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  • 恋愛ブログ引っ越します

    久しぶりに短編小説を書こうと思ったらまさかのgooが終了するという事で、はてなブログに引っ越しをしようと思ってます。使いやすかったのでとても残念です。友達から紹介されてこのブログをはじめて、何年たったかな。高校の非常勤講師していた時からなので、かれこれ20年ほどたって、いろんな物語が出来て嬉しく思ってます。実話が多いけど(笑)恋愛ブログ当時はあんまり聞かないタイトルで、出会い系サイトとかもなくて、当時恋ばかりしていた物語を書こうと思いチャレンジした次第でした。ワープロで物語を書いていたけど、インターネットが普及し始めて、世界中が見れるようになり、今では、チャットで質問したら、答えてくれる機能まである時代になりました。短編小説もITに書かせる時代になってきたのかもしれないですが、自分の世界観を大切にしてまた...恋愛ブログ引っ越します

  • 5.観音様

    毎日毎日、残業である。14連勤は当たり前、過労死寸前で、疲れていても眠れない。上司からは罵られ、殺したくなる。不眠症になってどれくらいたっただろうか。1年、いやこの会社に入ってからだから3年くらいだろうか。鏡を見ると死んだ親父にそっくりで、頬はこけて、目の下にくまが死相の様に出来ている。フラフラと会社を後にして、帰る。深夜1時、この時間だと電車もバスもないだろう。家まで、二駅なので、歩いて帰れないこともない。疲れて、目もかすんでいる。このまま近くのビルの屋上から、飛び降りてもいいかもなと思って歩いていると、見慣れない看板が立っている。「よく眠れる場所あります。ここから100メートル先」と書いてあって、矢印が山の奥の方をさしていた。寝ていなく、この辺にホテルでも出来たのか。家まで歩けそうもないなと思い、矢印...5.観音様

  • 4.踊るサンタ

    ジングルベルの音が聞こえてくる12月24日クリスマスイブ。2階の部屋にいるケンタが枕元に靴下を置いて、寝る準備を始めた。窓からは、ヒンヤリとした空気があり、雪がフワフワと降っていた。1階では、サンタに扮した父親がプレゼントを押し入れから出して、椅子の上に置いて準備をしている。夜中を0時回った頃、もうそろそろ寝ただろうと思い2階の部屋のドアを少し開けると布団にくるまっているケンタの姿が見えた。「よし。今がチャンス!」とゆっくりと足音を立てずに枕元にプレゼントを置く。その時、ケンタの目がパッとあき、がばっと起き上がった。やばいと思い、急いで窓から出た。窓のサッシにサンタの袖が引っかかって、ぶら下がった状態になった。どうやらトイレに起きたようだった。ベランダに飛び移り何とかバランスを保った。トイレから帰って来た...4.踊るサンタ

  • 3.夏休み

    入道雲がもくもくとソフトクリームみたいに上がっていた。家の近くに小学校の運動場がある。渡り廊下を抜けて、石段の階段があり、木々が生い茂っている所で、蝉を取っていた。周りは木のおかげで日陰になり、1度ほど涼しく感じた。運動場では、ソフトボール大会の練習があっている。ケンボーが木にとまっている蝉を見つけると、網でゆっくりとかぶせようとしたがおしっこをかけられて、逃げられた。田中は虫捕りカゴを用意して、すぐ捕まえた蝉を入れるようにしていた。ケンボーが「きたっねー。」と言って、服の袖で顔を拭っている。「蝉捕まらねー。」飽き飽きしている田中が地面に寝そべった。「蝉取り止めて、お化けが出るっていう家見に行かないか?」ケンボーが木陰になっている所で問いかけて来た。「面白そうだな。」と田中が言った。横に倒していた自電車に...3.夏休み

  • 2.蓮の花

    子育てに悩み、あてもなくブラブラと子供3歳と5歳を連れて、歩いていた。古びたバス停があり、子供は椅子に座らせた。裏に溜め池があり、蓮の花が所々に咲いている。私はガードレールから蓮の花を見ていた。ふとバス停の中を見ると、おばぁさんがいつの間にかいて、子供に「あんた何歳ね?」と話しかけて、飴を渡していた。子供は私の顔を見て、もらっていいの?みたいな顔をして、私はおばぁさんにお辞儀をした。子供が3歳と5歳と手を広げて、答えていた。「こんな田舎まで、どうしなさったね?どっか行くのかね?」と聞いてきた。子育てと夏の暑さに疲れて、話すら出来そうにない。俯いていると、「まぁ色々あるさね。お母さんも頑張っとるみたいやね。飴ば食べんね。」と言って、しわくちゃの手から、塩飴を渡した。私は、受け取ると涙が溢れて出て来た。それか...2.蓮の花

  • 1.祭囃子

    君に会えるのは、一年に一度の祭りの日。屋台が並び、焦げた香りが周りを包んでいる。中にある神社の鳥居前での待ち合わせ。君は先に来て、立っていた。髪は長くて、白色と水色の模様が入った浴衣を着ている。どこからか祭囃子の音色が聞こえてくると、君はそれに合わせるかのように鼻歌を歌った。屋台の前を一緒に通り、綿あめを買ってあげると喜んだ。山を少し登ったところにお参りするところがある。君は、手を合わせると、鈴を一回鳴らした。私は、美しい君の姿に見とれていた。人気がない所に進むと、君は笑って、すっといなくなってしまった。時間切れのようだった。最初のデートで行くはずだった祭り。病気で死んだ君は、毎年祭りの日に、鳥居の前にたたずんでいる。今年も会えて本当によかった。また来年も来るから。私が祭りに来る事で、供養になるかどうかは...1.祭囃子

  • 20.可惜夜 ~あたらよ~

    居酒屋で友人たちとちょっとした集まりがあり、話していると、カウンターにいた先輩が「ちょっと店が忙しいので、駅に妹を迎えに行ってくれないか?」とバイクの鍵を渡した。集団はあまり好きではない。その事を察してくれたのか、先輩が気を利かせてくれたのかもしれなかった。ドアを開けると、葦簀の間から南風が吹き込んできた。外に止めてあったバイクに乗り込む。二人乗りでヘルメットも2個ついていた。妹は確か17歳くらいだったか。小学生の時は、先輩の後ろを金魚の糞みたいにくっついていて、一緒によく遊んだりもしていたが、大分久しぶりにあうが、顔は分かるのか不安だった。バイクで駅に着く。サラリーマンや学生が階段を下りてくる。その中に、目立っている制服姿の妹がいた。髪は金髪に染めて、ブレザーの制服は、だらしなく着ていた。小学生の時の純...20.可惜夜~あたらよ~

  • 19.走馬灯

    40年ぶりの同窓会の帰り、タクシーで急に胸が痛くなり、意識が朦朧としている中で、救急病棟についた。木漏れ日の中、教室の窓から差し込む南風が心地よい。白いカーテンが揺れている。黒板に何かを書いている先生。隣には、レミがいた。ポニーティールに髪を結び、一生懸命先生の言っている事をノートに書いている。そういえば、レミはこんな感じで、いつも横顔ばかり見ていた。ちらっと私の方を見たが、目をそらした。そういえば、同窓会には来ていなかったなとぼんやりとしていると、レミが「赤ペン貸して。」と言った。渡すと、「ありがとう。」と言って、またノートに書き始めた。書き終わると、私の手に♡を落書きしてからかったように笑った。笑った顔も好きだった。あの時は、先輩と付き合っていたような話を聞いたことがあって、落ち込む日も多かった。先生から、...19.走馬灯

  • 18.おばあちゃんと孫

    大好きなおばあちゃんは、私が20歳の成人式を見ることなく亡くなった。地方の大学に合格して、おばあちゃんの家から近いという事で、1人暮らしのおばあちゃん家から通うようになった。おばあちゃんは、快く迎えてくれた。一軒家で、広々とした畳の部屋があり、仏壇が置かれてある。家に入ると、ツンとしたお香の香りが漂っている。おばあちゃんの匂いだ。大学で嫌なことがあったり、アルバイト先のコンビニで嫌なことがあったりすると、「そうか。そうか。」と聞いて、慰めてくれた。夜遅く、アルバイト先のコンビニでおでんを買って帰ると、「おいしい。」と言って喜んで食べてくれた。笑う時のくしゃとなる皺が好きだった。そんな時、成人式の振袖を選んでいるときに父親から電話があり、おばあちゃんが癌で入院すると聞いた。ショックで、着物どころではなくなった。す...18.おばあちゃんと孫

  • 17.クリスマスの幽霊

    リビングに長いテーブルが真ん中にあり、クリスマスケーキが置いてある。妻がキッチンの方にいて、ゆうたが隣に座っている。私は、向かいに座って見ていた。ケーキの隣には、さっき食べたチキンの残骸が残っている。私がケーキの上にろうそくを立てて、火を点けた。それを見た妻が電気を消して、ゆうたが、息を吹きかける。ろうそくの火が全部消えた。「メリークリスマス。」と言うと、妻が部屋の奥からプレゼントを持ってきて、ゆうたに渡している。ゆうたは満面の笑顔だった。今年も昨年と同じように幸せな時間になるはずだった。昨年、妻とゆうたは、買い物帰りの横断歩道で、車に引かれて亡くなった。80歳のじじいに殺された。車が勝手に暴走し、車の免許を返納する予定だと言っていたが、その時はすでに遅かった。ひかれた妻とゆうたが浮かばれない。ただ、買い物に行...17.クリスマスの幽霊

  • 16.定食屋

    コロナが少し治まり始め、うちの店もやっとお客が戻りつつある。国の助成金を申請しているが、なかなか下りない。政治家たちは、何もしなくても、一日百万円の臨時交通費などが支払われていて、ムカついていた。暖簾をくぐり、作業着をきているごつい男の人がスキンヘッドにタオルを鉢巻をして、店に入ってきた。「いらっしゃいませ。一名様ですね。」「兄ちゃん、定食いっちょうね。」とカウンターに座り、頼んだ。「了解しました。」兄ちゃんが奥に言って、親父さんに伝えた。吊ってあるテレビからはニュースが流れている。「民間人の社長が宇宙に到着いたしました。宇宙からお金を配るそうです。」それを見たスキンヘッドの男の人がつぶやいた。「全く。こっちは休まず働いてるのに、いい気なもんだよな。俺から言わせたら、金持ちの道楽だよ。」店にいたサラリーマン風の...16.定食屋

  • 15.文化祭

    放課後の学校は、生徒がいるにもかかわらず、なぜか薄っすらとしている。夕暮れ時で、野球部の「さーこーい。」という掛け声が時折、運動場から聞こえてくる。もうすぐ文化祭で、居残りで準備をしていた。出し物はよく分からないばぁさんが毒リンゴを持って、狼を退治するような喜劇のようだった。段ボールで、木を作ったり、葉っぱを形どったものがざっくばらんに散らばっていた。隣の男子は、段ボールを刀に見立てて、切り合ってふざけあっている。それを見かねた学級委員長のヨシコが「文化祭に間に合わないから、ふざけないで、手伝ってよ。」と促している。リュウは、ひたすら段ボールの色を塗っている。隣で組み立ててるアスカもテキパキと動いていた。もう日が落ちている。ふざけていた男子、モリオとシンヤが、何を思ったのか、理科室まで、肝試しに行かないかと提案...15.文化祭

  • 14.粉雪

    雪が今にも降りそうな夜、「子どもが幼稚園の教室に入らなくて困ってるのよ。」母親が心配して父親に話している。「そうだな。せいやは人見知りで、友達がいないのが心配だな。明日朝、俺が幼稚園に送りに行って様子見てくるよ。」次の日の朝、せいやがいきたくなさそうな顔をして、俯き、靴箱の前に座っている。何とか手をつなぎ「真っ赤なお鼻のトナカイさんは~」と歌を歌いながら、幼稚園に向かう。先生に挨拶をして、帰る振りをして、一時見守っていた。教室になかなか入ろうとしない。周りの子どもは、元気に走り回り、教室に入っていた。せいやは、砂場に座って、一人で山を作り始めた。粉雪がちらつき始めて、風邪をひかないか心配だ。俯いて黙って、砂場から動こうとしない。誰か話しかけたりしないかなと思っていると、赤い帽子を被った女の子がそばに寄ってきた。...14.粉雪

  • 13.金木犀の香り

    朝8時にパンパンパンと澄んだ空からピストルの音が聞こえてきた。今日は、運動会。赤色の鉢巻きをはめ、体操服を着て、学校に向かう。ひんやりとした秋風が学校の通り道にある枯れ木を揺らし落としていた。走るのが苦手な僕は、この日は気が重かった。運動場に着くと、全校生徒集まってて、校長の挨拶があり、ファンファーレが響き渡って始まった。その後、玉入れ競争や、応援団の演目があって、次に僕が出る教室対抗リレーだ。体が大きいという事だけで、クラス全員一致で、アンカーで走る事が決まった。白線の後ろに横一列に並んだ。待っていると、白団と青団の後に赤団だった。5人中3位だ。手と足をほぐしながら、バトンを取るイメージトレーニングをしながら周りを見ると、時間が止まっているかのような感覚になった。人文字で応援している生徒たちがいて、応援団長が...13.金木犀の香り

  • 12.お母さん

    都会から、久しぶりに故郷に帰って来たのはいいが、母の様子がおかしかった。家の鍵を閉めたかどうかを何度も聞くし、鍵の場所も何度も探している。父は、物心ついた時にはいなかった。私が小さいころ愛人と逃げたようだった。母には父親の事を色々聞きたかったが、知らぬふりをしていた。母一人で、私を育ててくれたのはよかったが、子供の頃から迷惑ばかりかける娘だった。暴走族の総長と仲良くなり、バイクに乗り、レディースみたいな事をしていたし、毎回、交番にお世話になって、その時スナックで働いていた母が、ドレスのような派手な格好をして頭を下げていた。家に帰ると、殺風景な畳四畳半のアパートで、貧乏のどん底みたいで、大変だった。世の中の不平不満みたいな物がたくさんあった。だけど、母の生きることへの懸命さは、よくわかっていたつもりだ。「お母さん...12.お母さん

  • 11.ラーメン屋

    ラーメン屋の店内は、天井や壁紙は油で色あせ、無造作に置かれたストーブは、壊れてるのか、ウィンウィンと変な音が鳴っている。真ん中に汗まみれの店主が競馬新聞を広げて座って、貧乏ゆすりをしていた。親父と入ると、「いらっしゃいませ。」としわがれた声で競馬新聞をたたんで、横に置いた。古びたカウンターがあり、席に着くと、壁に貼られている油がついたメニュー表が一枚ずつ目につく。印刷してある字なのか、自分で書いてある字なのか薄くなってて、見づらい。左からラーメン、チャーハン、ビールとおにぎりと見ていくと、トイレの隣には本棚があり、こち亀が一巻から十三巻くらいまであり、あとは飛び飛びの巻があった。その中には北斗の拳や隣の凡人組などのコアな漫画本が並べられている。親父と横に並んで、いつものラーメンとチャーハンを頼んだ。店主がラーメ...11.ラーメン屋

  • 10.相合傘

    学校がやっと終わり、帰ろうと思って、玄関に立って大粒の雨を見ていた。目の前には、紫陽花が咲いていて、綺麗だなと見とれていると隣にクラス一の美女が佇んでいた。私は、密かに片思いをしていた。水色の制服は、他の女子が着ているとダサく見えるが、彼女が着ていると、まさに校庭に咲く一輪の紫陽花の様だった。彼女が大きな目を丸くして、空から降っている大粒の雨を見て、「傘がないと帰れないなー。」と呟いていた。ちょっとしかめたような顔をしたが、映画のワンシーンのようなカメラが遠くから撮っているような感じがした。私も隣で、「これじゃ帰れないよなー。」と呟いてみた。そういうと「君もなんだ。」と話しかけてきた。君っていう言い方にドギマギした。「伊藤さんもなの?」「そうなんだ。雨やむといいね。」会話が途切れた。もっと話したいと思うが言葉が...10.相合傘

  • 9.蛍

    営業の仕事の帰り、電車を待っていると、一匹の蛍がやってきた。近くにいた少年が、「あっ蛍だ!」と叫んで、捕まえようとしている。白線を飛び越えようとしたら、隣にいた母親が「危ないからやめとき。」と少年の腕を捕まえていた。周りも暗くなり、蛍の光が余計に輝いている。私は、一時蛍の姿を追いかけるように見ていた。そー言えば、子供の頃は、田舎に住んでいる事もあって、蛍がたくさんいた。おかっぱ頭のちえちゃんは、元気だろうか。ちえちゃんは、近所に住んでいる女の子で、よく蛍を手で捕まえて、私に見せて笑っていた。私の方が「気持ち悪い。」と言って、拒否していた。ちえちゃんは、ある時、父親が転勤の為に転校していった。転校していく夜、寂しくなると私が呟くと、ちえちゃんも涙を浮かべていた。土手から見える蛍の光が一匹から数百匹に増えて、ちえち...9.蛍

  • 8.お風呂屋さん ⑤

    傾き剥げた駐車場の看板が取り外された。昨年の大きな台風が二回きて、お風呂屋の屋根が半分飛ばされて、穴がぽっかりと開いている。上を見ると、大きな穴から空が見えてる。夜は星が見えて、望遠鏡でもあったらなと、神秘的な感じもするが、雨の日は、最悪で、滝のように風呂の方へと雨が流れ込んでくる。雨をモップで奥にやるのが来てからの仕事である。それから、フロントに立っていると、券売機の横に「今月いっぱいで閉店します。ご利用の皆様長い間ありがとうございました。」という説明が長々としてある。いよいよもって、お風呂も潰れたかとため息が漏れた。約5年くらいお世話になっただろうか。仕事を探している時に、知り合いの人に呼ばれたのはいいが、貧乏な会社で、大変だった。自動ドアも壊れたら、そのままで、真冬の雪が降る寒い時なんかは開けっ放しで、フ...8.お風呂屋さん⑤

  • 7.家出したトナカイ

    毎年毎年なんで、クリスマスイブに、働かなければならないんだ。しかも一年に一回って、どれだけブラック企業なんだ。年々太っている髭面のサンタを乗せて、引っ張って行かなくちゃならない。いつも首がもげそうである。しかもエサが段々経費ケチって、その辺の草になっている。もうこうなりゃ、ボイコットしてやる。12月23日サンタが寝始めたころ、トナカイは、荷物をまとめて、机の上に【お世話になりました。トナカイ】と手紙を添えて出ていくことにした。雪の中をゆっくりと歩いていく。夜空を見ると月が浮かんでいて、周りが明るい。森の中を、一時歩いていくと、小さな池があり、一口飲んだ。「おいしい水だな。」こんなにゆっくりと水を飲んだのは初めてだ。いつも、サンタに急かされ、鞭を打たれ、急いで子供たちにプレゼントを配らなければならない。水なんてほ...7.家出したトナカイ

  • 6.祭りのあと

    花火の賑やかさも落ち着き、屋台の人たちも暖簾を下ろしたり、後片付けをしている。生暖かい風が吹いて、祭りのあとって、いつも切なくなってしまう。ヨウコを探していると、サトルを見失ってしまった。それにしても人が多すぎである。駅の方に歩いていると、浴衣を着ている女の子二人いた。一人は、祭と書いてある団扇を帯にさしている。後姿がヨウコに似ている。走って前に見に行く。「おー。ヨウコじゃん。今日来てたんだ。」「ヨシオ君も来てたんだ。さっきサトル君が探してたけど。」「そうそう。さっきそこであったんだけど、またはぐれちゃった。」「二人らしい。」ヨウコが笑った。笑うと通りすぎている男達が見ていた。一時沈黙した後、「ヨウコ二人っきりで、ちょっと話さないか?」「別にいいけど。」その姿を察した女友達が、「じゃーここで、またね。」と言って...6.祭りのあと

  • 5.祭り会場

    祭り会場に着いたのはいいが、人が多くて、ヨシオと途中ではぐれてしまった。先にヨウコを探しているのかもしれない。【ここから先祭り会場入り口】という看板を通り、中に入ると、当たりくじや焼きそばなど屋台がずらっと並んでいて、プーンとたこ焼きのソースの焦げた匂いがしてきた。ドーンドーンと海に近い奥の方で、花火が上がっている。真下で見る花火は、迫力があり、綺麗だった。ボーと夜空に咲く花火を見ていると、「あれっ?サトル君じゃない?」と後ろで声がして、振り返ると、花火の刺繍がしてある青い浴衣を着たヨウコだった。髪はツインテールで結んでいる。その姿は、今上がっている花火よりも美しすぎて、唾を飲み込んだ。プールで話していた事を思い出して、ドギマギした。「今来たの?もう花火終わりそうだよ。」ヨウコがふと、上っている花火を見た。大き...5.祭り会場

  • 4.プールサイド

    ヨシオとサトルは、夏休みという事もあり、市民プールに来ていた。太陽がメラメラと照らす炎天下の中、子供用プールを出たヨシオが「隣に行こうぜ!!」と言って、プールサイドを小走りに走り出した。子供用のプールは、小さいので、飛び込むときすぐ足がついて面白くなかった。隣に行く時、タイルが熱くなってて、二人とも「アチッアチッ。」と言っている。先に大人用のプールにヨシオが飛び込むと気持ちよさそうに、泳ぎはじめた。サトルも、静かにプールに入ると、深くて、足がつかなくて、広々して気持ちよく感じた。一時、水のかけあいで遊んでいると、プールの監視員が笛を吹きながらやってきて、「おい、君たち子供は隣!!」と促した。「ちぇっ!!少しぐらいいいじゃん。」と二人で舌打ちすると、若い監視員がまた、笛を吹いた。仕方なく子供用のプールで泳いでいる...4.プールサイド

  • 3.フランス人形

    私が子供の頃、叔母ちゃん家に泊りに行くことになった。2階建ての大きな家に一人で住んでいた叔母は、快く迎えてくれた。玄関先には、吹き抜けがあり、入り口の所にフランス人形が50体くらいあった。金色の髪、青い大きな目、ドレスを着た人形が、ずらっと並んでいる。一度も結婚することもなく、一人暮らしが長い叔母は、子供もいなくて、その寂しさをフランス人形で補っているようだった。私が「どうして人形集めるの?」と聞くと、「全部、私の子供たちだから。」と叔母は、勝ち誇った顔をしていた。私からすると、青い目の人形は、今にも動き出しそうで怖かった。見ていると、目が動いた感じがした。その夜、お風呂のシャワーを浴びていると、お風呂ドアをトントンと小さな音が聞こえてきた。振り返ると、ドアの所に小さな影があった。びっくりして、体が固まった。フ...3.フランス人形

  • 2.河童の川

    子供の頃、真夏の暑い日、山奥のばぁちゃん家の帰りに父と歩いていると大きな水溜まりというか、川みたいな所がある。それを見た父が呟くように言った。「今日は河童はいないなー。」私は不思議に思って聞き返した。「この川に河童いるの?」「昔、よくここで泳いでいたら足を引っ張られて、水の中に河童が二匹いた。」私は本当にいるのかどうか、上から水の中を覗き込んだが、薄汚い水は見えなかった。それから、脳内出血で父が倒れて手術している間、私は、病院の控室で、河童の夢を見ていた。私はあの川の中、濁った汚い水の中にいた。頭に皿を乗せた河童が、父を水の中に引きずり込もうとしている。私は無我夢中で阻止しているが中々うまくいかない。父は、近くにあった石でおもいっきり、河童の皿を殴った。河童は「キュィン!!」と声を出し、痛いような顔をして沈んで...2.河童の川

  • 1.天狗の落とし物

    子供の頃、一度だけ天狗を見たことがある。真夏の暑い日、山の中のじいちゃん家に泊っていた時、夜中の3時頃、無性におしっこがしたくなって、便所が家の外にあった。小屋みたいな所にあって、五右衛門風呂も隣にある。家から出て、便所がある小屋まで、子供の足で歩くと結構な距離である。やっとついて、眠い目を擦り、おしっこを済ませ、月の光が明るかったので、じいちゃん家の屋根上を見上げると、丸い月を背に赤い天狗が私の方をジロッと、睨むように見ていた。私はびっくりして、尻もちをついた。「じいちゃん屋根に誰かおる!!」と叫ぶと、じいちゃんが慌てて、木刀を持って出てきた。じいちゃんの姿を見ると、天狗はフワッと飛び跳ねて、山の中へと消えていった。それから、一時探していたけど、誰もいなくて、玄関の前には、下駄の所に大きな羽団扇が落ちていた。...1.天狗の落とし物

  • 20.お風呂屋さん ④

    今日も、お風呂のフロントに立っていると、おかしな客が入ってきた。券売機の前に立ってて、ずっと指と券売機を見ている。女の人で、歳は40代後半だろうか。黒い長い髪、鼻の所に大きなほくろがある。物まねタレントのコロッケが真似をするちあきなおみに少し似ている。30分~1時間たっても、券売機の前から動こうとしない。何をそんなに悩んでいるのだろうか。「ここのボタン押すんですよね。」女の人が髪をかき上げて聞く。「はい、そこのボタンです。」私が答えると、何回かおじぎをして、「ここですよね。」「はい。」そのやり取りを数十回して、やっと券を買って、フロントに出そうとするが、手を引っ込める。私が券を取ろうとすると引っ込めるので、どうしたものか。小銭をおく入れ物を目の間に置くと、「ここに置くんですよね。」と聞く。やれやれ。どうしろとい...20.お風呂屋さん④

  • 19.お風呂屋さん ③

    私が温泉施設のフロントに立っていると色々なお客さんが通っていく。二階に行く階段があるのだけど、初めての若い大男のお客さんで、お金を財布に入れようとして、下ばかり見ていて、階段の角で、思いっきり頭をぶつけた。ドォォォンっという音が温泉施設中に響いたので、それは痛かっただろうと思ったが、そのまま暖簾をくぐったところで、早足で、フロントに戻って来て、「ワオッ血が流れてきた。」と頭から血が滝のように噴き出していた。血だらけになるフロント。何事かと思ったが、近くにあったタオルで押さえるように言った。「大丈夫ですか?。」「おしピンが頭蓋骨に刺さって、抜いたら血が噴き出した。」確かに、頭上注意のポスターをおしピンで貼ってあったが、そのおしピンが、頭を打った勢いで、頭蓋骨に刺さって、抜いたら血が噴き出した様子だった。「大丈夫。...19.お風呂屋さん③

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