1427「マラソン」
彼は快走(かいそう)していた。トップグループにいるわけではないのだが、沿道(えんどう)には応援(おうえん)する人たちが声援(せいえん)を送(おく)っている。その中に、なぜか彼の名前(なまえ)を叫(さけ)んでいる女性がいた。彼は思わず身体(からだ)をこわばらせた。彼にとって、その女性は訳(わけ)ありのようだ。彼女は、彼と併走(へいそう)しながら言った。「なんで連絡(れんらく)してくれないのよ。あたし、ずっと待(ま)ってるのに…」彼は、なぜ彼女がここにいるのか分からなかった。誰(だれ)にも話していないはずなのに…。彼はちらちらと彼女を見ながら、「なんで…どうして…」を繰(く)り返した。彼女は息(いき)を切(き)らしながら、「あなたが…あたしのこと…無視(むし)するからでしょ」どうやら、彼女はそれほど体力(たい...1427「マラソン」
2023/10/29 17:34