姪の結婚式に招待され、九州に帰ってきた。私の九州への道は、瀬戸内海の海で繋がっている。そこにはいつもの慣れた道がある。詳しくはわからないが遥かなとき、海を渡った種族の血が海の道へと誘うのかもしれない。祖父は四国から九州へ渡った。父は大阪から九州へと渡った。私は九州から大阪へと渡った。海を渡ることによって、体の中の血も沸きたち動くような気がする。航行は夜なので、点在する島々の小さな明かりしか見えない。闇に浮遊する、あやふやな光の道しるべに誘導されるのが心地いい。おだやかな潮の流れに浮かんで、日常とは違う波動で夢のなかを西へ西へと運ばれていく。海の道は忘れていた何処かへ戻ってゆくような、緩やかな夢路でもある。夢から覚めると、朝もやの海に浮かび上がってくる、山のかたちと風のにおいが懐かしい。深く深呼吸をして、す...海の道