骨董商Kの放浪(35)
宋丸さんは自分の手帳を取り出すとテーブルの上に置き、Reiに渡されたメモ用紙に書き込みを始めた。「ほら」と渡された紙には、なにやら電話番号が書かれている。「こちらに電話したらよいのですか?」「ああ。それが会社の秘書室の番号だ。宋丸の紹介といえば、すぐに室長に取り次いでくれる。それで日程を調整してもらって、行って来いよ」「ここの会社の社長さんですか?」「今は、会長職になってるんだろう。とにかく、その方に会ってご覧に入れたら喜ぶだろう」そう言って宋丸さんはカカカと笑ったが、まったく先の読めない話に、ぼくは口を半分開けたまま「はあ」とうなずくしかなかった。 先週は気温が20度近くになった日があったた…
2023/03/24 23:51