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2023/09/21

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  • 酔漢憧憬

    私たちは日々、さまざまに着飾り、「美」を飾ることによって、あるいは知識で武装し、「知」を誇示することによって、少しでも自己を大きく見せようと奮闘している。 獣と私たちとを隔絶するのは、まさにそういった自己研鑽の有無に他ならず、そのために私たちは本能的欲求を抑圧しさえする。 それが無意味である、とは思わない。だが、私たちは押し並べて皆死にゆく存在である。あのソクラテスでさえ死んだのだ。例外はない。...

  • 【服従の甘美:弐】萌芽

    バイト先へと向かう美帆の足取りは、いつになく重かった。あの店長に会わなければならない、そう考えるだけで憂鬱になる。彼の顔を想起しては心中で痛罵し、昨晩撮った写真を思い出しては顔を赤る、結局はその繰り返しだった。 だが、バイトに出ないわけにはいかない。どれほど心が乱れようと、その思いだけは確固としている。僅かな時給とはいえ、稼ぎを失うわけにはいかないのだった。 それに、と先ほど銀行で印字した通帳の...

  • 【服従の甘美:壱】奈落

    「はぁ」 洗い終えた食器を前にして、思わずため息が漏れる。唐揚げの油が執拗く、いつもより手間が掛かった。慌てて食卓に付き、天ぷら鍋を水に浸け忘れたことが、今更のように悔やまれる。食後テレビに見入っていたことも、自責の念を駆り立てた。 だが、洗い物の徒労感ばかりが、ため息の原因なのではなかった。いつもならビールを片手にソファーで寛ぎ、仕事の疲れを洗っているはずの母の姿がない――その事実が穴を穿ったよう...

  • めたもるふぉーぜ

    人との関わりというものは曰く捉え難いもので、何かを掴み得たと思えば霧散し、茫漠としているかと思えば奇妙な実態性を帯びてくる。それは変質を続け、決して留まることなどありはしない。その移ろいの喚起する苛立ち、焦燥、寂寞。僕たちはそれを埋めるために言葉を紡ぎ、身体を重ねて言葉の必要を訴える。つまるところ、僕たちは言葉によって関係の変質に鎖を繋げようとするわけだ。君が消えないように、僕が押し潰されないよう...

  • 【人間家具の館7】聖流心病院看護科の本棚

    奥の部屋に入れば、中央に一台、大きな本棚が置かれていた。2mほどの高さがあって、横幅もかなりある。一階にあったものとは異なり、びっしりと本が詰められていた。 「さて、ここが最後のお部屋ですから、丁寧にご説明いたしましょう」 まず、と男は中央の本棚を示した。 「こちらは回転式の本棚となっております」 四角い木の板が本棚の土台を為しており、板の下には、四隅とその中線に一人ずつ、女が配置されている...

  • 【陸】被虐の法悦

    いつもより化粧をするのに時間が掛かった。丁寧にネイルをして、一番上等な香水を付ける。昨晩に選んでおいた服の下にはしかし、肌着を着ることは許されなかった。 精一杯お洒落をして来なさい、それが『彼』からの言いつけなのだった。無論、『彼』から言われずとも、意中の男性と顔を合わせる以上、身だしなみに気を遣うつもりではあった。だが、改めて『彼』から命じられてみれば、『彼』のために身を整えるという、その事...

  • 【人間家具の館6】深森女学園高等部3年A組の円卓

    二階中央の部屋は、先ほどの部屋よりも広かった。 中央に大きな円卓があり、卓上に女が一人、足を拡げて座っていた。女は肘を畳んで、肩の横で両手を平行に広げている。円卓の周囲には、卓を囲むように十数脚の肘掛椅子が並んでいた。部屋の左端にも小さな書斎机が数卓並び、右端には肘掛椅子が10脚ほど並んでいるのだった。奥には、本棚と似たような形をした、ラック棚が数脚立っている。 「この円卓はね、一つのクラスです...

  • 【人間家具の館5】家具になった母娘

     男の後を付いて階段を登れば、正面に廊下が広がり、右手に三つの扉が見えた。左手には同じく三つの窓があり、窓の間隔ごとに花瓶が置かれている。その何れにも赤い薔薇が刺さっており、それが当然であるかの如く、全てに棘が残っている。とはいえ、それぞれの花瓶には特色があるようだった。 手前にある花瓶は、二人の女で出来ていた。全身をテープで巻かれ、黒い布で顔を覆われた女が仰向けに寝そべり、腹の上に鉄の板の...

  • 【人間家具の館4】バレーボールチームのベッド

    部屋に入ると、大きなダブルベッドが部屋の中央に据えられていた。その下を、幾人かの女が支えている。正座の姿勢を取るべく脚を固定された女たちは、頭部をベッドの底に付け、四隅の柱を持ち上げる形で配置されている。彼女たちは両の掌で柱の底を支え、身体中に巻かれた鎖で微動だにできない。ベッド下の中央部にもまた、肘と膝を床に突けた四つん這いの姿勢で固定された5人の女たちが居り、ベッドを背中で支えていた。 興味...

  • 【短編】無邪気

    女が一人、目前に立っている。 笑顔を浮かべ右手を頬に添える女の表情は、明らかに何かを期待していた。いつもより少し着飾り、以前にこれは高いのだと言っていた香水が周囲を漂う。 女は明るかった。 それは比喩ではなく、確かに明るく見えた。それもそのはずで、知り合って一年ほどの間に一度も為したこともなければ、そのようなものに興味を示す素振りも見せたことのなかった女が、髪を染めていたのだった。紫に変色...

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