いろいろな方が温存されている大切な思い出や心のかたちをいただきました。 これらの宝物を、時折、世界の景観を背景とした動画も織り交ぜて、旅行が難しい状況でも、バーチャル世界旅行感覚で満喫していただきたいと思います。
あの日、あの街に行っていなければ事故に遭うこともなかったのに。 あと、五分早く、倒壊する建物から避難していたら今頃、まだ元気に生きていたはずなのに。 などと後に立たぬ後悔を人は繰り返す。 それとはまた逆に、あと、十分、発見が遅ければ車と爆風と一緒に飛び散ってい...
「六月十二日、17時からヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテルの某間にて五年ぶりの同窓会開催」 この案内をメールをもらったのはまだ外国に居る時であった。 それほど頻繁に日本に帰国はしないが、この年は偶然、六月の初めの帰国を考えていた。 同窓会、 日本を離れて...
友人の八重子の話だ。 最近の彼女は、心なしか化粧が濃くなっている。 「麻耶、私、素敵な人に誘われたの」 彼女は、私にそっと打ち明けた。 ここは外国なので日本語で公言してもわかる人は滅多にいないと思うが。 誘われた、という言葉自体には問題はないので隠すことで...
「今晩は大和警察署で一泊してもらうことになると思いますが」 まったく予期もしていなかった言葉が守衛の一人の口から飛び出した。 「警察署!?どうしてですか?」 一緒に居た夏鈴が驚愕のあまり叫んだ。 眠気のためか、朦朧としていた私の脳であったが、「警察署」の三文字に...
とても生真面目な米国人女性が、私の以前の勤務先にいた。 彼女の年齢は半世紀を数年越えたというところであろうか。 彼女は、誰かが周りで大声で話をしていると「 Shut up! 」と厳しく注意する。注意をされた人たちがお互いに顔を見合わせたり、肩をすくめているのが私...
郊外の団地で奏でられるスライド・ギターの音色、しばしの間、癒された心の傷
サルトルとボーヴォワールの旅行記を読んでいた、私の座ったソファの傍らで、スライド・ギターを弾いている男がいた。 休憩なしに弾いている。 男の背中からは夕陽が昇りつつあった。 「今日は何故か気分が乗ってるんだ」、と弾き始めた時刻から既に六時間が経過している。 ...
「ねえ麻耶、一人より二人の方が淋しい時ってない?」 突然、友人の美樹が電話をしてきて、そう切り出した。 奇妙なことであるが、電話を手放すことのない現代人は、少なくとも私の友人達は、滅多に電話などしない。 かりに誰かが電話をして来た場合は、まず八割はテレフォンセールス、...
場末(ばすえ)という言葉に何故か惹かれる。 何故だろう。 そこでは、人生の酸いも甘いも嚙み分けた人たちが流れ着いて、懸命に生きていらっしゃるという印象がある。 勝手な印象を造りあげてしまっているのなら申し訳ない。 演歌などの影響かもしれない。 ある年、思い立って...
「誰かが貴方の後ろで両手を振ってますよ」 スーパーマーケットで買い物をしている時のことだった。 目の前で品物を籠に入れていた買い物客にそう伝えられた。 振り向いたところに、昔の同僚、デイビッドが立っていた。 同僚と言っても、私の勤め先の繁忙期に一時的に契約していたコ...
「長距離バスの最後列にはくれぐれも座らないようにね」 と、2020年の現代では、TripAdvisor 等でどなたかが警告されているかもしれない。しかし、十数年前にはそのような気が利いたサービスはなかった。 私がこのことをアメリカ人の友人から聞かされたのは、長距離バスの最後...
「今朝、最愛のララが長い闘病のすえ、永眠した」 「私達家族に囲まれ、とても幸せそうな笑顔で逝った」 ある昼下がり、ボストンに住む知り合いのアンディからメールが来た。 ボストン時間はストックホルムよりも遅い。 ララは、私が知っている限り、ずっと乳癌...
以前の勤務先に梨々花ちゃんという同僚がいた。 彼女は、鹿児島県出身であるためか、顔の彫りが深く、そのうえに色白で、まつ毛の長い情熱的な黒い瞳が、社内の多くの男性を魅了していた。 さらに、ボリュームのある長い黒髪をデジタルパーマで巻いており、すれ違った人がハッと振り向...
ふと、タクシーに荷物を積んでいる運転手に気が取られた、昔の男であった
今夜は風の気配がまったく感じられなかった。 私は、鏡の如く対岸を映し出す湖面を眺めながら帰途を急いでいた。 しかし、アパートの一歩手前に差し掛かった時、ふと、足が止まった。 タクシーに荷物を積んでいる長い黒髪の男の顔が目に入ったからだ。草刈正...
「ブログリーダー」を活用して、湖畔の麻耶さんをフォローしませんか?