荼枳尼天関連の論文を読んでみたが、なかなか興味深かった。 タイトル「吒枳尼天と『法華経』をめぐる儀礼の言説」 有賀夏紀 荼枳尼天は、現世利益につよい衆生に近しい「お稲荷さま」なので、例えば仏教の高度な理論体系からは程遠い存在であるという印象を持たれている方は多いように思う。 荼枳尼天は、密教の「大日経疏(大日経の注釈書)」という書物の中で「死者の心臓を食らう」とされ、胎蔵曼荼羅では人間の手足を持つ夜叉の姿で描かれる。 このような姿は、仏教の悟りからは一番遠い存在として表現してるかに見える。しかしだからこそ人間の心臓を食べるというもっとも不浄な行為が人々を悟りに向かわせる方便となるよう緻密に理論…