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人生は花鳥風月 https://saga135.hatenablog.jp/

自分の趣味であるギャンブルや読書、水泳、魚釣り、ゲーム、動画鑑賞等を中心に世相や人生観、様々な事を綴っています。 言ってみれば何でもありなブログです。

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2021/01/18

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  • 汐の情景 九話

    後ろを振り返る事を嫌う者はいても、一度だけでも過去に戻りたいと思う者は結構な数で存在するのではなかろうか。 前向きな精神に虚勢を感じるとは言わないまでも、その人生に於いて只の一度も昔に戻りたくはないといった思想には多少なりとも無理があるように思える。 無論そこに災いの種が見え隠れするのなら立ち戻る必要性すら無い訳だが、たとえ一筋の光明でも見えれば自ずとそこへ向かってしまうのが人間心理だろう。 互いに息を合わすかのようにして後ろを振り返り、歩みを進め、向かい合う英和と直子はその目を見つめながらも言葉を失っていた。こんなシチュエーションに言葉を求める事がたとえナンセンスであろうとも何か一言でも口に…

  • 汐の情景 八話

    数ヶ月が経ち英和が高校一年生を終業した頃、家庭裁判所からの呼び出し状が届く。外はまだ少し寒い冬の面影を残し、吐く息の白さは一刻も早い春の到来を期待すると共に昨年度という過去に秘められた万感の思いを表すように自らを切なくさせる。 移り行く気節と同じく人間という生命も前に進む事しか出来ないのだろうか。無論過去に戻る事など出来よう筈もないのだが、少々潔癖な英和としてはたった一つの汚点がまるでその人生に土をつけたかのような大きな波紋となって何時までも圧し掛かって来るように感じずにはいられない。 この白い吐息のように人の心を真っ白にする事など所詮は不可能なのだろうか。それこそ生まれたばかりの赤子にでも戻…

  • 汐の情景 七話

    幼い頃に夢や将来像を訊かれる事はよくあると思えるが、英和が夢見ていたものとは一体何だったのだろう。 思い起こしてもこれといったものは浮かんで来ない。強いて言えばバスや電車、船の運転手に、野球やサッカー選手などの如何にも男子が謳いそうな定番の夢を発表していた覚えはある。でもその何れもが本気で抱いていた訳でもなく、あくまでも惰性で口にした余りにも漠然とした夢であった。 無気力無関心だった彼に元々夢や目標などは皆無だったのかもしれないし、それを持たなければいけないような概念的な風潮自体に疑いを秘めていた可能性もある。 それがここに来てとても人前で堂々と語る事は出来ないであろう、夢と呼ぶには浅ましく不…

  • 汐の情景 六話

    翌日も晴天だった。まだ少し眠気が残る英和ではあったが早朝の肌寒さはその身体に程好い刺激を与え、吸い込む空気は何時になく新鮮に感じる。 日も昇らない静寂に包まれた街並みに人影などは無いに等しく、車さえも殆ど走っていない状況は英和が乗る自転車を普段の何倍もの速さですいすい移動させる。そうなれば信号などを守る筈もなく、何の障壁も感じられない彼の心は自由を掴んだように小躍りし開放感に充たされていたのだった。 家からの距離はちょうど1kmぐらいだろうか。一瞬にしてバイト先の新聞販売店に辿り着いた英和は店主や皆と軽快に挨拶を交わし、予め段取りされていた広告を折り込んだ山積の新聞の束を専用の自転車の前カゴと…

  • 汐の情景 五話

    景色が人の心に齎す影響力を数字に表す事は不可能と思える。無論そんな必要性などないとも思えるが、自然の情景は言うに及ばず、たとえ人為的なものであっても見惚れてしまうほどの深い感動を覚えてしまう事が人間の性ではなかろうか。 幸か不幸か結局雨までは降らなかったものの、その曇り空は夜にもなれば尚更暗い漆黒の闇を映し出す。深淵に沈む三人の中で唯一美術の才があった康明は、その光景を儚むような切ない表情で眺めていた。 些かの余裕さえもなかったこの現状にあって彼の能力は殊の外際立って見える。英和がそれに気付いた理由はそれこそ語るまでもないこれまでの付き合いで知り得た康明の為人と、互いに一筋の光を見出したような…

  • 汐の情景 四話

    天為とも呼べる気象が思いも依らぬ意思表示をする事は往々にしてあるだろう。正に小春日和であったここ数日の穏やかな気候が俄かに曇り始めたのは何かの兆しを示唆するものなのだろうか。 とはいえ雨や嵐でもないこの現状は憂慮するにも及ばず、快活に過ごす皆の様子は決して卑屈さを表してはいない。だがその精神にも無論完全性などは保障されず、常に何かを警戒したがる英和のような繊細な人物の神経は、この薄曇りの空模様にこそ言い知れぬ不安を抱くのだった。 この日も気が進まないまでも一応登校した彼は、相変わらず同級生達の輪の中には入って行こうとせず孤高を決め込んでいた。内面的にかなり潔癖であった彼は既に周りから敬遠される…

  • 汐の情景 三話

    地元の者ばかりで形成されている公立中学と違い、色んな地域の者が通う高校は柵がないという点では幾分気楽な感じがする。 それまではどちらかと言えば自分に固執し過ぎていたような英和も羽を伸ばすといっては大袈裟だが、比較的自由奔放に高校生活を送っていたのだった。 とはいえ相変わらず団体行動が嫌いな彼は自ら輪の中に入って行こうとはせず、高々数人、或いは一人だけで行動する事が多く、恋人は疎かこれといった友人も作らないその様は他者から見れば孤独と戯れているように映っていたかもしれない。 今日もまた退屈な授業が始まる。1時間目から6時間目、放課後の部活動ときっちりとした時間割の下に一日の行程が組まれている学校…

  • 汐の情景 二話

    一緒に銭湯に行こうと提案して来た義久という男は英和に輪をかけて大人しい性格で、恐らくは喧嘩など一度たりともした事がないであろう平和主義に徹する信条は今の時代には敬服に値するものかもしれない。 それを証拠に英和とは保育所からの付き合いであったにも関わらず口論をした事すらないほどだった。でも誰にでも話を合わせられるような器用な人物でもなく、彼なりの拘りがあった事は言うまでもない。 当時はまだ銭湯が選ぶほど多く存在しており何処へ行っても良かったのだが、二人は家から一番近くにあった大藤湯に行く事にした。この店は比較的客が少なく、何時も悠々と風呂に浸かる事が出来、一目を気にせず色んな話に花を咲かせる二人…

  • 汐(しお)の情景 一話

    一章 秋の夕暮れ時に吹き付ける少し冷たい海風は頬に心地よい刺激を与えてくれる。遙か彼方に佇む真っ直ぐな水平線と、薄っすらと覗く美しい稜線は幻想的に映る。 細めた目で遠くを眺めながら黄昏れていると自ずと切ない気持ちになり、向こう岸に見える淡路島はまるで異国のようにも思えて来るのだが、明石海峡大橋を渡る車とそれをも追い越さんばかりに疾風の如く飛び行く鴎の姿には現実と幻の世界を結ぶ魔法のような力を感じなくもない。 陽が沈み切る前の赤みを帯びた満潮時の海原は穏やかな波の中にも速い潮の流れを以て繊細な水面の動きを悟らせてはくれない。その上を悠然と泳ぐ船は遅いスピードながらも確実に進んでいて、消え行くまで…

  • バス旅シリーズは面白い

    人知れず 秋を儚む 天意かな(笑) 真に春秋の短さを感じているのは人間よりも寧ろ天、自然であるような気もしないではないのですが、実際にはどうなのでしょうか。 皆様お久しぶりです。ようやく落ち着いたのでまたブログに復帰しようと思います。 宜しくお願いします^^ 今日は自分が大好きな「元祖ローカル路線バス乗り継ぎの旅」を始め「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」や、「太川蛭子の旅バラ」、「路線バスvs鉄道」、「路線バス陣取り合戦」等、旅バラ、水バラ、一連のバス旅シリーズについての感想を綴って行きたいと思います。 元祖ローカル路線バス乗り継ぎの旅 結論から言うとやはりこれが一番ですね。蛭子さんのキャラク…

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