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  • 鮎返しの滝 その21

    マネージャーは柵のロープに手を掛けると、身をかがめてくぐり抜け、白装束の方に近づいて行った。 一番前に立つ大柄な男の前まで進むと、何やら声をかけて話を始める。 ワーポンは呆れた顔で振り返り、後ろ手を組んでトボトボとボクらの方に戻ってきた。「いったいどな

  • 鮎返しの滝 その20

    「ちょっと待ってやしてー」 上ずった男の紀州弁はどこかで聞き覚えのある声だ。 現れたのは釣りキチさん子のマネージャーだった。「あんた、遅いやないの」 と、さん子が口を尖らせる。「これでも急いで来たんやして」 と、マネージャーは駆け寄ると両ひざに手を置いて

  • 鮎返しの滝 その19

    追いついたボクらの目に飛び込んできたのは、おびただしい数の大小の立て看板だ。 あるものは木に吊るされ、あるものは木に縛り付けられている。「なんですか。この立ち入り禁止フダラっちゅーのは?」 ターポンらが怪訝そうに首をかしげる。 振り返った一人が「例の宗

  • 鮎返しの滝 その18

    向かいの山には今にも崩れるかという様な剝き出しの奇岩が天をついている。 その一角が縦に裂けて途中から勢いのある水流が滔々と吹き出していた。 水流は周囲に張り付いた雑木を飛沫でくゆらせながら遥か地底へと吸い込まれていく。 何処からか現れたトンビに誘われる

  • 鮎返しの滝 その17

    金屋町は有田川の最下流部にある。ダム上からはカブで来れば一時間はかかるだろう。ブドウ園に差し掛かると河原が開けて多くの鮎釣りの竿が並んでいた。車列は明恵の道の駅の信号を右手に曲がる。15分ほど進むと橋があり欄干に早月谷川橋と書かれていた。道が狭くなりいよ

  • 鮎返しの滝 その16

     「ああ、日本一高い那智の滝の次に高いからってそう呼ばれているんやして」 荷台の男の一人が答えた。「しかしよぉ、あそこに行ったとなると難儀やしょなぁ」 荷台から降りていた体格のいい中年男が腕組みをする。「なんかあるんでっか?」 ワーポンの問いに今度は荷台

  • 鮎返しの滝 その15

    「そうや、鮎返しの滝や。次の滝も鮎返しの滝やっておばあちゃんはそう言うてたわして」 真一がじっちゃんから聞いた言葉を話すと皆一様に黙った。 「次の滝って砂防堰堤のことかしら。それともこの奥にまだ滝があるのかしら」 と紀美代が首をひねる。「ないない、あるか

  • 鮎返しの滝 その14

     荷台に載っていた体格のいい中年男が飛び降りて真一を見下ろす。「真ボウ、上北さんはなんか言いよったか?」 真一は唇を噛んで俯いたままだ。 紀美代が膝をかがめて幼い子でも諭すように真一に寄り添う。「真一、しっかり思い出してちゃんと順番に話してみなさい」 し

  • 鮎返しの滝 その13

    二川ダムを過ぎると雨粒がフロントガラスに落ちてきた。 遠くの山が白くかすんでいる。 捜索隊はさすがにダム下にまでは来ていないようだ。 四村川に入ると急に雨は上がって陽が射してきた。 集落が途絶えて少し道が狭くなり登り勾配がきつくなる。 ボクが鮎釣りに来

  • 鮎返しの滝 その13

    二川ダムを過ぎると雨粒がフロントガラスに落ちてきた。 遠くの山が白くかすんでいる。 捜索隊はさすがにダム下にまでは来ていないようだ。 四村川に入ると急に雨は上がって陽が射してきた。 集落が途絶えて少し道が狭くなり登り勾配がきつくなる。 ボクが鮎釣りに来

  • 鮎返しの滝 その12

    「じっちゃんはいつも鮎返しの滝の話をしてくれてた。ちょっと遠いけど時々一人でカブに乗って行っているって。危ないとこやから真ちゃんはまだ行ったらあかんて」 真一にはその場所がどこなのかはわからない。「実は今朝早くあのお爺さんがカブに乗って下流の方に走ってい

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