「ムーンライト・セレナーデ」 「お父ちゃん、入れてくれはった」
小噺をひとつ。乞食の父娘が、右や左の旦那さま、と往来で頭をさげている。親父の方は目が見えない。だから、前に置いた箱の中にお客がおゼゼを放り込むと、娘が「お父ちゃん、入れてくれはった」と教える。すると親父さんが「大きいのか、小さいのか」と尋ねる。金額によって、お礼の言い方が違うわけで、大きな貨幣(おかね)だったら、声を張り上げて「おありがとうございます」というのだ。さて、この子がだんだん大きくなってきた。鬼も十八、番茶も出ばな、お菰さんの娘でも、年ごろになれば野郎が放っておかない。いつのまにかボーイフレンドができたけど、メクラの親父がてんで煩い。娘とボーイフレンドは不自由なランデブーを続けたが、…
2023/11/30 22:37