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ネタバレ・あらすじを交えて感想(批評?)を語りながら、映画の魅力を再発見していきましょう。

映画館で観た作品やテレビのドラマ、DVDなどについても語ります。

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2009/07/04

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  • 『劇場版 ひみつ×戦士 ファントミラージュ!~映画になってちょーだいします~』にちょーだいされました!

    なんともイケてる名前じゃないか。 怪盗ファントマと快傑ミラージュが好きな私は、「正義の怪盗ファントミラージュ」というネーミングにワクワクした。 四人の可愛い怪盗が活躍する『ひみつ×戦士 ファントミラージュ!』は、観れば観るほど、知れば知るほど感心する作品だ。■ロールモデルとしてのガールズ×戦士 そもそも、2017年の『アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!』にはじまり、2018年の『魔法×戦士 マジマジョピュアー...

  • 『パラサイト 半地下の家族』 日本はパラサイトがいっぱい!

    少し前に、友人が「いろんな国の映画を観て思うけど、一番面白いのは韓国映画」と話していた。 インドにもアメリカにも、日本にだって面白い映画はたくさんあるけど、たしかに韓国映画の面白さは尋常ではない。少なくとも、日本で封切られる映画を観る分にはそう思う。 個性的なキャラクターに魅せられ、意外性に富んだ複雑なプロットに翻弄され、心を揺さぶる衝撃に見舞われて、放心状態で映画館を後にする――そんな経験が少な...

  • 『Fukushima 50』 ようやく現れた映画

    涙が止まらなかった。 『沈まぬ太陽』で渡辺謙さんと、『空母いぶき』等で佐藤浩市さんと組んだ若松節朗監督の、名優二人を中心に据えた群像劇は見事だった。 『Fukushima 50』(フクシマフィフティ)は、スケールの大きさといい、ドラマの密度といい、日本映画屈指の作品であろうと思う。 アメリカ同時多発テロ事件――多くの犠牲者を出した2001年9月11日の大事件――から10年後の映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い...

  • 『荒野の用心棒』と『用心棒』は天と地の違い

    【ネタバレ注意】 傑作をリメイク・翻案すればそれもまた傑作になるほど、世の中あまくはない。 せっかくリメイクするなら、元になった作品の魅力を寸分たがわず再現すれば良さそうなものなのに、物語を膨らませたり削ったり、「現代風」にしてしまったりと、原作からずいぶん変えてしまうことが少なくない。 映画プロデューサーの松江陽一氏がかつて語ったところでは、「アメリカのシステムで、作品にシナリオライターのクレ...

  • 『スター・ウォーズ/クローン大戦』 スター・ウォーズは七部作と言っても過言ではないのだ!

    スター・ウォーズ・シリーズがいかに面白いことか。 それを改めて実感させてくれるのが『スター・ウォーズ/クローン大戦』だ。 よく知っているのに見たこともない世界――それはスター・ウォーズ・シリーズの大きな魅力だ。「オリジナルのスター・ウォーズには、サイエンス・フィクション、侍映画、西部劇、オペラ、連続ラジオドラマ、レースカー映画、噛み合わないカップルのコメディ、アラビアのロレンス、マペットに第二次世...

  • 【投稿】ガミラス第二帝国の戦争準備 ガトランティス軍とガデル・タラン(その3) /『宇宙戦艦ヤマト2199』ガミラス考察補論集1 小説~ガトランティス戦争編~

    久しぶりの記事になるが、T.Nさんの『宇宙戦艦ヤマト2199』に関する投稿の続きを公開する。これもまた、「イスカンダルの王権とデスラーの人物像について」の一部を構成するものだ。 本稿では、これまで以上に図版をじっくりご覧いただきたいと思う。 ブログの更新に時間を要してしまい、原稿を託してくださったT.Nさんと楽しみにされていた読者諸氏にお詫び申し上げる。---『宇宙戦艦ヤマト2199』 ガミラス考察補論集1思考実...

  • 『宇宙戦艦ヤマト2202』とは何だったのか 第七章「継承篇」

    (この連載の初めから読む) 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の企画の初期段階で、羽原信義監督と福井氏は「今の時代にあった新しいことをやるべき。ただし、観客が『あ、この場面知ってる!』という映像的な記憶は随所に入れよう」と語り合ったという。 その言葉どおり、沖田艦長の命日にかつてのヤマトの乗組員たちが「英雄の丘」に集まって、上空のアンドロメダを見上げる場面など、旧作の印象的な場面が2202では再現され...

  • 『宇宙戦艦ヤマト2202』とは何だったのか 第六章「オカルト篇」

    (この連載の初めから読む) ここまで『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』について語る中、私はおかしいと感じることを挙げてきた。 第一章「SF篇」では、第1話冒頭の大戦艦の登場が不自然で理にかなわないと述べた。 第二章「ミリタリー篇」でも、第1話冒頭の大戦艦の登場がおかしいこと、加えてガトランティス艦隊の配置までもがおかしいと述べた。 第三章「断絶篇」では、地球から遠く離れた宇宙の彼方、ガトランティス人た...

  • 『宇宙戦艦ヤマト2202』とは何だったのか 第五章「作劇篇」

    (この連載の初めから読む) たとえば、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の第9話「ズォーダー、悪魔の選択」。 帝星ガトランティスの大帝ズォーダーともあろう者が、なぜか辺境の星・地球の一士官ごときに目をかけて延々と自分の心中を語り続ける。 それを聞かされた古代は古代で、ズォーダーの長広舌から解放されると三隻のガミラス艦に向かい、三隻に分乗している民間人らすべてに声が届く状態で、艦内の森雪一人への個人的...

  • 『宇宙戦艦ヤマト2202』とは何だったのか 第四章「社会批評篇」

    (この連載の初めから読む) 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第一章公開直後のインタビュー記事の福井晴敏氏の発言が私の目を引いた。 「波動砲封印問題は原発問題と、ガミラスとの同盟は日米安保と重なります。他にもいろいろと、すべて現代日本に当てはめられることばかりなんです」 原子力発電所を巡っては、いろいろ複雑な問題がある。アニメーション作品の枠を使ってそこに切り込むとは、なんと大胆な。私は作り手の気...

  • 『宇宙戦艦ヤマト2202』とは何だったのか 第三章「断絶篇」

    (この連載の初めから読む) 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』は、旧作『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』のリメイクであると同時に『宇宙戦艦ヤマト2199』の続編でもある。 だが、リメイクとしての要素と続編としての要素、その配分はずいぶん違う。 シリーズ構成と脚本を担当した福井晴敏氏は「『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』ではなく、いわゆる続編を作って欲しいと言われたらやっていなかったかもしれないで...

  • 『宇宙戦艦ヤマト2202』とは何だったのか 第二章「ミリタリー篇」

    (この連載の初めから読む) SFのサブジャンルにミリタリーSFというものがある。 堺三保氏はミリタリーSFの定義を論じる中で、次の点を重要な条件として挙げている。(1) 主人公が軍人である。(2) 戦争が、舞台設定であると同時に、物語のテーマでもある。(3) 戦闘の詳細な描写があり、戦術や戦略に関する専門的かつ技術的な言及がある。(4) 舞台は未来かつ地球外のいずこかである。 条件により強弱はあるものの、『宇宙戦艦ヤマト...

  • 『宇宙戦艦ヤマト2202』とは何だったのか 第一章「SF篇」

    終戦直後、内務省の検閲官に自作『虎の尾を踏む男達』をくだらないと云われた黒澤明監督は、こう云い放ったという。 「くだらん奴がくだらんということは、くだらんものではない証拠で、つまらん奴がつまらんということは大変面白いということでしょう。」 他人が作ったものをくだらないとかつまらないと云うのは勇気がいる。自分がくだらん奴でつまらん奴だと白状するようなものだからだ。 私はこれまで、たびたび『宇宙戦艦...

  • 『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』 退職したらゲームをしよう

    ゲームを原作とする映画や、ゲームを扱った映画は少なくない。それらの中には面白い映画、優れた映画もあるのだが、総じて私はゲームを扱ったり原作にすることに肯定的になれなかった。 なぜなら、映画よりもゲームのほうがずっと面白く、強烈な体験だからだ。 アクションゲームやアドベンチャーゲームに比べれば、映画のほうが物語性の豊かさや、人情の機微の描き方において勝り、ゲームファンをも楽しませる作品になるかもし...

  • 『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』 事件の裏にいる者

    【ネタバレ注意】 ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントの過去のスパイダーマン映画、すなわちサム・ライミ監督のスパイダーマン三作(2002年~2007年)とマーク・ウェブ監督のアメイジング・スパイダーマン二作(2012年~2014年)は、いずれも純愛物語だった。 サム・ライミ監督作では、三作すべてを通じて主人公ピーター・パーカーと幼馴染MJ(メリー・ジェーン・ワトソン)の関係が描かれた。 マーク・ウェブの監督作では、...

  • 『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男』 山崎貴監督のここが違う

    (前回「『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』のそこは違う」から読む) 失礼ながら、山崎貴監督はあまりアニメをご覧になっていなかったのではないか。 『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』の「解説」を読んで、そんな疑問を抱かざるを得なかった。 先日の記事に書いたように、牧村康正・山田哲久共著『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』はヤマトファン必読の書だ。もともと面白い...

  • 『カイジ 動物世界』が描く人間社会

    中国映画『カイジ 動物世界』を鑑賞したのは、日本のマンガ、映画で知られる作品を中国映画界がどう料理したか興味を引かれたからだ。 一見すると奇異な映像に面食らう。劇中で突然、セルルックなアニメやCGIで描かれた化物たちとの壮絶な殺し合いが挿入されるのだ。ときには激しいカーチェイスも繰り広げられる。 これらは「頭がおかしい」主人公の妄想なのだが、そんな映像を挿入しなくてもストーリーは語れるのだから、いさ...

  • 『グリーンブック』のただ一つのフィクション

    【ネタバレ注意】 「天才であるだけでは十分ではありません。人々の心を変えるには勇気が必要です。」 (Being genius is not enough, it takes courage to change people's hearts.) ピアニストの黒人ドン・シャーリーが仕立て屋の前で「自分はサイズが

  • 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』 がんばれキング!

    ゴジラ、ラドン、モスラはいずれも単独主演映画を持つスター怪獣だ。1954年公開の『ゴジラ』、1956年の『空の大怪獣ラドン』、1961年の『モスラ』は、タイトル・ロールの怪獣が出現することで充分に観客を魅了する作品だった。 残念ながら、ゴジラ、ラドン、モスラのようなズバ抜けた魅力を持つスター怪獣を次々に生み出せるものではない。 東宝怪獣映画で怪獣が単独主演した作品には、他にも『大怪獣バラン』(1958年)があるけ...

  • 『クレイジー・リッチ!』 金持ちの不条理

    出演者をアジア系の役者ばかりで固めた現代作品としては『ジョイ・ラック・クラブ』以来25年ぶりといわれ、しかも徐々に公開館数が拡大した『ジョイ・ラック・クラブ』と違い、米国で封切られるや三週連続で週末興行収入ランキング第一位を記録して話題になった『クレイジー・リッチ!』。 日本が経済大国と呼ばれ、米国の反発を抑えるために米国に工場を建設して米国の労働者を雇用しはじめた1980年代とは隔世の感がある。当時...

  • 『サウンド・オブ・ミュージック』 おじさんからの手紙

    Y**ちゃんへ お元気ですか。 実写映画のBlu-ray Discを贈るのは初めてでしたが、『サウンド・オブ・ミュージック』は楽しんでもらえたでしょうか。 これまで贈るのは本ばかりで、たまに『ズートピア』などのアニメーション映画のBlu-ray Discを贈るぐらいでしたが、Y**ちゃんも大きくなったのでそろそろ実写映画も楽しめるかなと思いました。 『サウンド・オブ・ミュージック』はもともとブロードウェイで大ヒットしたミュージ...

  • 『ハンターキラー 潜航せよ』は面白い上に面白い

    【ネタバレ注意】 いやはや、『ハンターキラー 潜航せよ』はなんて面白い映画なんだ。 よくもまぁこんなに面白く作れるものだと感心した。 ロシア海域でロシアと米国の原子力潜水艦が沈没した。両者が交戦したわけではない。何者かによりどちらも沈められたのだ。 その頃、ロシアではドゥーロフ国防相がザカリン大統領を拘束し、クーデターを起こしていた。ドゥーロフ国防相は米国と開戦し、ロシアの全権を掌握しようと企ん...

  • 『アベンジャーズ/エンドゲーム』 ありがとうアベンジャーズ

    【ネタバレ注意】 こんな映画が作れるとは! 『アベンジャーズ/エンドゲーム』には感服するばかりだ。 2008年の『アイアンマン』にはじまり、11年の歳月と21作品に及んだマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)が、22作目の『アベンジャーズ/エンドゲーム』で遂に堂々たる結末を迎えたのだ。 過去、映画界でこんなことはなかっただろう。 MCUは全世界の興行収入が100億ドルを超える大ヒットシリーズで、アベンジャー...

  • 『運び屋』 90歳は運び屋ではない

    【ネタバレ注意】 史上最高齢にして最大の麻薬の運び屋レオ・シャープに取材したサム・ドルニックの記事「The Sinaloa Cartel's 90-Year-Old Drug Mule(シナロア・カルテルの90歳の運び屋)」にインスパイアされたクリント・イーストウッド監督の映画『運び屋』は、まぎれもない傑作だ。 レオ・シャープをモデルにした老いた運び屋アール・ストーンを、『人生の特等席』(2012年)以来の主演となるイーストウッドが演じ、麻薬取締...

  • 『レゴ ムービー2』 またもやサイコー!!

    【ネタバレ注意】 凄いことだ。傑作『LEGO ムービー』の続編『レゴ ムービー2』もまた傑作だった。『レゴバットマン ザ・ムービー』、『レゴニンジャゴー ザ・ムービー』と並んで、レゴ映画にハズレがないことを立証したのだ。 『LEGO ムービー』は一回こっきりしか使えない仕掛けをほどこした重層的なメタフィクションだった。『シュガー・ラッシュ』がゲーム中のキャラクターを擬人化した映画だったように、『絵文字の国のジ...

  • 『アクアマン』 世界は英雄を待っている

    【ネタバレ注意】「王は国のためにだけ戦う。みんなのために戦う者が必要なの。」(A king fights only for his own nation. You fight for everyone.) 『アクアマン』は面白い物語のお手本だ。 なにしろそのプロットは1980年の映画『フラッシュ・ゴードン』にそっくりなのだから、面白いに決まっている。 とてもマッチョで、地元ではヒーロー扱いされている男が、異世界に入り込んで超文明に仰天する。ところがそこは高度な科...

  • 『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』のそこは違う

    ■ヤマトファン必読の書 ヤマトファンならぜひ読んでおきたいのが、牧村康正氏と山田哲久氏の共著『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』[*1]だ。 西崎義展氏の誕生から死までの全生涯を膨大な証言と資料の検証で紐解いたこの本は、型破りな人物の評伝としてはもとより、アニメ業界、映画業界、芸能ビジネス業界の実態を教えてくれる貴重な書だ。 この本を最後まで読めば、『宇宙戦艦ヤマト』シリーズの続編、リメイ...

  • 日本インターネット映画大賞への投票 2018年度

    気がつけば、今年で当ブログの開設から10年になります。 お読みくださる皆様、コメントをくださる皆様、ありがとうございます。 これからもぼちぼちやっていきますので、よろしくお願い致します。--- さて、今年も応援したい作品を以下に挙げて、日本インターネット映画大賞に投票したいと思う。 応援したいと思う作品は、必ずしも優れた作品、面白い作品と一致するわけではないが、そこには人を惹き付けるものがあると思う...

  • 『泣き虫しょったんの奇跡』への共感

    【ネタバレ注意】 瀬川晶司氏の自伝を映画化した『泣き虫しょったんの奇跡』の素晴らしさを語るには、ストーリーの説明が欠かせないと思う。 ストーリーを説明すれば、『泣き虫しょったんの奇跡』の素晴らしさはお判りいただけるであろう。 したがって、本稿は『泣き虫しょったんの奇跡』のあらすじの紹介である。未見の方はご注意願いたい。 映画は、"しょったん"こと瀬川晶司が小学五年生になった春からはじまる。将棋好き...

  • 『シュガー・ラッシュ:オンライン』 ディズニー帝国の逆襲

    ディズニー帝国の権勢をまざまざと見せつけられた思いがした。 以前の記事に書いたように、前作『シュガー・ラッシュ』は、多元宇宙もののSFに通じる痛快作だった。ゲームセンターの各ゲーム機がそれぞれ一つの世界になっており、高層マンションの住民から邪険にされる格差社会の「フィックス・イット・フェリックス」や、怪物サイ・バグと激戦を繰り広げる「ヒーローズ・デューティ」の世界や、お菓子の国のレースゲーム「シュ...

  • 『宇宙戦艦ヤマト2199』 佐渡先生の大事な話

    『宇宙戦艦ヤマト2199』の第2話は、とても大事な回だった。 なのにブログで取り上げなかったのは、「云うまでもない」と思ったからだ。 私は反省しなければならない。 大事なことは、はっきり言葉にして伝えなければならないのだ。きっと判っているだろう、察しているに違いない、そんな期待や思い込みは、大事なことを埋もれさせ、誤りを定着させかねない。■30年以上かけた成果 『宇宙戦艦ヤマト2199』は『宇宙戦艦ヤマト』...

  • 『近松物語』を改めて受け止めよう

    【ネタバレ注意】 「午前十時の映画祭9」の作品解説に「溝口健二監督の代表作の一本」と書かれる『近松物語』(1954年)。公開当時のキネマ旬報ベストテンで第5位、キネマ旬報社の「映画人が選ぶオールタイムベスト100・日本映画編」(1999年)では第49位にランクインする名作だ。 そんな作品に私ごときが何か書くのは気が引けるのだが、作品の受け取り方は時代とともに変化しても良いと思うので、ここに取り上げる次第である。 ...

  • 『若おかみは小学生!』 ちゃんとした仕事

    【ネタバレ注意】 高坂希太郎監督の言葉にビビった。---この映画の要諦は「自分探し」という、自我が肥大化した挙句の迷妄期の話では無く、その先にある「滅私」或いは仏教の「人の形成は五蘊の関係性に依る」、マルクスの言う「上部構造は(人の意識)は下部構造(その時の社会)が創る」を如何に描くかにある。--- こんな難しいことを考えて映画を作っていたのか! 「五蘊」なんて意味が判らないどころか、読めない人もたく...

  • 『クワイエット・プレイス』 機内上映で観てはいけない

    【ネタバレ注意】 間違っても旅客機に乗ったときの機内上映などで観てはいけない。 周囲がざわついていたり、騒音がやまないようなところで鑑賞できる映画ではない。 それが『クワイエット・プレイス』(静かな場所)。静寂の中に身を置いて、息を殺して観る映画である。 悲鳴を上げてしまいそうな恐怖、声を漏らすほどの痛み――。静寂の中、それらの想いは観客にも伝わり、観ているほうまで叫び出しそうになる。 でも、駄目だ...

  • 『サイボーグ009』の秘密と「天使編/神々との闘い」の正体 【後編】

    (前回から読む)■石ノ森章太郎が明かしたこと 1960年代の後半、石ノ森章太郎氏はある作品に執着し、なんとしてでもその要素を自作に取り入れてみたかったのだと思う。 「神々との闘い編」の元ネタ、いやそれどころかブラック・ゴースト(黒い幽霊団)との戦いを終えて以降の『サイボーグ009』の方向性を決定づけたもの、それはおそらく日本SF史に名高い小松左京氏の名作『果しなき流れの果に』だ。 『S-Fマガジン』の1965年2月号か...

  • 『サイボーグ009』の秘密と「天使編/神々との闘い」の正体 【中編】

    (前回から読む)■『サイボーグ009』の完結編はどれ? 『サイボーグ009』は何度も完結しそこなっている。 新編集長が打ち出した頑迷な方針のため『週刊少年キング』の連載が打ち切られた後、石ノ森章太郎氏は「ミュートス・サイボーグ編」の単行本化に当たって20ページも加筆し、一応の結末を示した。 翌年、ラインナップを多様にするためSFを欲していた『週刊少年マガジン』[*1]に迎えられてはじまった「地下帝国ヨミ編」は、完...

  • 『サイボーグ009』の秘密と「天使編/神々との闘い」の正体 【前編】

    ある本に書かれた疑問が、別の疑問を呼び起こした。 その本とは、2018年に発行された『生誕80周年記念読本 完全解析! 石ノ森章太郎』。 2018年は、1938年1月25日に生まれ、1998年1月28日に没した、石ノ森章太郎氏の生誕80周年にして没後20周年である。そのため、石ノ森氏に関する本がいくつも発行されたり、氏の半生を描いたテレビドラマ『ヒーローを作った男 石ノ森章太郎物語』が放映されたりした。『サイボーグ009』を軸に...

  • 『SUNNY 強い気持ち・強い愛』と『サニー 永遠の仲間たち』、少し『タクシー運転手 約束は海を越えて』

    2018年公開の日本映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』は、韓国映画の傑作『サニー 永遠の仲間たち』を、『モテキ』『バクマン。』の大根仁監督がリメイクしたのだから鉄板だ。歌あり、ダンスあり、恋と喧嘩と友情あり。懐かしい1990年代のヒット曲に乗せて、ついホロリとさせられる、とても素敵な作品だ。 ストーリーは原作映画とほぼ同じである。主人公たち六人組の暮らす現代と、彼女らが回想する高校時代を並行してたどりなが...

  • 『インクレディブル・ファミリー』 世界は女で回ってる

    【ネタバレ注意】 2004年公開の『Mr.インクレディブル』は、スパイアクションの傑作だった。ジョン・バリーが音楽を手がけた頃の007シリーズ、その音楽にそっくりな曲に乗せて、アクションと秘密兵器をてんこ盛りにした映画だった。 ちょうど本家007シリーズの空白期間に公開されたこともあり(『007/ダイ・アナザー・デイ』を最後にピアース・ブロスナンがジェームズ・ボンド役のシリーズが終わり、ダニエル・クレイグが『007...

  • 『ブリグズビー・ベア』 僕たちの映画

    まったくもって他人事ではない。 多くの人が『ブリグズビー・ベア』を観て、深く共感したに違いない。 映画の紹介文を読むだけだと、ずいぶんエキセントリックな作品に思える。 ――赤ん坊の頃から25年、有害物質に覆われた地上を避けて、地下のシェルターで両親と三人きりの生活を続けてきたジェームスにとって、子供向けの教育特撮番組『ブリグズビー・ベア』が人生のすべてだった。毎週の新作を見るのはもちろん、過去の膨大...

  • 『バリー・シール/アメリカをはめた男』 主演は断然トム・クルーズ

    トム・クルーズが悪漢を演じるとは! 観客がそう驚くのを見越した配役なのであろう。トム・クルーズといえば、『ミッション:インポッシブル』シリーズのヒーローや、『ジャック・リーチャー』シリーズのヒーローや、『オブリビオン』や『オール・ユー・ニード・イズ・キル』等のヒーローや、とにかくヒーローやカッコイイ役を数多く演じてきた俳優だ。そのトムが麻薬まみれの(文字どおり頭から麻薬を被った)犯罪者に扮するのだ...

  • 『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』 万人に薦めたい

    その面白さに満足した上、万人に自信をもって薦められる映画は滅多にない。 だから、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』のような作品に出会うとたいへん嬉しい。 147分の長丁場にもかかわらず、本作は観客の目を釘付けにして離さない。 作り手たちは、主人公イーサン・ハントを次から次へと危機的状況へ突き落す。任務遂行中の思わぬ事故や、敵味方の計算外の行動、恐るべき奸計と巧妙な罠。まったくもって脱出...

  • 『しっぽの声』 成熟度を高めよう

    そのずっしりとした読後感に言葉もない。 それは、ここに人間の本質が――人の世の何たるかが、もっともきつい形でえぐり出されているからだ。 『しっぽの声』は、まるでマンガ『デビルマン』の後半部分や、平井和正氏の"人類ダメ小説"のように壮絶だ。しかも、それらの作品以上に悲しくおぞましく感じるのは、ここに描かれていることが、現代の日本の現実だからだ。 狭いところに糞尿まみれのまま閉じ込められ、極度の飢えから...

  • 『空飛ぶタイヤ』 三菱自動車 横浜タイヤ脱落母子死傷事故

    【ネタバレ注意】 『空飛ぶタイヤ』は、三菱自動車が起こした数々の事件・不祥事の中でも、とりわけ痛ましい出来事の一つ、2002年の横浜母子三人死傷事故を題材にした作品だ。 1992年から2004年のあいだに、タイヤハブ破損によって大型車のタイヤが脱落する事故が51件(脱落に至らなかったハブ破損事故を含めると57件)も発生したが、三菱自動車は整備不良と主張し続けていた。そんな中で、母子三人が死傷する悲劇が起きた。 本...

  • 『ワンダー 君は太陽』 “WONDER”は“ワンダー”としか訳せない

    『ワンダー 君は太陽』の予告編を見て、てっきり障碍のある少年の感動話だと思った私は浅はかだった。 邦題の付け方についても、原題『WONDER』をただ片仮名に置き変えて、ほっこりした副題を添えただけの安易な仕事だと思っていた。よりによって「太陽」だなんて、どれだけ明るく温かい子だと云いたいのだ。私はそんな風に思ってしまった。反省している。 『ワンダー 君は太陽』は、私なんかの予想を遥かに超える、スケールの...

  • 『万引き家族』 インビジブル ピープルを巡って

    【ネタバレ注意】 「血のつながりについて、社会について、正しさについて、10年くらい自分なりに考えて来たことを全部この作品に込めようと、そんな覚悟で臨んでいます。」 『万引き家族』の制作に当たって、是枝裕和監督は語った。 たしかに、『万引き家族』にはこれまで是枝監督が考えてきたこと、過去の作品で描いてきたことが詰め込まれ、同監督の集大成といえる。 本作が描くのは、小さな一軒家に同居する「祖母」「父...

  • 『犬ヶ島』の七人の侍

    【ネタバレ注意】 もともと犬の映画を作りたかったのだ、とウェス・アンダーソン監督は云う。 「ジェイソン・シュワルツマンとロマン・コッポラと僕は、当初ゴミ捨て場に捨てられた犬達を主人公に映画を作りたいと思っていた。だけど同時に日本を舞台にした映画を作りたいとも思っていたんだ。日本に関すること、日本映画への愛を示すような映画を作りたいとね。とりわけ、黒澤への愛を。この物語の舞台は、どこにすることもで...

  • 『スリー・ビルボード』 アメコミファンに捧ぐ

    Raped while dying (レイプされて殺された) And still no arrests? (まだ犯人は捕まらない?) How Come, Chief Willoughby? (どうして、ウィロビー署長?) しんどい映画だ。 娘をレイプされ殺された母の怒り。その母の怒りをぶつけられる警察官たちの怒り。警察官を失う妻の怒り。差別される小人や有色人種の怒り。『スリー・ビルボード(三つの看板)』は、怒らずにいられない出来事の連続だ。 その怒りは共感を伴う。怒りの...

  • 『ボックストロール』 かわいくない魅力

    こんな傑作が日本未公開だったとは! 『ボックストロール』のBlu-ray/DVDのカバーアートをご覧いただきたい。 少女の手を引いて逃げる少年。明らかに彼が主人公だが、ひねた感じの生意気そうな子供で、あんまり可愛らしくない。 手を引かれている少女も、つぶれたアンパンみたいな顔で、可愛いヒロインとはいいがたい。 少年少女と一緒に走っている奇怪な生き物たち――体を箱に入れた彼らがボックストロールなのだが――も、悪...

  • 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』 インフィニティ・ストーンのおさらいをしよう

    面白かった! マーベル・シネマティック・ユニバース最大のスケール、最大の賑やかさ。これまでのマーベル・シネマティック・ユニバース18作品は、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』にたどり着くためにあったのだ。 シリーズ史上最多のスーパーヒーローが集結し、これまでチラリと映ったり、言及されるだけだった最大最強の敵サノスと対峙する。これぞ大興奮の一作だ。 マーベル・シネマティック・ユニバース作品の...

  • 『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ ~拉麺大乱~』 僕たちの正義

    【ネタバレ注意】 これだから『クレヨンしんちゃん』は侮れない。 あの傑作『映画クレヨンしんちゃん バカうまっ! B級グルメサバイバル!!』の脚本を浦沢義雄氏と共同で担当したうえのきみこ氏が、再びしんのすけたち「かすかべ防衛隊」の活躍を描いたのが『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ ~拉麺大乱(らーめんたいらん)~』だ。 映画は、『包丁人味平』のカレー戦争編のブラックカレーをブラックパンダラ...

  • 『レディ・プレイヤー1』 こいつはご機嫌だ!

    【ネタバレ注意】 夢のようだ。ガンダムを、メカゴジラを、アイアン・ジャイアントを、スティーヴン・スピルバーグが映画にしたのだ。ガンダムの実写映画化が、よもやこんな形で実現しようとは思わなかった。 とりわけ、『スター・ウォーズ』の大ブームとライトサーベル(ライトセーバー)の人気を受けて、ビームサーベルを携えた機動戦士ガンダムが登場した歴史を見てきた身としては、そのガンダムがジョージ・ルーカスの盟友ス...

  • 『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』 一刻も早く観よう!

    「この物語には、現代との共通点が、とても多いと考えた。だから、すぐに作って公開したかったんだ。作った年に、公開したかったのさ。」[*1] 「脚本を読んだのは2017年2月で、すごい迫力で迫ってきました。報道機関が直面している壊滅的な攻撃を思い起こさせ、撮影中だった一つの作品に関する仕事以外はスケジュールを空けて、この映画を撮ることにしました。17年中に完成させるという目標に向かってみながまとまり、自分の作...

  • 『ブラックパンサー』 持てる者の義務

    【ネタバレ注意】 「危機にあって、賢者は橋を架け、愚者は壁を作る。」 (In times of crisis, the wise build bridges, while the foolish build barriers.) マーベル・シネマティック・ユニバースの18作目『ブラックパンサー』は、史上最高のスーパーヒーロー映画と呼ばれるだけあって、前代未聞の傑作だ。 マーベル・シネマティック・ユニバースの他の作品との絡みは抑え気味で、予備知識なしでも楽しめる。波瀾万丈のス...

  • 日本映画部門への投票 日本インターネット映画大賞 2017年度

    微力ながら、日本インターネット映画大賞への投票を通じて幾つかの作品を応援できればと思う。 優れた作品、面白い作品はたくさんあるが、応援したい気持ちの強さは、必ずしも優秀さ面白さと一致するわけではない。だから、もっと優れた作品があるのに、と思われることは百も承知だ。それどころか、ヒット作やすでに高評価を得ている作品に比べると、そうでない作品にはより一層応援したいバイアスがかかることをご承知いただき...

  • 外国映画部門への投票 日本インターネット映画大賞 2017年度…もしも投票したなら

    ここ数年、日本インターネット映画大賞への投票を通じて幾つかの作品を応援してきた。 ところが、たいへん残念なことに、日本インターネット映画大賞の運営体制を考慮すると日本映画部門と外国映画部門の二部門開催は困難との判断から、2017年度は日本映画部門を中心に統廃合されるとのことである。 そのため、今回は外国映画部門への投票ができないが、もしも投票したなら……と想定して、作品を挙げてみた。 優れた作品、面白...

  • 『キングスマン:ゴールデン・サークル』 アメリカなんて大嫌い!?

    【ネタバレ注意】 『キック・アス』、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』、『キングスマン』と傑作を連発してきたマシュー・ヴォーン監督だが、続編のメガホンをみずから取るのははじめてのことだ。 しかし、さすがはヴォーン監督。傑作の続編『キングスマン:ゴールデン・サークル』は、またも傑作だった。■「ゴールデン・サークル」とは? 気になったのは副題の「ゴールデン・サークル」だ。原題は『Kingsman: The Gol...

  • 『宇宙からのメッセージ』 面白さの秘密

    【ネタバレ注意】 どうしてこんなに面白いんだろう! 昔は好きだった作品なのに、今ではショボく感じてしまうことがしばしばある。だが、久しぶりに観た『宇宙からのメッセージ』は、はじめて観たときのままに――否、記憶していたものよりはるかに面白く、それどころか昔観たときは判らなかった良さを痛感して、これまで以上に感動した。日本映画界はこんなにも素晴らしい作品を生んでいたのだ。■誰が誰のフォロワーなのか 『...

  • 『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』を応援します

    【ネタバレ注意】 どこから褒めればいいだろう。 『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』は、そう悩んでしまうほど素晴らしい。■驚異の映像 まず目をみはるのが映像の美しさと迫力だ。制作会社ライカの過去の作品、『コララインとボタンの魔女 3D』や『パラノーマン ブライス・ホローの謎』も素晴らしかったが、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』はそれらさえ凌駕する。 その魅力の源が、ストップモーション・アニメーションにあるこ...

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