読書案内「JR上野駅公園口」 柳 美里著 ②
読書案内「JR上野駅公園口」柳美里著②カズが故郷に戻った7年後、カズは妻・節子を亡くした。雨の激しく降る夜だった。隣の布団に寝ていたカズが気づいたとき節子はすでに冷たい体になって、死後硬直が始まっていた。節子・享年65歳、カズ67歳。雨の夜だった。カズはわが身に降りかかる不幸に声をあげて泣いたに違いない、と思う反面働いて働いて、これから、というときに訪れたわが身の不幸に、泣くことさえ忘れてしまったのかもしれない。と、わたしは感情移入を膨らまし、この悲しい物語の先を読み進んだ。著者はカズの気持ちを次のように描写している。「なんでこんな目にばっかり遭うんだべ」、と悲憤の怒りが胸底に沈められ、もう泣くことはできなかった。「おめえはつくづく運がねぇどなあ」、浩一が死んだときお袋が言った言葉をかみしめ、独りぼっちになって...読書案内「JR上野駅公園口」柳美里著②
2020/11/30 06:30