骨董商Kの放浪(33)
二月上旬の午前9時、僕と才介は大分空港に着いた。ここからホバークラフトという何とも乗り心地の悪い水面を走る船を利用し、別府に着いたのが10時前。「何か、寒いなあ。東京より気温低いんじゃない?」才介が首をすくめ身体を縮めた。清らかな空気は、確かに冷たさを感じる。僕らは足早に、会場となる小さな市民ホールのような建物のなかに入った。 今日はここで、骨董商が俗に「温泉市(いち)」と呼んでいるオークションが開催される。オークションといっても、海外のような派手なものではなく、知る人が知る、ほぼ100%商売人が参加する小さな競り市。その参加者も「初出(うぶだ)し屋」と呼ばれる、店を持たない、リサイクルショッ…
2023/02/17 22:52