『重右衛門の最後』 田山花袋
1908年(明41)如山堂刊。『村の人』という表題の短編集に所収。他に『悲劇?』と『村の話』との3篇から成るが、文学史上も知名度が高い「重右衛門」を初めて読もうと思った。予想通り難解だった。従ってこの1作だけで読了とした。 名前からして鷗外のような歴史物かと思っていたが、花袋が親交のあった長野県の山村(現飯縄町)の友人たちの郷里を訪ねたときの体験談がもとになっている。前置きが長く、なかなか「重右衛門」が登場しないのも、文豪の作品とはこういう語り口なのだという敷居の高さを感じさせた。 村の豪農の家に生れた重右衛門はまともに働こうとせずに、酒色に身を持ち崩し、家作や田畑を売り払い、村人に借金や物乞…
2022/11/29 23:34