1397「妻の日記」
僕(ぼく)の目の前に妻(つま)の日記(にっき)がある。一周忌(いっしゅうき)も終わり、妻の遺品整理(いひんせいり)を始めたとき見つけてしまったのだ。何で死(し)ぬ前に処分(しょぶん)しといてくれなかったのか…。まぁ、そんなことを言われても、妻だってまだ死ぬつもりなんかなかっただろう。――事故(じこ)だったのだ。僕は困(こま)った。この日記、どうすればいいんだよ。この中には、僕の知らない妻がいるのかもしれない。そう考えると、僕は開(ひら)く気になれなかった。そもそも、僕は妻のことをどれだけ知っていたんだろう?僕と知り合う前のことはまったく話してくれなかったし、付き合っていたときもときどき行方不明(ゆくえふめい)になっていた。まったく連絡(れんらく)がとれないのだ。どうしてたのって後で訊(き)くと、スマホの電...1397「妻の日記」
2023/06/30 17:31