中世の運送業者・馬借と車借~その⑪ 牙を抜かれた馬借たち 発展する大津、廃れる坂本
戦国が終わり、世の中は織豊政権による中央集権体制となる。天下が完全に鎮まるまでは、「関ヶ原」や「大阪の陣」など、まだ幾つかの大戦を経なければならなかったが、少なくともこれまで各地で多発していたような、小勢力同士の泥沼の小競り合いはなくなった。また流通の最大の障害であった、星の数ほどあった関所の数も激減したため、商品流通経済がより活発になったのである。 シリーズの始めで紹介したように、中世の馬借たちは地域の権力者――つまりは戦国大名らと結びついて、その地の物流を担っていた。近世に入っても、その構図自体は大きくは変わらないのだが、これまで持っていた商人的側面ははく奪されてしまう。かつて強い力を持っ…
2023/11/29 08:54