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日々これ好日 https://shirane3193.hatenablog.com/

57歳で早期退職。再就職研修中に脳腫瘍・悪性リンパ腫に罹患。治療終了して自分を取り囲む総てのものの見方が変わっていた。普通の日々の中に喜びがある。スローでストレスのない生活をしていこう、と考えている。そんな日々で思う事を書いています。

杜幸
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2023/03/09

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  • ひとごろし

    テレビをつける。ドラマをやっている。ほぼ必ず人が殺される。犯人は誰かと謎とき。その背景にある人間関係と彩を探る。犯人が捕まる場合も、犯人もまた死ぬ場合があるだろう。大河ドラマでも死ぬだろう。こちらは景気よく大量死する。武将の生涯を描くことが多いだろうからそうなるのだろう。だろう、と言う推量の助動詞を続けざまに書くのは、自分は余りその手のドラマを見ないために推測の域を出ないからだった。年齢だろうか、人が殺されるドラマを見ていてあまり楽しくない。むしろシーンに嫌悪もある。やはり幸福で泣けるドラマが好きだ。 原作者も監督も、きっとそれらしく死ねるようにシナリオを書いて演技をさせるのだろう。名切られ役…

  • 山里の恵み

    ハイキングでも良い。里山散策でも良い。長閑な風景の中を歩いてみよう。するとよく目にする。籠と料金箱だけを置いた「無人野菜販売」コーナー。多くは畑の一角であり、高台に位置する農家への入り口にあるだろう。プラスチックのコンテナであり手製の篭であり。そこに獲れたての野菜や果実があり、その横には小さな料金箱がある。外国人がIncredibleと叫ぶ無人販売など日本人以外なら成立しないシステムだろう。野菜や果実が盗まれても、更に料金箱が破壊されてもそれを防止する仕組みもない。それがしっかりと機能することを自分たちは誇りにすべきだと思う。 そんな恩恵、昔は素通りしていたが今は楽しみの一つになった。ルート上…

  • 仲間と愉しむこと

    ムジィチーレン。そんな言葉はいつ覚えたのだろう。ドイツ語は詳しくないがクラシック音楽を聞いて関連書籍を読んでいるといずれ触れる単語だろう。自分は吉田秀和の著作あたりで知ったのだろう。ムジィチーレンとは「音楽をする」という意味と理解していた。概ね正しいようだが「仲間と音楽演奏を愉しむ」というニュアンスもあるようだった。ミュージックのドイツ語はムジークだがそれに関連しているのだろう。 駅に直結した小ぶりのホールだった。かねてから地元の掲示板で気になっていた一枚のチラシを手にして妻と出かけた。このサイズならピアノ教室や民謡舞踊の発表会にも使えるだろう。程よい大きさで演台も近く親しみを感じる。 それは…

  • ガソリンスタンドでのお正月

    もうすぐお正月がやってくる。「お正月くらいは家に帰って来なさい」。そんな言葉があった。大学生になり初めての一人住まいだった。夏休みに帰省したばかりなのに母はそう言うのだった。「お正月くらい」とは何だろう。正月はそんなに大切なのだろうか?確かに正月はクリスマスに続いてやってくる冬休み最大のイベントで、小学生には楽しいものだった。親戚に会いお年玉ももらえる。中高になると冬季講習会で塾通い。大学生となり帰省しろと言われてもその先は富山市だった。父の転勤先の広島の高校を卒業し自分はキャンパスのある神奈川座間市に住んでいた。同時に父は富山に転勤したのだった。縁もない北陸の街に加え正直母に会いたくなかった…

  • 図書の旅35 山とスキーとジャングルと 本多勝一

    ●山とスキーとジャングルと 本多勝一 山と渓谷社 1987年 本多勝一の単行本を初めてどこで目にしたのかを一生懸命思い出そうとしていた。しかし記憶は曖昧としている。確かあれは学生時代だった。僕は友人と二人で女友達の引っ越しを手伝ったのだったように思う。なにせ22歳の女性の部屋など入る機会もない。加えて彼女は僕達の憧れだった。だから緊張と部屋の香りで気絶寸前だった。薄らぐ記憶の中で本多勝一の書が並んでいたように思った。タイトルはうろ覚えだが山の随想かと思えば必ずしもそうではない。世界の僻地の紀行やルポもあったように記憶している。 図書館で手に取ったの彼の書籍は山と渓谷社、通称ヤマケイから出版され…

  • ラチェットの唄

    ラチェットが心地よく鳴る道は心地よい。その音をオノマトペで再現を試みるが良い表現もない。低速はカタカタカタ?チリチリチリ?中速以上はザー、ジー、ジャーッ?どれも違う。 それがよく響く道とは何処だろう。サイクリストなら問うまでもなくそれを知っている。緩やかな下り坂や足休めで惰性で走っている時だ。リアのホイルからリズミカルなメカ音が聞こえてくる。音楽のようなその音を楽しんで聞いている時は田んぼや畑の中の一本道になるだろう、信号も対向車にも気を使わずに走るとこのメカの音は風景を切り開き自分はその中に溶け込んでいく。この音を「ラチェットが唄う」と表現された方が居たが、素敵だと思う。 自転車の後輪には歯…

  • 元気が無いのだった

    シートン動物記とファーブル昆虫記。どちらも子供の頃に読んだが内容は全く覚えていない。犬が好きだった。昆虫は小学生の頃はクワガタが好きだった。造成地に残るクヌギ林は彼らの宝庫だった。が家には姉が居て昆虫をひどく怖がることもあり自分の昆虫体験は小学生までだった。今では昆虫類であるゴキブリが大変おぞましい。あんな小さな体で人間をパニックにする。自分とて手を伸ばして殺虫剤を狂ったように噴霧する。 自分が通っていた大学は渋谷の宮益坂の上にあるが、坂を登り切った左側に縦長の建物があった。当時そこにある店を見た時に感慨深かった。昔から知った名前だった。中学高校の頃自分が熱中した作家は北杜夫だが彼は大の昆虫マ…

  • 好奇心は罪作り

    雛鳥が初めてみた鳥を親鳥と思う。本当か?しかしよく聞く話だ。今後の音楽観が決まるという意味では初めて聴いた音楽がそれに当たるだろうか?自分は小学生の頃バッハのフランス組曲で音楽に惹き込まれた。あの学習教材の赤いソノシートには感謝している。以降クラシック音楽は切り離せないのだから。ポピュラー音楽の入口は高校で聴いたロックだった。 ロックも何を最初に聞いて熱中したかによりその人の音楽嗜好は変わるだろう。高校生の学園祭では誰もがスモーク・オン・ザ・ウォーターをやっていた。レット・イット・ビーをやるバンドもいた。少し偏屈な自分はその対抗馬として位置づけられていたバンドを意識して聴くようになった。どちら…

  • 竹竿使い

    ♪たけやぁ竿だけぇ 拡声器から聞こえるその呼び声はかつてはよく町の中で聞いていた。最近は聞かなくなったように思う。 そもそも竹竿は何に使うのか、今の生活ではあまり用途も浮かばないだろう。布団や洗濯物を干すために使うのだが、今はベランダで干すことになる。狭い敷地の中に建つ建売住宅や集合住宅ならばお隣さんは直ぐそこにいる。物干し竿のサイズは自ずと決まる。あまりに長い竿だと隣家にぶち当たることもあるだろう。今では物干し竿は伸縮調整のできるステンレス製が多いのではないか。しかも防犯的要素や高層階化した住宅もあり室内干しが増えた中、果たして物干し竿の需要はどれほどあるのか。 空き地や軒下に自由に物が干せ…

  • 白い建物

    別に離婚の調停をしているわけでもない。もめごとがあったわけでもない。重たい雰囲気のその建物は実に約四十年振りだった。白い建物と思っていたが記憶違いだったのか。薄茶色だった。建物を出て海を間近にする公園まで歩いた事を覚えている。 玄関の扉を開けるとそこは空港ゲートのようだった。ガードマンが数人。手荷物はX線透視装置を通す。自分自身もセキュリティゲートをくぐらないと入れない。この建物には刃物でも持ち込む輩が居るのだろうか。そんな事態を恐れているのかもしれない。 四十年以上も昔に何の罪でここに来たのだろう。罪状名は憶えていないが何をしたのかは覚えている。まだ十八歳だった。親元を離れて一人住まいを始め…

  • 弁慶の七つ道具

    街行く人はただ思うだろう。これは何なのだろう。空に喧嘩でも売っているのかと。そして風が吹いても倒れないようにしてほしいものだと。パイプの骨が為す役割に多少なりとも想像がつく人は更に思うだろう。何かを傍受しているのだろうかと。被害妄想の傾向がある人は更に思うであろう。何か光線でも発射して密かに気に入らない人や物をこの世から抹殺しているのだろうか、と。スパイ映画の好きな人は更に思うだろう。きっとここはCIAやMI6のアジトであると。そんなすべては普通の感覚なら正しい。そもそも異様。これはまるで弁慶の七つ道具だ。これを誰かが操作するのであればその人のは間違えなく変人だろう。自己中心的なのか、殻に籠も…

  • 図書の旅34 ホテルカイザリン 近藤史恵

    ●ホテルカイザリン 近藤史恵 光文社 2023年 普段あまり本を読まない妻が「この本を読みたい」というのも珍しい事だった。図書館に申し込んだら数日で電話が掛かってきた。前回の閲覧が終わり返本されたという。奥付の履歴スタンプを見ると今年の十月に納品された本は妻で5人目となる。貸出期限は二週間なので早いペースで貸本が回っているようだった。 作者さんの名前も知らなかったが、履歴を見るとミステリーの著で様々な誌面に投稿され賞を得ているようだった。話題作だったのだろう。妻は何故この本に行きついたのか、アンテナが高いなと思う。 八作の短編集だった。片意地張らない文章はからだにすっと入ってきた。主人公のパリ…

  • 怒る人

    「おりゃー何やってんだ。今すぐ窓を開けて飛び降りろ。」そんな怒号が聞こえる。ああまたか、と思う。赤鬼のような小太りの管理職が激しく怒っている。そこは異なる事業部の国内営業部のエリアだった。自社商品以外も、なんでも売ってしまうというその事業部の国内営業部の勢いは半ば伝説でもあり実際会社はその事業部のお陰で売上と利益を確保していた。言う方もイライラするだろうが言われる方も落ち込むだろう。あの剣幕で皆の面前なのだ。 すごいな、自分にはできないな、と半ば呆れ、少しだけ羨望を交えて遠巻きに彼を見る。 上司からの面談は半期に二度。昇給と賞与の伝達があった。その際に自己の人事評価フィードバックがある。そこで…

  • 勘違い

    K銀行のATMだった。そこで見慣れないカードを入れてメモした暗証番号を打ち込んだ。送金は無事に終わった。さて通帳に記帳しようとATMに開いて差し込んでもすぐに戻ってくる。三度トライした。「磁気カードエラーで読み取れません」と表示される。舌打ちをした。 父親は先日世を去った。晩年は自宅で倒れてから三年間老人施設にいた。糖尿病起因で全身機能が低下した。九十二歳だった。色々病気をしたが大往生だった。 ツガイとは不思議なもので母も一年遅れで自宅での生活が難しくなリ自宅と施設を往復するようになった。こちらは加齢による足腰の弱み、それに加え父の施設入り、我が姉の若き逝去、そんな重なる心労だろうか。加え認知…

  • 七回目のワクチン

    行政から案内が送られてくるたびに律儀に接種している。コロナワクチンだ。もう今回で七度めだった。 コロナワクチン第一回目接種の時はある種のパニックだったと思う。テレビでおなじみの方々も罹患し逝去され秘密裏のうちに火葬される。罹患すると隔絶される。そんな、恐怖に満ちた未曽有の出来事だった。そもそもワクチンの接種券が来るのに時間がかかった。都内の小さな市に住む友人は一足先に接種券を手にしていた。小さな行政府は小回りがきくなと、羨ましかった。券が来たら来たで今度は接種の予約が取れずに焦った。モデルナが早いらしい、ファイザーの空きがでた、アストラゼネカはどうなったんだ!と毎日緊迫していた。そんなワクチン…

  • スキーと白河ラーメン

    一杯のラーメンを目にしていた。その店は間違えなく二回目だった。そしてそれは三十年以上前の話だった。 あの頃毎冬が楽しみだった。行くと思うと胸が踊った。スキーだった。原田知世主演の映画のヒットもありスキー全盛期だった。男同士のスキーは技術的向上を目指している人以外には面白くない。そこに女性が加わると天と地の差が生じる。だから自分も冬になると手を挙げて会社のスキーの幹事をした。多くの女性社員に声をかけたが残念ながら集客能力は高くはなかった。 スキーウェアには功罪があった。誰でもあの服に身を包むとシンデレラになってしまう。特に知世ちゃんが着ていた白のワンピースはとりわけ流行っただろう。すべての女性が…

  • 食は力なり

    「今日も明るく元気にやって行きましょう!」そんなポジティブなメッセージを書かれるブロガーさんがいらっしゃる。僕はいつも楽しみに読んでいる。彼女のブログにはいつもページの最後に一家の食卓の皿が写真でアップされている。手の込んだ料理は如何にも栄養に富みバランスが良い。その背景には台所に立つ方の愛情があるのだろう、だからこそ見ていて嬉しくなるし、なによりも腹が減ってくる。 かつては四人と一匹いた家族も、もう今では二人きりだ。質素になったのは食卓だった。娘たちが結婚し家を巣立つ前、それは自分が未だ社会人だった頃。当時は毎晩家内が夕食を作っていた。さて今宵は何が出てくるかな、と思いながら揺られる満員電車…

  • 日本家屋

    近所の谷戸に古民家がある。それは何処からか移設されたものだが当時の状態で保存されている。その回りもまた花木園と称して谷戸地形の自然が残っている。散歩がてらに妻と歩いてみた。 秋というのに暖かい。2人は共に露出した腕や足首を蚊に刺されていた。それほど秋の訪れは遅かった。里山が残されている。そこを歩くうちに二人はそこら中痒がっていた。ブドウのような紫が緑を背景に映えている。スマホで撮影するとすぐに樹木の名が分かる。便利な世の中になった。「ムラサキシキブ」と知った。取って食べたくなってしまうように小ぶりで可愛い実だった。酸っぱいのか苦いのか、毒があるのか、知らない。 土間で靴を脱ぎ畳の部屋に上がった…

  • 曇り空

    ここしばらく続いていた暖かい日。それは「秋」という単語を暖気が何処かに蹴とばしてしまったのだろう。そう思うしかないものだった。午後遅くにウォーキングをすれば汗ばむほどだった。Tシャツに短パンで歩くとなんと蚊にも刺されてしまった。「霜月」と美しく呼ばれる時期なのだ。これでは霜など当分降りそうにない。 そんな日々、今朝は目覚めるとすこしだけ空気が硬かった。掛け布団をずらすのにためらいがあった。飛ばされて置き去りにされた季節もこれではいけない、と思ったのだろうか。上着を着て暖かいコーヒーを飲んだ。エスプレッソのダブルでと行きたいところだが自分は味音痴だ。インスタントの顆粒でも「これがイタリアンロース…

  • 図書の旅33 金閣寺 三島由紀夫

    ●金閣寺 三島由紀夫 新潮社1990年 怖かった。書棚に近づけなかった。いつも見ないふりをして通り過ぎていた。それでいいのか、という声がしたが無視していた。これを読んだら自分も肉体改造にいそしみ、結社を作り、日本刀を片手に何処かに殴り込むのではないか、と。それほどの未知なる影響力をミシマという三文字に抱いていた。 潮騒を読んだのは何時だろう。あまり覚えていないが男女の純愛を越えた何かを感じた。下着が濡れる、そんな感覚を覚えたのだから小学生高学年だったに違いない。 小説・金閣寺は実際の事件をモチーフに三島由紀夫が造り上げた世界だった。主人公の告白というかたちで話は進む。日本海に面した寺で生まれた…

  • 友の作ったソバ

    学生時代など仲間内は渾名で呼び合うことが多かった。中にはあだ名しか知らずに本名は何だっけ?という困った例もある。 子供番組ピンポンパン。あれに出ていた河童のキャラクターがいる。その名前で呼ばれていた友人がいる。やや人見知りの気があるのだろうか、初めは彼となかなか打ち解けなかった。ただ彼と僕の間には共通項があった。それは音楽の趣味だった。二人共クラシック音楽が好きで、かつ、ロック好きだった。どちらの世界も奥深くすそ野は広い。二人ともその細かい点で好みが違っていた。二人の嗜好はマクロで合致してミクロでは別路線だったが何処かでお互いの好みを尊重していた。それぞれ自分の好きな音楽を紹介して、受け入れて…

  • 広場の孤独

    そこは谷戸の地形を利用していた大きな公園だった。谷戸なので沢筋が丘陵地迄深く浸食している。そこには当然水の流れがある。そこに三つの池を作った県立公園だった。幼稚園の頃よくそこで遊んだ。当時住んでいた社宅から徒歩十五分だった。家族でピクニックでもしたのだろう、いや、遠足だったかもしれない。カヤトの斜面に腰掛けて母の作ったおにぎりを食べていたら何の拍子か手から落としてしまった。それは斜面を転がり僕は泣いた。童話・おむすびころりんのようにネズミの穴に落ちたわけではないが、草まみれになってしまったのだ。 時は過ぎ自分の子供たちが小さな頃も又ここは格好の遊び場だった。三つの池のほとりには遊歩道がある。少…

  • 季節外れの北帰行

    北関東へ向かう列車だからだろうか?列車に乗り込み自転車の入った輪行袋を固定して椅子に座って気づいた。椅子にスチームが通っていた。いやそれでは昔の客車列車だ。今はヒーターだろう。 朝6時半の長距離列車だった。新幹線も通っているが各駅停車で行けるのならそうする。知らない駅で停まる。高校生が乗ってくる。長い距離だと客層は一巡二巡する。ドアから入ってくる空気はつど見知らぬ匂いがする。新鮮だ。 生まれて始めて東北本線に乗ったのは幼稚園か小学校低学年か。父が会社の保養所を予約してそこへの家族旅行だった。行き先は那須だった。そして次は日光への修学旅行だったろう。「ひので」という専用車両だった。その頃既に地理…

  • 落ち葉とタヌキ

    月めくりのカレンダーはあと二枚だというのに不思議な天気が続いている。冬至迄はあとひと月か。確かに日は日増しに短くなる。しかし肝心の空気には気迫が足りなかった。時折肌を刺すが昼間などはTシャツ一枚でも過ごせる。なんだか誰かに騙されたような気もしてくる。 今日はことのほか風が強かった。職場に行き戸外に出してある自転車を館内に収める。自分の仕事の日課だった。戸外の自転車置き場は大きなクロガネモチの木の下だった。自転車のカゴを見ると小振りの葉っぱが沢山積っていた。今日の風に耐えかねて、頭上の木から散ったのだと思った。 葉っぱでも沢山積ると風に舞い上がるだろう。それが路上に落ちるとアスファルトの上で車に…

  • 枚挙にいとまなし

    トランクス。ボクサーが履いているやや緩めの半パンだがショート丈だと男性の下着でもある。足の捌きが良いのだろうか。風通しが良いので蒸れないだろう。 小学生の頃は下着は白ブリーフと相場は決まっていた。中高でもそうだった。何故あそこまで純白なのか分からない。生地の生成りの色なのか?いや、心の清純さの証だろうか?流石に中学生になると心は憧れの女子の事で一杯になり白くもなくなるのだが。それと同期するかのように何故か白ブリーフは恥ずかしくなりやがてトランクスになった。 トランクスなので当然裾は太ももより大きくスースーする。それが狙いの商品だろう。フィット感の高いものも出てきたがそれはボクサー型と呼ばれてい…

  • そば部長

    いつも飽きもせずに「もりそば」ばかりよく食べるなあ。 当時自分は電子機器の海外営業部に属していた。商品を海外の会社にOEM販売していた。そのお方の肩書は部長さんだが営業ではなく技術部門ご出身で技術アドバイザーでいらした。茶色が彼の好みなのだろう。いつも茶系統のスーツを着ていた。部長さんを名乗っていたのだから役職定年前だったのだろう。しかしまだ二十代の自分には五十歳を過ぎた男性の年齢の違いなど判るわけもなかった。 彼に技術的疑問点を聞くと、よくぞ聞いてくれましたとばかり目を細めて教えてくれた。何故だろうコソコソ話のように話すから自ずと彼とは膝詰めになった。軽い筆圧で書いた小さな文字と図解で示して…

  • 抜けた空気

    ゴムで出来たタイヤを持つ乗り物で一番最初に乗るものは自転車だろう。初めは補助輪をつけていたがそれが片側になる。初めてバランスを取れた時は嬉しかった。そしてオートバイ。原付で始まって中型バイク。そして自動車。 自転車は子供時代をさておくとMTB、ロード、ランドナー。5台乗ってきた。エンジン付きになるとバイクは原付が1台、中型が4台。車は7台。自転車のパンクは数知れず経験してきた。エンジン付きの乗り物ではパンクを経験したことが無い。一度だけバイクのタイヤに釘が刺さったがチューブレスタイヤで走行に問題はなく簡単に補修できた。車でのパンクは一度も経験がない。いつしか車のタイヤはパンクしないものだ、と思…

  • 耳に心地よく

    香川県のとある市の役所に電話をした。他界した姉の戸籍を手繰り寄せる必要があった。姉の一家は横浜に住んでいたが調べてみるとその本籍地は香川県と知った。結婚相手が香川の人だったのだからそれを機会に横浜からそこに戸籍を移したのだろう。 市役所の戸籍係だった。対応の女性と話していたら、いつの間にか話している相手が義理の伯母に思えた。産まれてこの方香川で暮らしてきた彼女は他の地方の言葉の影響を受けていない。生粋の香川弁をしゃべるのだった。役所の女性の言葉も発音や言葉尻が余りに懐かしく、電話越しなのに瀬戸内海の香りがしたのだった。香りが電波に乗って受け手に届くことを初めて知った。香りばかりでなく風景も電波…

  • 前線の通過

    子供のころから天気図が好きだった。日本地図の上に何本もの線が引かれている。密なところもあれば疎の箇所もある。この線は何か?特に気に入ったのは前線の表記だった。たいていは東西に延びた線に白い半丸と黒の三角が旗のように互い違いに配置されている。それは停滞したり動いたりする。あの前後で何が違うのだろう。風景が変わるのか?科学的好奇心の目覚めだったのかもしれない。台風の図は見ていて余り幸せになれなかった。子供の頃写真で見た鳴門の渦潮を思い出させるのだろう。あそこに入ったらどんどん渦の中。海坊主に足を捕まれ二度と出てこれない、そんな恐れがあった。天気図帳を買ってきてNHKラジオから流れる各地の気圧を書き…

  • 諦めるか、どうするか

    20 2 120 120。 1と2、0が並ぶ数字だがこれはなんだろう。呪文でもない。 この大きな部屋に来るのは久しぶりだった。大丈夫かな、と思うのだ。 ここしばらくあまり体に力が入らない。むしろだるいというべきだった。もう11月というのに日中の寒暖差が半端ない。昼はTシャツ半パンなのに夜は薄手のフリースも羽織る。若ければこんな事では怯まないが、今は残念ながらボディブローのように効いてくる。体がだるくてすぐに横になってしまう。昼寝付きだ。 部屋には無機質な多くの器具が光っている。無愛想な道具だがそこに人がすわると生気をおびてくる。僕も座ってみる。バーを握り動かすがひどく重い。ウエイトを減らした。…

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