世界の終わり
* 暗がりの道で迷子にならぬようきみの手を引く幽霊の声 時にまたひとり裁かれながら立つ図書館まえの駅の群衆 チョコレートバー淋しく齧る午后の陽よいまだなにも了解せず 秋の水光れるなかを走り来て憂いを語る少年もゐる ジューサーのなかの果肉が踊りだす夜勤終わりの朝の食卓 声ならばここにあるぞといいかえす夜の隧道終わりが見えず 塩を甞める いつかの海をおもいたる寂しさばかりわれに与うる ああ、いつも≪城よ 季節よ≫と口にする秋のさむさがなんだかやさしい 歯痛とて季節の比喩か朝時にわれを慰むわれの手のひら 猫すらもゐない公園 遊具らのかげが鋭く光るゆうぐれ ひとびとの顔うらがえる陽のなかでいまだだれか…
2023/03/22 13:45