孤独に育った黒髪の令嬢・セレナ。 彼女の前に現れたのは、どこか陰のある美しき若き公爵。 触れ合うことで癒され、惹かれ合い、やがて甘く深く愛されていくーー。 中世ファンタジー×濃密ロマンス、R18表現あり。
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夜の帳が屋敷を静かに包み始めるころ、セレナは自室の椅子に腰掛け、胸の前で静かに手を重ねていた。扉の向こうから聞こえる足音を、心の奥ではずっと待っていた。(……もうすぐ、来てくれるかな)レオンが訪れる夜が重なるたび、セレナの胸はふわりと温かく...
午後のやわらかな陽光が回廊を包む頃、セレナは小さな包みを手にそっと歩を進め、レオンの執務室を訪れた。扉を叩くと、すぐに返ってきたのは低く穏やかな声――「どうぞ」。中ではレオンが机に向かい書類を読んでいたが、セレナの姿を見て顔を上げると、筆を...
生まれは、皇都の北。静かな森に囲まれた、小さな子爵家だった。――リナは、そこで姉として、そして令嬢として育った。決して贅沢な暮らしではなかったけれど、両親はいつも誇りを持ち、私と妹を大切に育ててくれた。私は長女として、「しっかりしなければ」...
セレナは、公爵様へのその気持ちの正体がまだ分からずにいた。ただ、静かに日々を重ねていく。ベルと一緒に屋敷を歩き回ったり、リナと庭で穏やかな日差しのもと日向ぼっこをしたり。夜になると、いつものようにレオンが部屋を訪れ、優しく手を握ってくれる―...
やわらかな光が差し込む部屋で、セレナはふと目を覚ました。窓の外では、すでに陽が高く昇っていて――(もう、お昼近く?)そっと体を起こし、あらかじめ準備されていた洗面道具を使って、軽く身支度を整える。その時、ノックの音がして、リナが朝食を載せた...
月明かりが、そっと窓辺を照らしている。レオンは深く椅子に腰掛けると、襟元に手をやった。夜風が喉元をなぞり、ようやく落ち着いた気がする。あの短い時間――セレナの手に触れたあの瞬間が、今も脳裏から離れなかった。「……まさか、あれほどとはな」長ら...
静かな時が流れるなか、その空白さえも心地よく感じていた、まさにそのとき――「夕食まではまだ少し時間があるのでもう少し、くつろいでいてください。お茶を持ってこさせますね」そう言って、レオンが椅子から静かに立ち上がろうとする。その背を見たセレナ...
セレナは、ふかふかの絨毯に包まれた椅子にそっと腰を下ろしていた。初めて袖を通した柔らかなドレスの感触。ほんのりと香る香油の匂い。さっきまでの出来事が、まるで夢だったかのように、頭の中で何度も繰り返されていた。(……私が、こんな部屋で。こんな...
6話 “黒髪が不吉”なんて、誰が決めたの?優しい侍女との出会い
高い天井から降りそそぐ光の中、浴室はしんと静まり返っていた。湯気がふんわりと立ちのぼり、大理石の浴槽には淡い香りの湯が張られている。花の香りがかすかに漂い、水音だけがやさしく空間を満たしていた。「どうぞこちらへ。着替えのご用意もございます」...
5話 “もうひとりじゃない”――孤独だった彼女の、新しい始まり
絨毯が足音を柔らかく吸い込み、静かな空間に溶けていく。初めて足を踏み入れた公爵邸は、伯爵家の屋敷とは全く違っていた。壁も床も、窓辺の飾りさえも、どこか静謐で、手間を惜しまぬ手入れの跡があちこちに光っている。その景色に目を奪われながら、セレナ...
4.5話 黒髪の聖女との出会い。邸宅の前で交わる静かなまなざし
~セレナ公爵邸到着時 レオン視点~馬車の到着を聞き、邸の正門へと足を運ぶ。けれどすぐに見えてきたその馬車に、思わず足を止めた。――あれは、公爵家が用意したものではない。(……まさか、あれで伯爵家の令嬢を?)胸の奥に、鈍い熱が灯る。苛立ちを押...
旅立ちの日は、思ったよりもあっけなく訪れた。まるで、屋敷に“災いの元”を一日でも長く置いておきたくないと告げるかのように、準備は淡々と進められていった。荷物は最小限だった。古びた鞄に詰めたのは、必要な衣服と数冊の本、そして――小さな体を毛布...
3話 “不吉な子”と呼ばれた私に届いた、呪われた公爵からの求婚状
朝の食卓に呼ばれたのは、いったい何年ぶりだろう。胸の奥が、ざわざわと落ち着かない。その感覚が、どれほど久しい出来事なのかを物語っていた。私は震える指先を膝の上でそっと握りしめ、静かに椅子へ腰を下ろす。この席に座った記憶は、幼い頃に数えるほど...
2話 呪われた公爵と“隠された令嬢”――求婚状に込められた願い
若くしてノクティス公爵家を継いだレオンは、父の死と引き換えに受け継いでしまった“呪い”と共に生きていた。ある日、彼のもとへ届いたのは――黒髪と黒い瞳を持つ、”聖女”に関する奇妙な噂だった。◆冷たい風が路地を吹き抜け、銀色の髪を揺らした。古び...
1話 “黒髪の少女”と傷を癒す光──誰にも望まれず生まれた私の物語
黒色の髪に、黒色の瞳。その姿は、カルミア帝国では“禍を招く”と言われ、忌み嫌われてきた。そう言われて育ったのは、セレナ・アルシェリアという少女だった。伯爵家の次女として生を受けながらも、その存在はまるで影のように扱われていた。名を呼ばれるこ...
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