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  • うの華4 22

    早く、早く…。遂には焦れて、私はうんうん、もう、と声に出すと、玄関で地団駄段を踏んだ。そんな私の様子に、店中にいた清ちゃんの母はその異変に気付いた様だ。彼女はこちらに背を向けた儘、振り向きもせずしんとして佇んでいたが、背中越しに頃合いを伺うと、そそっと階段に登り口に移動した。「向こうさんに早く来いって。」そう言っておくれ、と彼女は憚る様な言い方で2階に声掛けした。2階からは何かしら返事があったのだろう、苛ついた雰囲気に変わった彼女は、次にきっとした感じで上を見上げると、「本格的におかしくなって来てる。」、「私と変わって。」、等、上を見上げる顔付きにも懇願する様子が見られた。私はと言うと、そんな清ちゃんの母の様子を垣間見ながら自分の抱え込んでいる問題に悩み続けていた。う〜ん、う〜ん…。頭を抱え込んで唸る私の姿に、...うの華422

  • うの華4 21

    私はそんな彼女の逡巡として元気を無くした姿の向こう、壁に有るだろう、何時もそこに存在している筈の壁時計を見遣った。そこには機嫌を損じた彼女に対する私の出すべき答えが有るのだ。玄関にいる訪問者の子供の視線に、この家の子の母は背後の時計を振り返った。彼女はおやっと思った。時間が…。そう呟いた彼女は店の時計が止まっていることに気付いた。時計の長針が先ほど見た時と寸分違わぬ同じ位置にあったからだ。じゃあ、彼女は思った。『この時計は違っているんだ。』。そう考えると、彼女はきちんとした答えの出せ無い問い掛けをこの他所の家の子にした事だと、俄に罪悪感さえ湧いて来た。如何しよう、こんな事問い掛けるのでは無かった。と後悔しても今更始まら無い彼女だった。「口から出した言葉は戻ら無い。」気不味くなったその場を取り繕う様に、彼女は口に...うの華421

  • うの華4 20

    時間?、私はキョトンとした。私にはおばさんの言わんとする所が分から無かった。そうして私達2人の意思疎通が急に絶たれた事に戸惑っていた。何だろう、今までおばさんと気持が通じ合っていたと思っていたのに…。私は如何にも他人だという様に鼻白んだ素振りで、平然と固まった白い顔付きの目の前のおばさんの顔を見上げた。何か言葉を発したくても何と言って良いのかわから無い。すると『時間』私の心の中におばさんの言った一単語がクローズアップされて来た。「時間…」。『時間…、…そう言えばさっきおばさんは、時間が何とかと言っていたっけ。』私は時間時間と、この言葉を脳裏に繰り返した。私はパラパラと自分の記憶を早送りする事で今日ここに来てからの私達2人の言動についてを翻った。そうする事でその脳裏に浮かぶ映像を鑑みてみた。すると、「今何時かな?...うの華420

  • うの華4 19

    「おや、智ちゃん笑ったね。」清ちゃんの母の言葉に私は驚いた。自分の母さえ私の感情には無頓着、てんで気付かないというのに、あれえと、私は半ば口を開いて目の前のおばさんを見上げた。今度はおばさんがニコッと目を笑わせた。おやっと私は思った。『おばさんは喜んでいる。』私はおばさんの目に湛えられた柔和な感情をこう読み取った。このおばさんは清ちゃんのお母さん、私の実のお母さんでは無いのに。私とこの心の交流をおばさんも喜んでいるのだと、私はこの時感じ取った。『不思議だ。』私は思った。私はかつて母とこうなった事が無い。今の場面の様な気持ちの交流を感じる様な母子関係になった事が無かった。私にとって自分の母はあれせよこれせよと指図ばかりする人だったのだ。穏やかに慈しむ、そんな瞳で微笑まれた事等、私の記憶の中にいる母には皆無だった。...うの華419

  • うの華4 14

  • 謹賀新年

    昨年はお世話になりました。今年もよろしくお願い致します。皆様のご健康とご多幸を祈念致しております。😊謹賀新年

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