりながら、山の端に今にも沈みそうな夕日を眺めていたシオは、遠い日の幼い恋愛をなんとなく思い出していたが。「待たせた」と背後から声をかけられて、その人物を振り返った。記憶の中の行商人の彼とは違い、愛想もなければ社交辞令もない、無口で堅実な商売をするためだけに生きているような男だ。だから「急がせたのなら悪かったわ」とシオが応えれば、「いつも通りだ」とだけ返して、柵の中に戻っていく。シオより頭一つ大きい背丈に荷を扱う仕事で鍛えられた肉体は、何も知らない人間が見れば、それなりの武闘家かと見紛うだろうが、この村の人間は知っている。滅多にお目にかかれないほどの、運動神経の悪さを。現に今も、自分の体の大きさをうまく把握していないかのように、柵に思いっきり腰をぶつけてよろめいていた。おそらくシオだけ...ケジメ5

  • ケジメ4

    シオに初めて求婚した男は、村に馴染みの行商人の息子だった。それまで通い詰めていた父親に代わり、この村の担当を任されたばかりの彼は、多くの娘の好奇にさらされながらも物おじせず、シオに自分を売り込む事に熱心だった。そう、商いよりよほど。その情熱と一途さは若い娘たちの羨望を集め、まだ若手だったシオもそれなりに気を寄せていたのだ。だから彼が村に滞在するのは決まってシオの元で、その仲が半ば公認の様になるのもそう日数がかからなかった。一晩を共にする間に、彼とは互いに旅の話を交わすことで信頼を深めあう。その流れで求婚された夜に、シオは、「なぜ私なの?」と、娘らしい可愛らしい質問を投げる。6つほど歳上の彼は、娘に添い寝する父親がおとぎ話でも聞かせるような声音で思いを打ち明けた。「君は母親が不在の家で育っただろう?僕は父親...ケジメ4

  • ケジメ3

    結婚なんてものは人生の足枷だ。両の手足を縛り、自由な行動を制限し、個人の思考を封じ込める。そうであっても構わないという強い意志がある者だけが、そこへと踏み込んでいく。もしくは、枷をものともせず自在に動ける力を持つ者だけが欲することのできる生き様だ。強さこそが正義、の村で育ったシオは、いつからか結婚に対してそんな意識があった。結婚、から生み出された家族の一員として思うこと。父や妹たち家族を枷だと思ったことはないし、もし他者から「それを枷というのよ」と指摘されたとしても、なるほど自分は枷をものともしない力を持つ者なのだ、と考えただろう。それでも、結婚に対しては意義を見出せなかった。どんな男から求婚されてもそれを受け入れたいと思うほどに魅力的なものだとは思えなくて。それよりも末の妹ミオを一人前の冒険者に育てなく...ケジメ3

  • ケジメ2

    「あんただって昔からちっとも変わりやしないじゃないか。何かあったら絶対ここだ」ゆるい下りになっている草道を、降りてくる母。羽虫を軽く手で払う時には、記憶の匂い。虫除けのハーブを使った白粉の匂いは、祖母の代からずっと家に伝わる調合のそれだ。「昔から、って」ここで母と顔を合わせた記憶はない。不意をつかれて思わず立ち上がっているシオは、泉の淵までやって来た母の真意を測り損ねていた。「父さんに聞いたの?」機嫌を損ねる度にシオがここで一人籠ること、父親なら知っていてもおかしくはないと思ったが。母は、鼻で笑った。それも見慣れた仕草の一つ。「あの人は、女の痩せ我慢にずかずか踏み込むような男じゃあないよ」痩せ我慢。別に痩せ我慢を張って逃げ込んでるわけじゃない。そう反論しかけて、では父は知らないことで、やはり母だけに知られ...ケジメ2

  • ケジメ1

    夏の午後。(ああもう!腹立たしいったら!!)といった内心の声がだだ漏れの様な乱暴な打ち水をぶちかましたシオは、水桶を納屋に仕舞って、そのまま家には帰らず、少し歩いた先にある泉へ戻った。木の板で作られた足場は何の不安もなく、慣れた仕草でスカートの裾を捲り上げてしゃがみ込む。前のめりになって、両手を泉に浸す。小さいながらも湧水を湛えている泉は年中、冷たい。手の平から冷えていくそれはそのまま、熱った心も冷ましていくのが昔からの。(落ち着け私。何も今に始まった事じゃない。昔からそうじゃないの。あんなこともこんなことも、全部)シオが手を浸したことで波立っていた泉の表面が、徐々に落ち着きを取り戻し、平らかになっていくのを見つめながら、今も家で好き勝手なことを言い合っているであろう家族のことを思う。(そうそう、あの人た...ケジメ1

  • マシロの帆

    マシロが望む場所にマシロの個室を用意してやるよ、と兄は言った。でも。(ここは最悪)と、揺れの収まらないベッドの上で体を丸めて硬く瞑っていた目から涙が流れる。感情的なものではなく、生理的な現象だ。初めて乗った船は最悪に居心地が悪かった。村から出て慣れない道を歩いて兄についてきたマシロを悩ませたのは疲労よりも深刻な人酔い、さらにそれを超えて辿り着いた船で船酔い。(だから村の外なんか嫌い。何にも良いことなんかなかった)知っていた。自分は知っていたのに、それでも兄がいてくれるなら大丈夫かも知れない、と思ってしまったのは、おそらく先に弟のセイランが村から出たから。自分より年下のセイランはその学力を認められて世界的に有名な学園へ入学するのだという。村ではその話題で盛り上がり、普段マシロとすれ違っても挨拶程度しかしない...マシロの帆

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