「モノ言えば唇寒し」は秋の心?
この句は「秋の風」と結ぶ(秋は穐の字)。秋もめっきり寒くなって、話そうと口を開けたら冷っとした……という繊細かつ新鮮な感覚。さすが芭蕉、と言いたいところだが、一般的な解釈は「人の欠点をあげつらったあとは、自分が不快な気分になり、対人関係も気まずくなる」という意であり、さらには「不用意に余計なことを言うと、とかく人の恨みを買って災いを招く、ということ」(『三省堂故事ことわざ・慣用句辞典』)になっている。道徳クサい諺並みに扱われているのだ。これはオカシイのではないかと思う。 こうなった理由はある。出典の「芭蕉庵小文庫」には、句の前に「人の短をいふ事なかれ 己が長をとく事なかれ」とあって「座右の銘」…
2022/09/26 20:12