年輪
遺体処置業務で、ある家に訪問した。一般的な先入観を持って行くと悲しみに包まれているはずの家だった。しかし、その家は違った。無邪気な子供達が、場もわきまえずに走り回ったりして大騒ぎ。大人達は、久し振りに会った人達とのお喋りに夢中になり、誰も子供達を制止する人はいない。葬式につきものの辛気臭い雰囲気はどこにもなかった。ま、その方が仕事をしやすい。故人は年配の男性。どことなく笑っているような、安らかな死顔だった。一人の孫と故人の奥さんが遺体の傍についていた。小学校高学年くらいのその孫が奥さん(祖母)に色々と質問をしていた。そのやりとりを、私は作業をしながら黙って聞いていた。Q:「死ぬ時は苦しいの?」A:「苦しくないよ」「お祖父ちゃんだって笑ってるでしょ」Q:「死んだらどうなるの?」A:「みんな好きな場所に行くん...年輪
2024/09/23 03:57