青い背表紙の安部公房の文庫本
『突然ジーコのように』は作品集に入れなかったラジオドラマである。高校二年生の真知のモノローグから始まる。*真知(語り)「寝転がって、安部公房の『飛ぶ男』を読む。氷雨本町二丁目四番地の上空を人間そっくりな物体が南西方向に滑走していった。時速二、三キロ、読み間違いじゃないかと読み返す。歩くより遅いスピードで男は飛んでいる。飛ぶ、スーパーマン、ピーターパン、それは人の夢だ。だが、歩くより、遅く飛ぶとは、それでも、夢だろうか。夢でも、痛ましい夢だと思う。何かを左手に持ち、耳に当てがっている。唇の動きも、誰かに喋りかけてる感じ。携帯電話だ。荒い晒しのパジャマを着て、電話で話しながら、時速二、三キロで飛ぶ。すっごく無防備だ。案の定、不眠症の女に空気銃で撃たれた。深く考えない。漫画を読むように安部公房を読む。それが結構楽しい...青い背表紙の安部公房の文庫本
2021/12/26 15:32