2018年11月
第一話「深い色の目をした女の子」 18時の閉門を過ぎるとみんな病室に戻る。談話室は24時間空いているが自販機が1台あってその前に6人掛けの机と椅子が1つおいてあるだけでテレビもないから長くいる場所ではない。それでも昼間は老人たちの語り場になっている。しかしそれも18時を過ぎると誰からともなく話を切り上げて各々の病室に戻っていく。 久々に病室を出たので、ついでに談話室にも寄っていこうと思った。 夕暮れのオレンジ色の光が窓から差し込んでリノリウムの冷たい床を暖かく照らしている。中庭から繋がっている長いこの廊下を進んで、突き当りを右に曲がったところにすぐ談話室はある。その談話室の少し奥の病室がぼくの…
木の葉がオレンジや赤に色づく季節。この病室から見える山肌も不格好ではあるが、少しずつ塗り替えられている。「外は随分と寒くなったのだろうか」と思ってひさしぶりに病棟を出ることにした。 小・中学校の近くにあるこの病棟は中庭に遊具があって、休日の昼間は子どもが結構遊びに来る。どの病室からも中庭が見えるようになっていると看護婦の一人が話してくれた。病院に子どもが遊びに来る、というのは可笑しな話だがぼくが今病棟を出ようと思ったのは遊びに来る子どもたちの格好が最近、急に秋らしくなってきたことを見たからだった。 17時過ぎの中庭にはもう子どもたちはいなかった。砂場の横にある背もたれ付きのベンチに腰掛ける。病…
2018年11月
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