「私」の成り立ち
最近は週に二度通うデイサのスキマ時間に、ぶ厚い文庫本の『絶望名言(NHKラジオ深夜便)』を読んでいる。「いいね!」と思える言葉に出会った。「人間って過去の積み重ねでできているわけで、その過去の記憶が自分によってある程度作り変えられているとしたら、もしかすると『自分』というのも、一つの創作物にすぎないですよね」これは、「絶望名言」の紹介者である頭木弘樹氏がNHKの「ラジオ深夜便」で語った言葉である。川端康成の次の言葉をパラフレーズしたものだ。「忘れるにまかせるということが、結局最も美しく思い出すということなんだな」(「散りぬるを」『眠れる美女』)川端のこの言葉に着目し、そこから「自分」の成り立ちに関する独自の見方をつむぎ出してくる頭木氏の慧眼もなかなかのものだ。デイサの喧騒の中で頭木氏のこの言葉を目にして、...「私」の成り立ち
2025/06/29 09:31