あれは確か、西暦2015年の春のことであったか? 吾輩の住まいの隣に、新築の家が建ち、そこへ新たな家族が引っ越してきた。 ある日の午後、その一家が挨拶に訪れた折、吾輩は主人と共に自宅の庭先で散歩をしていた。ちょうど、そのとき、5歳になるという娘と目が合った。 この娘、どうやら大層な動物好きらしい。吾輩を見るや否や、キラキラと目を輝かせ、「カメさん、かわいいね!お名前は?いくつなの?」と問いかけてきた。無論、吾輩は言葉を解するが、それを口にする術を持たぬ。仕方がないので、「シュッシュッ」と鼻を鳴らし、せめてもの挨拶とした。すると、娘はその音を面白がり、さらに吾輩を覗き込む。まるで、千年の昔より現…