唯幻論始末記
岸田秀,2019,唯幻論始末記──わたしはなぜ唯幻論を唱えたのか,いそっぷ社.(6.30.23)岸田秀さんの『ものぐさ精神分析』シリーズは、高校生のときに夢中になって読んだ。その何巻目かの本の帯に「快刀乱麻を断つごとく」とあったのを記憶しているが、当時、そのスピード感あふれるスリリングな筆致と、国家をも精神分析の対象とする独創的な発想とに魅了されたものだ。その岸田さん、これは最後の著作だそうで、これは読まないわけにはいかない。さすがに歳をとられたせいか、かつての畳みかけるような筆致はかげをひそめてはいるが、唯幻論のおおもととなった個人史が詳細に書かれていて、たいへん興味深かった。岸田唯幻論の入門書としておおいにお勧めしたい。一九七七年に『ものぐさ精神分析』として出版されて以来、熱狂的な支持と一部の反対・批...唯幻論始末記
2023/06/30 20:02