ひとさし指がしめす先には
誰かに何かを指し示すほらあれだよとかあそこにあるものとかあっちへ行けばとかあのようにしたらとかあるいは観念として自分自身の指針を確かめるとかいつからかそのようなことは少なくなったがひとさし指で何かをさし示すその自分の指の形にふと父の指先を見ることがある自分の手に父の手を見たり咳払いをするときも父の咳払いを感じることがある父の咳払いは勢いがあったし父の手は大きかった父は背も高く僕よりも1センチ高かった体形は痩身であったが華奢ではなく骨太でしっかりしていて背筋もしゃんと伸びていた足も大きくて父の靴はいつも僕の靴を威圧していた子供の頃は父の大きな声が怖かった僕を呼ぶ父の声が今でもときおり聞こえてきて僕は思わず緊張してしまうとっくにこの世には居ない父の声をもう聞くことはないのだが記憶の中で父の叫び声は続いている泣いては...ひとさし指がしめす先には
2021/11/23 14:09