日蓮大聖人の身延入山後に、駿河国（静岡県中央部）の富士方面では、日興上人が中心となって折伏・弘教が進められ、天台宗などの僧侶や信徒が、それまでの信仰を捨てて、大聖人に帰依するようになりました。 そのために、地域の天台宗寺院による迫害が始まり、大聖人に帰依した人々を脅迫する事件が次々に起こりました。 弘安2年（1279年）9月21日には、熱原の農民信徒20人が、無実の罪を着せられて逮捕され、鎌倉に連行されました。 農民信徒は平左衛門尉の私邸で、拷問に等しい取り調べを受け、法華経の信心を捨てるよう脅されましたが、全員がそれに屈せず、信仰を貫き通しました。 そして、神四郎・弥五郎・弥六郎の3人の兄弟…
日蓮大聖人の御生涯 身延入山 三大秘法を明らかに 任用試験18
3度目の諫暁も幕府が用いなかったため、日蓮大聖人は甲斐国（現在の山梨県）波木井郷の身延山に入ることを決意されました。 身延の地は、日興上人の教化によって大聖人の門下となった波木井六郎実長が地頭として治めていました。 大聖人は、文永11年（1274年）5月に身延に入られました。しかし、大聖人の身延入山は、決して隠棲（俗世間から離れて静かに住むこと）などではありませんでした。 身延において大聖人は「撰時抄」「報恩抄」をはじめ、数多くの御書を執筆されて、大聖人の仏法の重要な法門を説き示されました。特に、 （本門の本尊、本門の戒壇、本門の題目）を明らかにされました。 またそれだけではなく、法華経の講義…
日蓮大聖人の御生涯 「開目抄」と「観心本尊抄」 任用試験17
佐渡の地にて、重要な著作が「開目抄」と「観心本尊抄」 文永9年2月に著された開目抄は、日蓮大聖人こそが法華経に予言された通りに実践された末法の「法華経の行者」であり、末法の衆生に対して主師親の三徳を具えられた末法の御本仏であることを明かされているところから、「人本尊開顕の書」といわれます。また文永10年（1273年）4月に著された観心本尊抄は、末法の衆生が成仏のために受持すべき南無妙法蓮華経の本尊について説き明かしており、「法本尊開顕の書」といわれます。 文永11年（1274年）2月、大聖人は赦免され、3月に佐渡を発って鎌倉へ帰られました。 4月に平左衛門尉と対面した大聖人は、蒙古調伏の祈禱（…
日蓮大聖人の御生涯 佐渡流罪・塚原問答・弾圧は門下にも及ぶ 任用試験16
佐渡流罪竜の口の法難後のしばらくの間、幕府は大聖人への処遇を決められず、約1カ月間、大聖人は相模国の依智（神奈川県厚木市北部）にある本間六郎左衛門重連（佐渡国の守護代）の館に留め置かれました。その間、放火や殺人の罪が門下に着せられるなど、さまざまな弾圧が画策されました。 結局、佐渡流罪が決まり、大聖人は、文永8年（1271年）10月10日に依智を出発し、11月1日に佐渡の塚原という墓地にある荒れ果てた三昧堂（葬儀用の堂）に入りました。そこでは、厳寒の気候に加えて、衣類や食料も乏しい中、佐渡の念仏者から命を狙われるという状態でした。 弾圧は、鎌倉の門下にも及び、土牢に入れられたり、追放、所領没収…
竜口の法難・発迹顕本文永8年（1271年）9月12日の夜半、平左衛門尉が武装した兵士を率いて松葉ヶ谷の草庵を襲い、日蓮大聖人は謀叛人のような扱いを受けて捕らえられました。 大聖人は、何も取り調べがないまま、夜半に鎌倉のはずれにある竜の口に連行されました。平左衛門尉らが、内々で大聖人を斬首することを謀っていたのです。 しかし、まさに刑が執行されようとしたそのとき、突然、江ノ島の方から“まり”のような大きな光りものが夜空を北西の方向へと走りました。兵士たちはこれに怖じ恐れて、刑の執行は不可能となりました。（竜の口の法難）。 この法難は、大聖人御自身の一代の弘教のうえで、極めて重要な意義をもつ出来事…
日蓮大聖人の御生涯 良観の祈雨大敗北と第2回の国主諫暁 任用試験14
雨乞い文永8年（1271年）夏に大旱魃（長期間の日照り）のため、良観が祈雨（雨乞い）するが、最初の7日間は雨は一滴も降らず、 良観は祈祷の7日延長を申し入れて祈りましたが、それでも雨は降らないばかりか、暴風が吹くというありさまで、良観の大敗北となりました。 しかし、良観は自らの敗北を素直に認めず、大聖人に対する怨みをさらに募らせ、配下の念仏僧の名で大聖人を訴えたり、幕府要人やその夫人たちに はたらきかけて、権力による弾圧を企てました。 良観は、当時の人々から徳のある高僧として崇められていました。しかし、実際には権力と結託して、私欲を貪っていました。 同年9月10日、大聖人は幕府から呼び出されて…
日蓮大聖人の御生涯 「立正安国論」の提出と法難2 任用試験13
「立正安国論」では、天変地異が続いている原因は、国中の人々が正法に背いて邪法を信じるという謗法（正法を謗ること）にあり、最大の元凶は法然が説き始めた念仏の教えにあると指摘 念仏者たちは幕府要人の内々の承認のもと、大聖人への迫害を図る。「立正安国論」の提出後まもない、文応元年（1260年）8月27日の夜、念仏者たちが、大聖人を亡き者にしようと松葉ヶ谷の草庵を襲いました。 （松葉ヶ谷の法難） 幸い、この時は大聖人は難を逃れ、一時、鎌倉を離れることになりました。翌・弘長元年（1261年）5月12日、幕府は鎌倉に戻られた大聖人を捕らえて、伊豆の伊東へ流罪に処しました。 （伊豆流罪）弘長3年（1263年…
日蓮大聖人の御生涯 「立正安国論」の提出と法難 任用試験12
立正安国論日蓮大聖人が鎌倉の弘教を開始された当時、毎年のように、異常気象や大地震などの天変地異が相次ぎ、大飢饉（飢え）・火災・疫病（伝染病）などが続発していた。正嘉元年（1257年）8月に鎌倉地方を襲った大地震は、鎌倉中の主な建物をことごとく倒壊させる大被害をもたらした。日蓮大聖人は、この地震を機に、世の不幸の根本原因を明らかにし、それを根絶する道を世に示すため、駿河国（現在の静岡県中央部）にある岩本実相寺で一切経を閲読されました。その時、日興上人が大聖人の弟子となります。そして大聖人は立正安国論を著され、文応元年（1260年）7月16日、時の実質的な最高権力者であった北条時頼に提出されました…
立宗宣言遊学によって妙法弘通の使命とその方途を確認された大聖人は、大難が起こることを覚悟のうえで、妙法弘通の実践に踏み出すことを決意。建長5年（1253年）4月28日の「午の時」（正午ごろ）、清澄寺で、念仏などを破折するとともに、南無妙法蓮華経の題目を高らかに唱えて末法の民衆を救済する唯一の正法を宣されました。 これが「立宗宣言」です。立宗とは宗旨（肝要の教義）を立てることです。32歳の時でした。このころ、みずから「日蓮」と名乗られました。 この立宗宣言の際に念仏宗の教義を厳しく批判した大聖人に対し、地頭（警察権や税の徴収権などを行使した幕府の役人）の東条景信は、 念仏の強信者であったために激…
日蓮大聖人の御生涯 それは、全人類の不幸を根絶し、すべての人々に仏の境涯を開かせたいとの誓願と慈悲に貫かれた妙法弘通の御一生でした。民衆の幸福を阻む一切の悪を責め抜き、大難につぐ大難の御生涯でもありました。 日蓮大聖人は、貞応元年（1222年）2月16日、安房国長狭郡東条郷の片海（現在の千葉県鴨川市）という漁村で誕生。 漁業で生計を立てる庶民の出身で、12歳から安房国の清澄寺で、教育を受ける。 大聖人は、仏法を究めるために、16歳の時、清澄寺の道善房を師匠として出家された。 大聖人は、鎌倉・京都・奈良など各地を遊学し、比叡山延暦寺をはじめ諸大寺を巡って、諸経典を学ぶとともに、各宗派の教義の本質…
仏界絶対的な幸福の境涯。仏界とは何か、「尊極の境涯」「自身の生命の根源が妙法であると悟る」「広大で福徳豊かな境涯」などの物々しい説明がありますが、どうにもピンと来ません。そもそも、成仏とは、死んだ人の事をさすのではなく、「仏界（ぶっかい）を成（ひら）く」というのが本来の意味です。 相対的幸福と絶対的幸福相対的幸福とは、物質的に充足したり、欲望が満ち足りた状態をいいます。 絶対的幸福とは、大聖人は、観心本尊抄で「末代の凡夫出生して法華経を信ずるは人界に仏界を具足する故なり」（241ページ）と言われています。 法華経を信ずることができるのは、人間としての自分の生命の中に本来、仏界がそなわっているか…
菩薩界仏の覚りを得ようと不断の努力をする衆生の事。大聖人は、観心本尊抄で 「無顧の悪人も猶妻子を慈愛す菩薩界の一分なり」（241ページ） と仰せで、他人を顧みることのない悪人でさえ自分の妻子を慈愛するように、人界の生命には本来、菩薩界がそなわっている。 生命に本来具わっている慈悲の心を、万人に向け衆生を救おうという慈悲を起こし、自らが自行で仏道修行の途上に得た利益を、他者に対しても分かち与えていく「利他」の実践で、菩薩界の境涯の根本は「慈悲」です。 にほんブログ村
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声聞界（しょうもんかい）縁覚界（えんがくかい） 声聞界と縁覚界をまとめて「二乗」と呼ぶが、声聞界と縁覚界の二つは、仏教のなかでも小乗教の修行で得られる境涯とされる。 声聞界とは、仏の教えを聞いて部分的な覚りを獲得した境涯を言う。対して、 縁覚界は、さまざまな物事を縁として、自分の力で仏法の部分的な覚りを得た境涯で、独覚とも言う。 仏の悟りから見るなら、声聞界と縁覚界の二乗が得た悟りは、あくまでも部分的なものであり、完全なものではない。また、二乗は自らの悟りのみにとらわれて、不幸な他人を救おうとしないエゴイズム（自己中心）に陥（おちい）りやすい。 二乗の境涯は、仏教のなかでも小乗教が目標としたも…
天界 大聖人は「喜ぶは天」（御書241ページ）と仰せで、喜びに満ちていることが人界にそなわる天界を示すものとされている。 これに基づく仏法の生命論では、欲求がみたされて喜びに満ちている生命状態を天界とする。天界は欲望を満たした時に感じる喜びの境涯に位置しているが、天界の喜びには永続性がない。 そのため、真実の幸福境涯とは言えない。 地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天を「六道」と言う。 古代インドの世界観で、衆生が生存する六種の領域で、凡夫は迷いに満ちたこの六道で生死を繰り返すとされる。 これを六道輪廻（りんね）という。この六道輪廻からの脱却を解脱と言う。 復習 六道のうち地獄・餓鬼・畜生の三つを三…
人界大聖人は「平らかなるは人」と仰せになっています。具体的には、穏やか、平静、人間らしさを保っている境涯因果の道理を知り、物事の善悪を判断する理性の力が明確に働いている状態で、 「賢きを人と云い はかなきを畜といふ」（1174ページ）と言われています。物事の善悪の区別がつき、自分自身を律する（自己コントロール）が可能な境涯。そして、人界は悪縁に縁する事で、悪道に堕ちる危険性がある半面、正しい修行に励むことによって 四聖（声聞・縁覚・菩蘇・仏）への道に進める可能性をもっています。人界の生命は「聖道正器」といわれ、仏道（聖道）を成(じょう)ずることができる器（うつわ）であるとされています。 にほん…
修羅界（阿修羅）の世界修羅界の生命状態は、自分と他者を比較し、常に他者に勝ろうとする「勝他の念」が強い。 他人と自分を比べて、自分が優れて他人が劣っていると思う場合は、慢心を起こして他者を軽んじ、他者の方が優れていると思う場合でも、他者を尊敬する心を起こすことができない。 自分をいかにも優れたものに見せようと虚像をつくるため、表面上は人格者や善人を装い、謙虚なそぶりすら見せることもあるが、内面では自分より優れたものに対する「妬み」と「悔しさ」に満ちている。 そして、本当に自分よりも強いものと出会ったときには、卑屈になって諂（へつら）う。（こびへつらい） このように内面と外面が異なり、心に裏表が…
畜生界大聖人は「癡は畜生」と説く。因果の道理が分からず、正邪・善悪の判断に迷い、目先の利害・損得にとらわれて行動する境涯 「畜生の心は弱きをおどし強きをおそる」（御書957ページ） 「畜生は残害（傷つけたり殺すこと）とて互に殺しあふ」（御書1439ページ） 畜生界の生命は、自分が生きるためには他者をも踏みにじり害悪の境涯で、理性や良心などは忘却し、目先の損得しか見えない愚かさの故に、結局は自己を破滅させ、苦しむ境涯である。 地獄界・餓鬼界・畜生界の三つは、いずれも苦悩の境涯なので「三悪道」という にほんブログ村
声聞・縁覚・菩蘇・仏を「四聖」と言うが、これは「仏道修行によって得られる境涯」 「浄土と云うも地獄と云うも外には候はず、ただ我等がむねの間にあり、これをさとるを仏、といふ・これにまよふを凡夫と云う」（御書1504ページ）通解（仏の浄らかな国土といっても、地獄といっても、外にあるのではありません。ただ我々の胸の間にあるのです。このことを悟るのを仏といい、このことに迷うのを凡夫というのです） 餓鬼界「餓鬼悲むくし飢渇にうへて子を食ふ」（御書1439ページ）「貧るは餓鬼」飢えて子まで食べる貧り、際限のない欲望、我欲にふりまわされ、そのために心が自由にならず、苦しみを生じる境涯の生命状態餓鬼界は、欲望…
「十界」とは、生命の状態、境涯を10種に分類したもので、仏法の生命観の基本となる境涯を変革していく指針になるかもしれない 地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人界・天界・声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界 地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天を「六道」と言う声聞・縁覚・菩蘇・仏を「四聖」という 法華経では、九界の衆生に仏界が具わっていることを明かし、成仏した仏にも九界の境涯が具わることを説く「浄土と云うも地獄と云うも外には候はず、ただ我等がむねの間にあり、これをさとるを仏、といふ・これにまよふを凡夫と云う」（上野殿後家尼御返事 1504ページ）「瞋（いか）るは地獄・貪るは餓鬼・癡は畜生・諂曲（てんごく）なるは…
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