いとこたちの悪だくみ
「だから知らないって、盗んでなんかいないって」何度も言ってるのに、いとこたちは信じてくれなかった。ナエちゃんの小さなおはじきがなくなった。僕が隠した、盗んだ、いとこたちはそう決めつけて、僕を犯人扱いした。小さくてきれいなガラスの、ピンクの波型の線が入ったおはじきは、確かに僕を魅了した。それは明治時代の工芸品だった。その美術品としての完成度の高さは、おもちゃの域をはるかに超えたものがあった。そこに内臓する美は強い輝ち、じっと見つめていると、その輝きの中を遊泳するがごとき気分になる。これこそ一流の美術品を見たり触ったりする醍醐味だ。そこに無情の喜びを感じる僕が、年下のいとこたちとのカルタ遊びをなおざりにして、うっとりと手のひらのおはじきに見入ってしまったとしても、何ら不思議はない。いとこたちは、僕がきのうの夕...いとこたちの悪だくみ
2025/02/27 20:55