「痛み」のことばが「歌」を生む⑶

「痛み」のことばが「歌」を生む⑶

1963(昭和38)年第14回「NHK紅白歌合戦」の視聴率81.4%という驚異的な数字が2023(令和5)年第74回では29.0%に<大暴落>した。その原因は一つではなく幾つかの要因が複合的に重なり合った結果だが、高度経済成長期による社会変動とそれに伴う日本人の日常生活および精神の変容が主因である。60年前は東京オリンピックの開催年、白黒テレビがカラー受像機に変わる時期だったのだが、それを購入できないでいる国民もいたことを考えると、「81.4%」という数字はまさに年末の国民的行事に違いなかった。師走の慌ただしさを乗り越えた大晦日、夜9時になると家族全員がお茶の間に集まりテレビの画面を食い入るように見つめる。紅組・白組の歌手たちの晴れ姿、一世一代の歌唱に老いも若きも引き込まれ、『いい歌だ』『新人だがうまいね...「痛み」のことばが「歌」を生む⑶