なるほど宗教の比較解説において著者は宗教学者である。ところが歴史の本質を理解しているとは言いがたい意味で、氏は歴史家ではない。国家観が希薄であり、「太平洋戦争」なるタームを平気で用いたりするあたりは戦後のありきたりの左派とかわらない。ともかく神道指令である。GHQは国家神道と神社神道を区別できなかった。国家神道は明治政府がナショナリズムを鼓吹するために神社をランク付けし、一部を国家護持とした。廃仏毀釈運動と繋がっていた。GHQには知日派を称する浅学非才な日本通がいて、拙速で憲法と神道指令を制定した。神道がいかなるものか、かれらは誤解だらけだった。神道指令とは正確にいうと「国家神道、神社神道ニ対スル政府ノ保証、支援、保全、監督並ビニ弘布の廃止ニ関スル件」という一片の紙切れに過ぎない。伊勢神宮も靖国神社も国家...島田裕巳『GHQは日本の宗教をどう変えたのか神道指令について』(育鵬社)アメリカは日本の神道をまったく理解していなかったキリスト教は笛吹けど踊らず、宣教師の大量派遣は無駄だった