朝、まだ早い時間帯にチョルとミエは向かい合っていた。突然現れたチョルに、ミエは驚きを隠せない。「え・・?」「な・・何?てかなんでこんな朝早く来てんの?週番でもないのに・・」もっともなツッコミをされ、幾分緊張するチョル。どもりながら言葉を紡ぐ。「あ・・そ・・その・・」ミエの方にもその緊張が伝わってくる。「え?その?・・その何?」「そ・・」「そ?」チョルは吹っ切れたかのように顔を上げると、そのままズンズンとミエの方に向かってきた。「それ、俺が持ってやるよ、ほら」「え?いや別にいいよ!」「一人で持てるし!そんな重くないし!こんなのなんでもな〜い」ミエはそう言って、小走りで走った。顔が燃えるように熱い。なんでもない・・なんでもないのに・・!今は顔合わすのも・・しかしそうは問屋が下ろさなかった。チョルは大魔王オーラ...第八十七話③
[そして誕生日当日]の、朝。見覚えのあるこのミエ・・笑第八十二話ぶりに出てきたこのミエ。キス事件の時に傷ついた、上唇をめくる。ミエの脳裏に、Sクラスの面々から言われたことが思い浮かんだ。「鼻くそ!豆!」「クソガキみたいに駄々こねれば思い通りになるとでも思ってんの」「ファン・ミエのこと妹とでも思ってんの?」チョルにとって自分は、やはり「豆でありクソガキであり妹」なのだろうか・・?モ・ジンソプが言う通り、「まだ恋愛するには幼すぎる」のだろうか・・?もう一度、まじまじと鏡を見つめてみる。こんな子供のような自分でも、偶然とはいえ、男子とキスまでしたのだから・・ ミエは自分のその顔に耐えられず、まだ大分早いが学校へと向かった。 ドサッしん・・・全てにイライラするお年頃。[16歳のファン・ミエにとって、この気持ちを...第八十七話②
[1999年6月の、とある日——]遠い宇宙の片隅にある星、地球のそのまた片隅で、キム・チョルはここ数日の出来事を反芻していた。[ただ・・] [ビデオを観ようとしただけなのに][大きなアクシデントを起こしてしまった]この”キス事件”が起こった[初日]のチョルは、こんな感じだった。あの衝撃の瞬間は、このようなイメージだ。ガチッ!あの衝撃の出来事に、一応名前があるということも知っていた。チョルは改めて、心の中で叫ぶ。キス?![ファン・ミエと・・]しかも相手があの子供のようなファン・ミエ・・[俺が?]じわじわと、その影響の大きさがチョルを覆った。[いやちょっと、ちょっと待て][だから俺が・・俺が・・本当に・・] [ファン・ミエと???]チョルの脳裏に浮かぶファンミエは、どう見ても小学生——・・!恐ろしい子・・!チ...第八十七話①
立ち上がったミエの心の中は、得も言われぬ感情で渦巻いていた。顔がみるみる赤くなり、小刻みに震えている。[あ・・!]そんなミエを見て、目を丸くしているのはキム・チョルである。先ほどまでとあまりにも違うミエの態度に、ただただ面を食らわす。ハッふと周りを見ると、Sクラスの面々が皆こっちを見ていた。少し我に返るミエ。しかし胸中の複雑さは増していくばかり。[何だ]「あ〜ああ〜そうだったんだ〜」 「明日?どうだろ?お菓子とか色々買ってくの?私お金ないんだけど」「え?そういうのは別に・・」「あの・・その・・だから・・私明日は・・その・・なんだっけな・・そう!約束!約束があるの!」 「は?約束?約束って?行けるって言ったじゃねーかよ・・」 ミエは動揺で回らなくなっている頭をフル回転させた。「あ・・だから・・モ・・・」「え...第八十六話③
願いが叶うという飛行機を見た後、チョルに会えた。後ろに倒れそうになるミエを、チョルが支える。「前からやってるそれ、一体何なんだ?なんで飛行機ばっか見てんだよ」「・・じゃなくて」チョルはそう言って居住まいを正した。周りを見るとみんながこちらを見てクスクスと笑っている。チョルは若干小さめの声でミエに話し掛ける。「・・お前」「もし・・」来る!とミエは目を見開いた。「明日時間あるなら・・・」「あるっ!」「あるっ!あるよっ」キラキラした瞳でそう言うミエに、チョルは少し面食らう・・。 <えっ?何だって?> 「あ・・」「そうか・・よかった」ゆっくりと話すチョルから目が離せないミエ。心臓がドクドクと大きく脈を打つ。「それじゃあ・・」なに?なになに?なんで緊張してるの?緊張しているのは自分かチョルか、境目が曖昧になってくる...第八十六話②
「おいチョル!先生が呼んでっぞ!」チョルとミエの空間に突然入り込んできたベ・ホンギュ。ミエは思わずホンギュを睨んだ。あ・・チョルは若干拍子抜けをしたような気持ちで、ミエに背を向ける。とりあえず、ここはホンギュについて行くのが先決だ。「行くぞ」[えっ・・・]ミエは戸惑ったが、また次のタイミングがあるだろうとも思っていた。しかし全授業が終わるまで、そのタイミングはやってこなかった・・もとい、ホンギュが徹底的に阻止していた。「なぁ、見せたいもんあんだよ!」「おい!ちょっと手伝ってくれよ!」「一緒にいかなきゃなんだって!すぐすぐ!」「あ・・」[えっ・・]えええ?? 疑問符の後に、沸々とした怒りが湧いてきた。ミエは授業が終わった頃合いを見計らって、ベホンギュを非常階段横に呼び出す。 ダンッ!「うおっ・・びっくり・・...第八十六話①
ミエはプリプリと怒りながら、ジョン・ソラを探した。もう我慢できない!いつ私が駄々こねた?! 自分は物騒なことベラベラ言うくせに・・ そして非常階段を降りようとしたその時、あの三人組がいるのに気がついた。 ミエは気付かれないようにそっと彼らを覗いた。 会話の端々が漏れ聞こえる。 「じゃあ明日・・」「誕生日・・」「プレゼントは・・」 「好きなもの・・」「あーいらねぇって」 「ファン・ミエは・・・」 え? チョルの口から自分の名前が出たのを聞いて、少し身を乗り出すミエ。 ホンギュは面白くなさそうに会話を遮った。 「あの豆の話はやめろって!つーか今日サッカーすんの?しねーの?」 「するよ」 フン チラッ・・ 「・・・」 ミエはホンギュのことをじっと見ていた。 「誕生日祝い」に対して、気まずそうにす...第八十五話④
「とりあえず俺とデートしよっか?」モ・ジンソプと別れた後も、その言葉がずっとミエの脳裏を回っている。元幼稚園バスの面影が残る塾のワゴンに乗っている今も尚。[デート・・]デート??とにかくデートのイメージが全く掴めないミエである。ワゴンの外では「幼稚園だってー」と子供たちが笑っている。頭おかしいんじゃないのマジで・・ 受験を控えてるせいか、みんなだんだんおかしくなってる気がする・・ やっぱりからかわれてるんだよね?ミエが噴き出した水を被ったジンソプは、引き攣る笑顔で「気が変わったらいつでも連絡してね」と言って去っていった。するわけないじゃん、と思いながら外を見ると、ふと見知った人がいた。あ!ヨンヒだ!今日は塾来るかな?気づくかなと思って窓を叩くも、ほどなく車は出発した。ミエはヨンヒの残像を思い浮かべる。ヨン...第八十五話③
チョルはまだ一人で道を歩いていた。視線の先に、ヘッドフォンを付けた見覚えのある後ろ姿がある。ミエの名札を奪ったという、ヘッドフォンのあいつ。その男が角を曲がった。チョルは気配をギリギリまで消して、その男が角を曲がった途端、猛ダッシュで追いかけた。さて場面は再びミエ&ジンソプ。ジンソプはミエに、”キム・チョルがミエのことを理性的に好きになるか、確認してみるかしてみないか”という問いを投げかけた。 「どうする?」様々な駆け引きに心を揺さぶられているミエだが、まだ靡かずに腕を組んだ。「フン!ふざけてんでしょ?」「違うけど・・」 「俺は君に対しては借りがあるから、こうして手助けしてあげようとしてるのに。 プライド曲げれなくてこんなチャンス逃すの?」 男女関係の専門家は、冷静に恋愛超初心者に畳み掛ける。 「本当に全...第八十五話②
かくしてファン・ミエとモ・ジンソプは街へ出た。トッポギやおでんなどが食べられる軽食屋に入る。「うわぁ〜これが携帯というものかぁ〜」「ユンヒのとはまた違うや!」ミエが手にする新しい機種の携帯電話は、もちろんモ・ジンソプの物だ。物珍しさにテンションが上がるミエ。「これいくらくらいすんの?」「XX万ウォン」さらりとそう口にしたジンソプの言葉に、思わずミエは目が点である。「へ・・?」「誕生日、欲しいものなんでも言いなさい」と父は言ってくれたけれど、ミエは悟った。誕プレで頼もうと思ってたけど絶対無理そうだな・・と・・。 「あ!メール?!メール来た!」不意に震えたそれを、ジンソプに返すミエ。なんとなく、この場の主導権はミエにありそうだ。「わ〜こんな風に名前が出るんだね。もうポケベルは要らなくなるねー。てか友達多っ」「...第八十五話①
放課後、モ・ジンソプは一人で歩いていた。鼻歌を歌いながら、携帯電話に目を落とす。震えるメールに目を落とすと、若干眉を顰めた。小さく舌打ちする。「よぉジンソプ!こっち!」「おぉ」「お待たせ」と仲間の元に駆け寄ろうとしたその瞬間、低い声が路地から響いた。「ちょっと顔貸しなァ」驚きのあまり、ずるっと足を滑らせたジンソプ。突然しゃがみ込んだ彼を見て、仲間たちが不思議そうに声をかけた。「おい、いきなりどうした?」「足つったか?」「いや・・」ミエは彼を見下ろしながら言う。「二人で何の話をしてたのかなぁ〜?」「・・・・」ジンソプはニヤッと笑った後、遠くの仲間たちに声を掛けた。「おいジンソプ!何してんだ?行かねーのか?」「あ、先行っといて。俺他に約束あったんだった」 ジンソプがそう言うと、仲間たちは分かったと言って去っ...第八十四話⑤
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