真保裕一の『英雄』
◇『英雄』著者:真保裕一2022.9朝日新聞出版刊発端は山藤ホールディングスという大企業の創業者が射殺されるという事件である。資産家の遺産の行方を巡って、残された妻とその息子、先妻の子長男と妹のほか婚外子の存在が明らかになったことで株式の行方によっては会社の存亡にもかかわるという状況が語られる。典型的な遺産相続を巡る争いがテーマかと思わせる。DNA鑑定を経て婚外子の死後認知が成立した。ところが遺産相続争いはそれほど大きな問題ではなく、むしろ山藤ホールディングス創業者山藤英雄の非嫡出子として登場した植松英実が、射殺という衝撃的な形で初めて実の父を知ったことから、父の本当の姿を知りたくて、かつての父の会社関係者、友人などを訪ね回るうちに意外な事実が次々と浮かび上がるところにこの小説の面白さがある。射殺された時...真保裕一の『英雄』
2023/06/26 15:24