市川沙央「ハンチバック」
★市川沙央さんの「ハンチバック」(文學界2023年5月号)を読んだ。第128回文學界新人賞受賞作。★遺伝性の筋肉疾患で人工呼吸器を装着している女性が主人公。背骨も曲がっているので、紙の本を読むことさえ苦労する。両親が残してくれた財産でグループホームを営み、自らもそこで生活している。ワンルームほどの空間が彼女の日常だ。★冒頭のネット用語にちょっと戸惑ったが、面白い作品だった。吸痰や誤嚥性肺炎の描写などは体験者ならではというところか。今の時代らしい略語が随所に使われ、良いテンポだと思う。★「死に向かって壊れるのではない。生きるために壊れる」。考えさせられるところだ。★選評で中村文則さんが書かれているように終盤の部分とそれ以前とのつながりがわかりにくかった。終盤部分はそれはそれで面白いのだが。★さて、ゴールデン...市川沙央「ハンチバック」
2023/04/29 21:37