黒澤明の『夢』を見て
黒澤明の『夢』を見て金澤ひろあき夢は不条理なものであるから、美しいものも恐ろしいものも、不可解なものも含んでいる。かと思うと、現実が出てくるものもある。古い映画だが、黒澤明の『夢』を見直した。「こんな夢を見た」で始まる七つの話をつないだオムニバスである。狐の嫁入りを見て、狐を怒らせた話や桃の精に会う話。文明を批判・拒否して生活する水車のある村などは、映像が美しく何回も見たくなる。と同時に重いテーマもある。東京にいる市民が爆発した原発の放射線に追い詰められて行く話、核戦争後、生き残った人間が鬼になる話など、世界を破滅させる危険を予見している。これらの重い話の後で、「水車のある村」の美しい明るい生き方をラストに置く。どんなに苦しくとも、最後に救いや希望を見出したいという願いもあるのだろうか。確かに、夢と違い俳...黒澤明の『夢』を見て
2023/05/31 12:57