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  • 彼女は雨の日の夕暮れみたいで

    昼休みに会社を中抜けした私は、日比谷のカフェで男を待っていた。 待ち合わせの時間にはまだ早かったけれど、少しでもアポイントを確実なものにしたいと思った。元号が令和になったというのに、薄暗い店内には銀ブラよろしく昭和と思しき歌謡曲が流れレトロな雰囲気を演出していた。 そして今さらになって、「どうしてオレはこんなところにいるのだろう。」という根本的な疑問が頭をもたげてきた。 私はこの一件に多大な労力を払ってきた。一銭の金にもならないばかりか、時間と私の有象無象を尻の穴から濁濁と無為へと流出させる日々を送っている。しかし私にはこうする他なかった。 この辺りの会社は大企業ばかりだから、テレワークを導入…

  • 空に舞う

    東京・丸の内。 近代的なガラス張りのビル群の一角に、タイル張り旧耐震のビルが建て替えもされずに鎮座している。都市開発で遠からず取り壊される予定のこのビルには多数の企業が入居している。 あたかもそこで働いているかのような顔で正面玄関から入り、どこのメーカーとも判らないやたらと遅い古びたエレベータに乗り込み12階へ行く。到着するまでに、同乗者は全員途中の階で降りてしまう。12階へと到着しドアが開くと、薄暗く電灯さえついていない不気味な廊下が広がっている。折り畳み式のテーブルやチェアが放置されておりどうやら資材置き場となっている様子の廊下を進むと一番奥に金属製の扉があり、何故か、いつも鍵が掛かってい…

  • 49日は祈ることにした。

    「誕生日までに死ぬ。」と宣言した親友は、その言葉どおり逝ってしまった。 3月17日、それが親友の誕生日だ。 数年前のその日、私たちは牡蠣の食べ放題にでかけた。ふたりとも牡蠣が大好物だった。 今はもう潰れてしまったけれど神田駅の近くにあるおせっかい屋弐号店という良心的な居酒屋で、私はそこの常連だった。 牡蠣を焼きながら日本酒をのみ、 「あ、そういえば今日誕生日だったでしょ。」 とそういうわざとらしいことを言って彼女に干芋の束を手渡した。干芋は親友の大好物だ。 前日、銀座にある茨城県の物産展で名産の干芋を全種類購入していた。といっても数千円するかしないか程度のものだ、何しろ干芋なので。 しかし彼女…

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