白いクーペのように見えたのは、崖下の岩場に砕けた波しぶきだろうか
(Op.20250331/Studio31,TOKYO) 「『ソングライン』は、大分読み進んだ?」出来上がったパスタを皿に盛りつけながら、水口イチ子が聞く——昼の陽射しが南向きの窓から差し込むキッチンでのことだ。「原書だからなかなか速読を許してくれず、まだ最初から五分の一位のところかな」とぼく。さっき、キッチンに蜂が入ってきたとイチ子が騒いでいたが、その蜂も今はどこかへ行ってしまったようだ。「『ソングライン』の大命題『人は、なにゆえ旅に出るのか?』は、今のところ、まだ解明されていないらしい。でも、それが解ると旅は終わってしまうのかも知れない。ところで、そのスカート、似合ってるね」そう言ってぼくは、パスタを口に運び、オレンジを絞り込んだ赤ワインのグラスに手を伸ばす。「あら、嬉しいわ、アリガト」自分の皿にチ...白いクーペのように見えたのは、崖下の岩場に砕けた波しぶきだろうか
2025/03/31 15:35