『猿蓑』の編集についてその2「しぐれ」金澤ひろあき話を「冬」「夏」に戻してみる。芭蕉や去来、凡兆が新しく見出した美とは何だったのだろうか。『猿蓑』の名のもとになった巻頭の芭蕉の発句初しぐれ猿も小蓑をほしげ也連句編の巻頭の去来の発句鳶の羽も刷ぬはつしぐれ冬の到来を思わせる初しぐれ。その中にいる小動物の侘しさを、詠む対象(猿、鳶)の内面に入りこむようにして詠んでいる。「しぐれ」の美を、和歌の世界でとらえていないわけではない。例えば芭蕉が憧れた西行は、『山家集』上冬で多く詠む。夜もすがら惜しげもなく吹く嵐かなわざと時雨の染むる梢を寝覚する人の心を侘びしめて時雨るる音は悲しかりけり宿かこふははその柴の時雨さへ慕ひて染むる初時雨かなここで感じられる美は、しぐれの音の侘しさであったり、時雨によって染められる紅葉、散ら...『猿蓑』の編集についてその2「しぐれ」