「痛み」のことばが「歌」を生む⑵

「痛み」のことばが「歌」を生む⑵

貧困はいつの時代にもあるが、経済的困窮と心の貧しさは一体のものではない。(前述の通り)目指すものや自分のなすべきことのために<おでん種を売り歩いたり><質屋に住み込み奉公をしたりする>青年、彼らに理解を示し手を差し伸べる周囲の大人、そこには心の豊かさがあった。なぜか。米軍による空襲・無差別攻撃によって焦土と化した国土。敗戦がもたらした<衣食住>という生きる基盤の確保に必死だった時代。「ゼロからのスタート」は国民全体が共有していた状況だった。だからこそ、「痛み」を分かち合い、希望を明日に託す思いが漲(みなぎ)っていたのだ。敗戦から10年ほど経つと、朝鮮戦争による軍需景気をきっかけに経済復興期を迎え、ラジオに加えてテレビ放送が各家庭に浸透していった。やがて年末の国民的行事ともなった「NHK紅白歌合戦」が定着す...「痛み」のことばが「歌」を生む⑵