讃岐の生まれ
「元気なん?」叔母から電話がかかってきた。季節の挨拶だった。受話器を取った瞬間にわかる、故郷の言葉だった。おっとりと優しいイントネーションに自分の心は温まる。故郷と言っても自分が実際そこに住んだのは三歳までで、あとは毎夏休みに母親の里帰りに同行してひと月をその地で過ごした。高校生までそうしていたから延べ日数は短くはない。自分の郷里は何処だと聞かれたら迷うことなく香川と答える。 そんな故郷は香川県中部の港町だった。家から十分も歩けば瀬戸内海が広がっていた。南に少し足を延ばせば古刹・善通寺がありその南には金毘羅山がある。♪こんぴらふねふね 追い手に帆かけて シュラシュシュシュ… 金毘羅参りのあの歌…
2024/09/30 06:02