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  • 院墟

    にはのことしたる時、とみにおよびをきりて、ちのいたうはしりたれば、すなはちにてあてして、くすしをききたづねたれど、日曜といふひなれば、いづれのところもやみふたがりたるを、やうやうありけるは、なき人のつひのところなりけり。くるまをかりて、かつてしりたるみち

  • あらし

    かぜのあらきこと、あきののわきににたり。くももなきそらなれど、つちけぶりさわきてあめのいろにごる。露地のまよりふきとほるかぜ、たぎるかはのごとくして、かれえ、おちば、くさぐさのちりあくたをしてをどらしむ。御はかのところ、をちこちの供花、香臺のはひ、 ことご

  • 雨と靈

    あけぼののさきよりこさめふる。みやこなるいもきたりて、一周忌のことものせむと、御はかにいたれるときに、あまあしいたくなりぬ。御たまのうるみたまへるにや。こぞのけふみいきたたししときにしてみまへにたてばあめぞふりしくことをへたるすなはちあめあかりて、ひのあ

  • 朝霧

    ひごとに日のいでおそくなりもてくれば、つとめての御はかまゐりには、供花のいのちものびつつ、かぜのつめたきにあふことふえぬ。けふはあさよりきりたちこめて、とほからぬあかりもめにいらねば、おもむろにゆく。淨苑にいたれば、あめにいたりたまひつべき御ほとけの御す

  • うひぼに

    つとめて、御はかのきよめにまゐる。盂蘭盆會のときなれば、ひなかは人さはにありて、ゆだにもえかたらふまじとてなり。あけそめたるころにいへをいでて、やうやういたりぬれば、人かげはみえず、をちこちに、さきのひにそなへたらむ佛花どもの、あさひににほへるのみ。きの

  • 桃の実、失す

    ゆくみづのすぐるをととしに亡き人とあかひうゑたりしもものき、ことしははなおほくさきて、五十ほどもみをむすび、いよいようすくいろづきて、ちかくとりえむとおもひしに、ながあめのふりはへて、五日ほどみぬいとまありて、けふみれば、もものみ、ことごとくきえうせてあ

  • こひねがはくはきたりてうけよ

    晩春よりにはのこのはなさきほこらひて、なほさらにこころうくもあり。牡丹 四月三十日こぞはも、はなもすくなかりしに、もののしらべなどして、えをきり、ふゆごえをやりなどせしかばにや、おほぶりにさきそろひて、なき人の、むかしすこやかなるときにひだしたまへりし

  • 彼の岸

    けふまたはなをもちてみはかへまゐる。さきの供花、なほみづみづしくて、盆や彼岸にははかもりがふるきはなをあつめうつるならひなれど、わがはなはてもつかず。さらにけふはすかし百合の、いまだつぼみたるをとりわけて、みづかめにさしくはふ。おもひしほどには人おほから

  • 淨苑

    けふはひるのさきよりあせばみて、いとぬるし。にはのきのめはふつくみ、あぢさゐのわかばひろがり、牡丹のあかきめものびむとす。すみにちひさきはなどもはやくさき、こぞもさきしあをきはなはすでにさかりなり。きなるてふの二三ばかり、おいたる姫甘藍にまつろひ、むしの

  • 春の思ひ出

    こぞの三月十三日、二の妹とみたりして、偕樂園へうめをみにゆくことあり。われはそのさきのなつに自動車免許をえて、このひはじめて高速道路をはしりしなり。すこしおそろしかれども、さほどのこともなく水戸にいたりて、妹とかはるがはるにくるまいすをおしてめぐりき。ほ

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