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  • 微熱 - 104 -

    啓史さんの家は東側にいちばん古い母屋があって、真ん中に増改築した部屋と二階がある。そこから渡り廊下でつないで西側に啓史さんのお祖父さんが使う予定だった部屋を増築していた。けど、息子夫婦と折り合いが悪かったお祖父さんは別の土地に家を建てて住むようになり、それが俺が使っている家なわけだけど、この西側の部屋には、当時、住みこみで働いてくれていた家政婦さん親子が住んでいた。いまは泊りのお客さんがあるとき...

  • 微熱 - 103 -

    松本さんの視線を追うようにうしろを振り返ろうとすると、けど、そうする前にだれかに後ろから包まれた。ぐっと圧し掛かってくる重みにからだが一瞬だけ強ばる。けど、鼻腔をつく芳ばしい香りにその腕が誰のものか、俺よりもからだがわかって悦びにふるえた。「……たか……みさん?」 声が上擦る。胸の前で組まれた逞しい腕に両手を添えてその温もりを確かめる。会うのが怖くて、けど、ずっと会いたくて。「おかえり」 聞きたかっ...

  • 微熱 - 102 -

    松本さんはそれから俺を捜すことになった経緯を話してくれた。 俺は中学の卒業式が終わるとすぐにまとめておいた荷物を持って施設を出た。そのままファストフード店へ行ってバイトの時間まで過ごし、時間になると前もって探しておいたバイト先に行った。バイト先では偽名を使い、仕事が明けるとまたファストフード店に行って居眠りしながら何時間も居座り、天気のいい昼間は公園で寝て、またコンビニに行く生活をはじめた。お風...

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月下香 〜男たちのものがたり〜
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