1404「お迎え」
「生きた証(あか)しを残(のこ)せたか?」彼女の耳元(みみもと)でそんな声が聞こえた。彼女は、「まだだよ」と答(こた)える。それから数年後。また同じ声が聞こえた。彼女は最愛(さいあい)の人と結婚(けっこん)して、子供(こども)も授(さず)かった。家庭円満(かていえんまん)で仕事(しごと)も順調(じゅんちょう)。何の不満(ふまん)もなかったので、「はい」と答えてしまった。すると、彼女の目の前にねずみ色のマントに包(つつ)まれた男が現れた。彼女は驚(おどろ)いて、思わず訊(き)いてしまった。「あんた、だれ?」すると男は、「見れば分かるやろ」と。彼女はふざけたように答えた。「ああ…。なんだ、ねずみ男(おとこ)か…」「そや、わてはねずみ男やで…。なんでやねん。これが、ねずみ色だからか?安直(あんちょく)すぎるやろ...1404「お迎え」
2023/07/28 17:35