梟谷の五月/霧雨にけぶる谿で虹色のヤマメを3匹【九州脊梁山地ヤマメ幻釣譚<23-8>】
大きな砂防堰堤の奥に、細い渓谷がある。米良の山岳から流れ出てくる細流だが、奥行きは深く、原種のヤマメがいる。この谷を訪ねるのは、15年ぶりである。この地へ移住して来て、最初のころによく通った谷である。渓谷は暗い森に覆われていて、釣り上ると、大樹の葉陰でざわっ、と音がして、フクロウが飛んだ。さらにもう一羽、また1羽。ざわわ、ざわわ。森がざわめく。フクロウたちは、闖入者を警戒するというよりも、何事かを論議するために、大きな木の周りに集まってきているようであった。しばらくその様子を眺め、さらに釣り上ると、魚体が虹色に輝く見事なヤマメが釣れた。この谿にだけ棲息する原種のヤマメである。珍重すべき釣り場だったが、ある時期から放し飼いにした大型の犬をけしかけられるようになった。地元のおっさんたちにしてみれば、ある日突然...梟谷の五月/霧雨にけぶる谿で虹色のヤマメを3匹【九州脊梁山地ヤマメ幻釣譚<23-8>】
2023/05/31 09:27