青春群像 ご め ん ね…… えそらごと(二十)
突然の振りにおどろいた真理子からはことばが出ない。まだ意思疎通がうまくいっていないふたりだったんだと、唐突すぎた声かけを悔やんだが、今さらどうにもできない。みずからの失策で暗闇にほうり込まれた彼だった。真理子にしても己の無言が、ひまわりの咲き乱れていた野原から一転して空っ風が吹きすさぶ荒廃した地へと変えてしまったことで暗澹たる気持ちを抱えていた。しかし、急に声をかけてくるから……と逃げ場を求めた。息苦しさを感じ始めた彼に「どうしたの、声が裏がえってたわよ。そうそう、ドライブウェイに乗って。わたし、プラネタリウムに行ってみたいから」と、貴子の声が明るく車中に響いた。(どうしてかしら、こんなにポンポンとことばが出るなんて。啓治さんの前だと、どうしても身構えちゃうのよね。だからかしら、真理子ちゃんを連れ出すのは...青春群像ごめんね……えそらごと(二十)
2024/03/31 08:00